ニールセン調査によると月間4000万人が利用するYahoo! JAPANだが、その中でもYahoo!ニュースは特に好調な伸びを示している。こちらはページビューの数字となるが、6月に月間100億PVを初めて突破し、その後も順調に100億PV超えを続けている。

今年のPV推移

100億PVという数字は普通のネット利用者にはピンと来ないかもしれない。Webメディアの多くは広告掲載広告主用に自社がどれほど多くのユーザーに見られているかを公開する「媒体資料」を用意しているが、マイナビニュースの媒体資料に目を通すと1億PVという数字が見えてくる。もちろん、メディアの価値というものをページビューだけで推し量ることはできないものの、単純な換算では「Yahoo!ニュースはマイナビニュースの100倍見られている」=価値があるということになる。

100億PVを達成した裏には、当然のことながら「スマートデバイス」の存在が大きい。これまでWebサイトを閲覧する場合には、PCかフィーチャーフォンであり、PCは一家に1台程度で、フィーチャーフォンでネットを閲覧する習慣がないという人も多かった。

しかし、スマートフォン時代では、端末の性能向上にともなって、快適なブラウジングが可能となった。フィーチャーフォンであまりネットを利用しなかったユーザーも様々なサイトを閲覧するようになり、それを多くの携帯電話ユーザーが1人1人見るようになるのだから、そのインパクトは計り知れない。

日本のスマートフォンユーザーは人口比で5~6割程度にまで伸びたと言われているが、全ての置き換えは難しくとも8割程度のシェアまで拡大するとの予測から、これからもスマートフォンのPVはなだらかな成長を続けることだろう。

ビッグイベントと細かな改善の積み重ねがPV増に

今回、その「100億PV」を達成した理由と今後のYahoo!ニュース 個人の展開、ニュースプラットフォームの未来について、ヤフー メディアサービスカンパニー ニュース本部 本部長でニュースユニット ユニットマネージャーの片岡裕氏と、同本部 企画部部長でYahoo!ニュース担当 サービスマネージャーの有吉 健郎氏に話を伺った。

ヤフー メディアサービスカンパニー ニュース本部 本部長 ニュースユニット ユニットマネージャー 片岡 裕氏(左)と同本部 企画部部長 Yahoo!ニュース担当 サービスマネージャー有吉 健郎氏(右)

ニュースサイトというものは、基本的に大きなイベントや自然災害の時に大きくPVが伸びる。イベントはともかく、自然災害でPVが伸びるという話に「不謹慎だ」と思う読者の方がいるかもしれないが、事実として「国民が情報を必要としている」ことから、PVが伸びるわけだ。

有吉氏によると、Yahoo!ニュースでも同様に2012年のロンドン五輪やソチ五輪、ブラジルW杯などのイベントを経るごとにPVが右肩上がりで伸びたという。

最初にデータを引用したニールセン調査では、PCにおけるPVがヤフーをはじめ、主要サイトで軒並み減少に転じているとの結果が出ているが、Yahoo!ニュースに限っては「PCはほぼ横ばいから微増といったところでしょうか。もちろん、スマホがかなり伸びていることが成長の要因ではありますが、PCのPVが下がらないことと合わせて伸びたと言えます」(有吉氏)とのことだ。

また、スマートフォンPVの伸びは市場の成長曲線よりも上を描いているという。理由は"細かな改善"だ。

「もちろん、大きな出来事による伸びが一番大きいという事実はあります。ただ、先日ブログでも触れました誤タップを防ぐ記事タイトルの行間を5ピクセル広げるといった小規模な改善でも、1%のクリック率の上昇が見られました。ユーザーの方がストレスを感じないように良い体験を提供できるようにしている自負とともに、さらなる改善を図っていくつもりです」(片岡氏)

細かな改善が1%のPV変化を生む。たかが1%と思うかもしれないが、100億PVの1%は1億PVと考えると、そのインパクトは大きい

ユーザー体験で言えば、PCとスマートフォン、タブレットのマルチデバイス利用が進んでいるが、現状はデバイス間のスムーズな連携ができていないと有吉氏は話す。

「マルチデバイス間の利用状況は、ブラウザベースではわかっていますが、アプリはまだです。もちろん、閲覧行動の引き継ぎをスマホで生かさない手はないと思います」(有吉氏)

切り口を変えてみせること

もちろん、ニュースの"見せ方"は、UIだけではない。2013年8月にSNS上で話題となっているニュースをまとめる「Yahoo!ニュース Buzz」コーナーを開設し、同11月にはトップページのリニューアルを行った。

「バズワードをフォローすることで、継続して欲しい情報を得られるため、大きな反応がありました。また、ユーザーへのおすすめ記事では、タイムライン式の表示を導入。先日、Yahoo! JAPANのトップページでもスマホ時代のUIとしてタイムラインの導入が発表されましたが、ヤフー社内でもかなり先取りで対応できたと思っています」(有吉氏)

ヤフーがスマホ時代のUIと呼ぶタイムライン式のユーザーインタフェース

地域タブや都道府県タブは、ユーザーに身近なローカルニュースを提供する

有吉氏によると、タイムライン式のUIは滞在時間の長期化に効果があるという。パーソナライズを図らずとも、レコメンドニュースが一覧で次々と表示されるため、新鮮な情報がユーザーの手元に届きやすくなり、結果として滞在時間が伸びるといったところだろうか。

スマホ時代の考え方はカテゴリの一端にも現れている。

「Yahoo!ニュースのスマートフォンアプリでは、天気などの地域設定がそのままローカルニュースのタブ設定となります。アプリでは、ローカルニュースのタブである「地域タブ」や「都道府県タブ」が各カテゴリの右端近くにあり、一見すると閲覧者が少ないのではないかと思いがちです。

しかし、右端近くに位置している割に利用状況がかなり良い。これはヤフトピのカテゴリ分けだけで考えていたPC時代にはなかった発想ですし、天気情報などと連携するために地域設定を行うアプリの特性が鍵であったと思います。利用者の「地域の情報も欲しい」という声は多くいただいていますし、地域間の情報格差が現実にある。地域紙の拡充なども今後しっかりやっていきます」(有吉氏)