日本ナレッジ・マネジメント学会は12月3日、早稲田大学において「ナレッジ・マネジメントの新たな展開」と題した国際シンポジウムを開催。シンポジウムでは、急速な進化を見せてきたITとナレッジマネジメントとの関わりを背景に、ヘルスケアとITに焦点をあてたセッションも行われた。

オムロン ヘルスケア デザインコミュニケーション部デザイナーの荻原剛氏、ビートコミュニケーション代表取締役社長 村井亮氏が参加したセッションでは、ヘルスケアとウェアラブル・デバイスとソーシャルの未来についてがテーマとなり、オムロン ヘルスケアのサービス「ウェルネスリンク」(WellnessLINK)の取り組みが紹介。ウェルネスリンクでは、血圧計、体組成計、歩数計などスマートフォンや対応機器で取得した健康データを詳細に分析し、数多くの充実した健康指標を提供してくれる。

医師が診断支援を行ってくれる「メディカルリンク」サービスも立ち上がり、健康活動をポイントとして提供する活動や、住民で競い合うランキング機能の提供など、自治体とともに健康維持促進を地域活動が進められている。福島県会津美里町での「あいづじげん健康ポイント倶楽部」では、"血圧測って、大根を買おう"をスローガンに、血圧を計測した回数に応じて商品券を配布し、モチベーションの維持と商店街活性化を図るなど、本格的なヘルスケアとITの連携が日本においても着実に広がりを見せていることが紹介された。

「柏の葉スマートシティプロジェクト」(YouTubeより)

ビートコミュニケーションの村井氏からは、米国ではいわゆる"オバマケア"の影響もあり、企業がグループ保険にウェアラブルデバイスを導入する事例の増加、ビッグデータで計測された健康運動参加によるポイントの付与や保険料割引などが紹介された。

ほかにも、配偶者や退職社員にも機器を無償配布し、大幅な経費削減に成功したというBP(British Petroleum)アメリカやカナダの例、日本では三井不動産が取り組み、街全体が自家発電、テクノロジーと医療の両サイドから健康管理を促進する「柏の葉スマートシティプロジェクト」などを引き合いに出し、ITとヘルスケアという分野が企業や自治体、医療と連携しながら進んでいることを紹介した。エンタープライズSNSを展開する村井氏は、特に企業のグループ保険の場合、社内SNSによる社員間の動機づけが重要であることを述べ、今後積極的にヘルスケアビジネス分野への参入を目指していく。