メンター・グラフィックス・ジャパンは12月5日、都内で、自動車をはじめとする輸送機器の設計開発にまつわる課題に応えるソリューションを提案するテクニカルフォーラム「Integrated Electrical Solutions Forum(IESF) 2014 Japan」を開催した。

今回の開催テーマは「コネクテッドエンジニアリング」で、エレクトロニクス化の進展が進み、電気、メカ、電子部品、熱、組み込みソフトウェアなどの複数ドメインを含む車両システム開発が求められるようになっている現状を踏まえ、先端技術を用いた開発支援ツールやフローによるコストと質の最適化に向けた機能、ソフトウェア、ECU、電気アーキテクチャ評価、AUTOSAR、Linuxベースの車載アプリケーション開発、熱解析、電磁界解析などの幅広いソリューションの紹介をパートナー企業も含め提案が行われた。

午前中に開催されたジェネラルセッションでは、同社代表取締役社長のグレッグ・A・ヘルトン氏がオープニングの挨拶を行い、「ECUの数は車種のシリーズ全体で140個、のべ4km以上のハーネスが用いられ、ソフトウェアのコードも数千万行を超すようになってきた結果、従来のような開発が間に合わなくなってきた。半導体が手書きで回路を設計していた時代から、ソフトを活用するようになったように、自動車の設計手法も大きく変わりつつある。メンターは15年ほど昔から、そうした技術の実現に向けた取り組みを進めてきており、一通りすべての開発をシミュレーションすることを可能としている」と述べ、現在の自動車開発では半導体デバイスからモジュール、ソフトウェア、シミュレーションまで幅広く意識する必要性と、それをメンターが支援していくことを強調した。

米国本社Mentor GraphicsのIntegrated Electrical Systems Division,Product Marketing DirectorのNigel Hughes氏

また、基調講演として、米国本社Mentor GraphicsのIntegrated Electrical Systems Division,Product Marketing DirectorのNigel Hughes氏が登壇し、「デジタル継続性の重要性とコネクテッドエンジニアリングの実現に向けて」と題し、カーエレクトロニクスに関する技術トレンドの説明を行った。

自動車は安全機能の向上や燃費向上などを目的にメカトロニクスの塊からエレクトロニクスの塊へと徐々にその姿を変えてきている。そうしたエレクトロニクス化に拍車をかける要因の1つが「運転支援」だという。「駐車支援やナイトビジョンなど、さまざまなシーンでドライバを支援する機能が車両に搭載され始めているが、ドライバは新たな車に乗り換える際、前のもの以上にお金を払いたくないと思っており、自動車メーカーは従来と同じコストでよりよい性能を提供する必要があり、エレクトロニクス化は差別化要因として重要な位置を占める」とする。また、中でも重要度を増しているのはコネクティビティであり、車車間や車道間通信を実現する組み込みソフトの重要性が増してきている一方で、ネットワークに接続するうえで欠かせないセキュリティの問題が浮上してきたとするほか、「ハッキングして自動車を盗むといったことが簡単になってきた。それを阻止する経験を積む必要がある」と、そうしたこれまで考えられなかった部分まで対応する必要性が出てきたことを強調する。

自動車のエレクトロニクス系コストの割合は年々増加しており、そのけん引役の1つがADAS関連となっている

さらに、車両の軽量化などを図ることを目的に、数年後には実用化される見込みの48Vシステムとレガシーの12Vシステムを組み合わせた際にどのような障害が発生するか不透明であり、こうした課題を解明していく必要も出てきているとし、「さまざま情報の共有をすべてのレイヤで行う必要性と、それを確実に理解していく必要性がでてきた」と、設計と統合が重要な意味を持つようになるとした。

加えて、ネットワークに接続することで生じる新たな課題も見えてきたという。「自動車がスマートフォン的な状態になってくる。つまりコンシューマ化であり、新機能を早く搭載することが求められるようになってくる。極端な話を言えば、AndroidやiOSで実現される経験を車内で実現することが求められる。しかし、自動車の寿命はスマートフォンの10倍以上長く、その複雑さは1000倍以上。ソフトウェアの搭載量は複雑怪奇となっている」とするが、その一方で、そうした機能は適切なタイミングで適切なコストで提供することで競争力を確保できる、とするが、その反面、リコールの数も増えており、中でも電装システムと車外照明が伸びていることを指摘した。

自動車のエレクトロニクス化の傾向と、それに対応するために求められるソリューションは多岐にわたる

こうしたさまざまな課題に対し、「仮想化による統合が必要」とし、メンターの責任としては「すべてのエンジニアリング領域をコネクトすることがあり、それを実現していくことで、今後の業界の課題である品質の向上やコストの最小化、市場先端技術の提供の実現を図っていきたい」とした。

自動車の設計フローとそれぞれのフローで用いられるアプリケーション例。メンターでは、こうした複雑な仕組みをより簡単なものにするためにソリューションの開発を進め、さまざまなエンジニアが連携して開発できる環境の構築を目指している