ヤフーは12月2日、iOS版キーボードアプリ「Yahoo!キーボード」を公開した。

Yahoo!キーボードはiOS 8よりサードパーティー製キーボードが解禁されたことに合わせて開発。独自のカスタマイズ機能や入力の利便性を高める機能を備えている。

例えば「スワイプ切り替え機能」では、「日本語」や「英字」「数字」といった文字種類に合わせた入力モードの切替が左右のスワイプ操作で行えるようになる。英字入力モードでは、大文字・小文字を上下スワイプで切り替えられるようになる。

また、iOS のキーボードでは面倒な操作を強いられていたカーソル移動が専用のキーにより操作できる。修正箇所をタップするのではなく、左右のボタンで修正箇所までカーソル移動ができるようになる。

「カスタマイズ機能」については、約100種類の背景テーマを用意。キーボードの背景をあらゆる画像に変えられるほか、自分で撮影した写真なども背景に設定できる。

キーボードの変換エンジンには、オムロンソフトウェアの変換エンジン「iWnn(あいうんぬ)」を採用。Androidスマートフォン市場でトップシェアを誇っており、多彩かつ高精度な予測・変換が可能だとしている。

今後は、「Yahoo!検索」のデータより流行語をピックアップして辞書データベースを更新するなどの新たな機能も提供していく予定だという。

なお、Android版については「KeyPalet」と呼ばれるキーボードアプリがすでに提供されている。

有名キャラクターの着せ替えテーマも提供したい

リリースにあたって、開発を担当するヤフー R&D統括本部 企画の菊地 裕信氏に話を伺った。

ヤフーとしてキーボードアプリをリリースする意義は「従来のYahoo! JAPANトップページやアプリとは違ったネットの起点を作り出すこと」と菊地氏。

ヤフーとの接点をスマートフォン時代でも持ち続けるために、「欠かせない存在である文字入力に目をつけた」という。

しかし、キーボードで重要な要素はブランドではなく使い勝手。そこで菊地氏らは、ユーザーが求めるキーボードとは何かを調査。すると、意外にも「背景画像のカスタマイズ」が上位にランクインしたという。

「当初は20代女性などをメインターゲットに据えているのですが、背景画像に対する要望が多くありました。これまでのiOSキーボードはデザインの変更ができませんでしたし、iOS8にあわせて出てきたキーボードアプリも、多彩なデザインテンプレートは用意されていません」(菊地氏)

SimejiなどはYahoo!キーボード同様に自分の撮影画像を背景に設定できる機能があるものの、テンプレートの絶対数で言えばそれほど多くない。そこで、多くのデザイナーも抱えるヤフーとしてのリソースを活かし、リリース時から100種類の背景テーマの用意した。

「Yahoo!検索やAndroidのきせかえアプリ『buzzHOME』などで提供している、有名キャラクターの着せ替え機能も今後は提供していきたいと思っています」

背景画像については当初、動画も流せるようにしようと考えていたという。

「動画をアニメーションGIFにしてやろうと思ったんですが、ユーザーレビューで背景が見づらいといった声などあまり反応が良くなく……。ネット上からおもしろ動画を引っ張ってといった考えもあったんですが。ご要望が多ければ検討したいのですが(笑)」

安心・安全が第一なキーボードアプリという考え方

もちろん、デザインだけではなく、ユーザーインタフェースにも力を入れている。

「変換エンジンは実績のあるiWnnさんを使っているため、実績は十分なものがあります。語彙数についてですが、現時点でどれほどとは言えません。ただ、ヤフーならではの膨大なデータの蓄積があることが私達の魅力。よく使われる単語や新語はどんどん追加していこうと考えています」

ユーザー目標は、リリース半年で毎日10万人のアクティブユーザーを獲得すること。そのために菊地氏ら開発者4名が大事にしたかったことは安全・安心だ。

「キーボードは普通に動いて当たり前。品質を担保した上でリリースすることを心がけました。そのため、音声や手書き入力はユーザーインタビューで優先順位が低かったこともあり、機能を実装せずにリリースしています。

また、いわゆる『クラウド変換機能』というユーザーの変換データを他ユーザーにも反映させる変換機能が多くのアプリで実装されていますが、一方でユーザーにとって『自分の変換情報が外部に送られる』という不信感を招くことも事実です。ヤフーのアプリですが、現時点ではYahoo! JAPAN IDとの連携もあわせて、ユーザーが入力したデータをヤフーに送るということはやっていません。可能性を"ゼロ"にすることが重要だと思っているからです。

ただ、ユーザーの要望などがあれば、いつかはやるという可能性も否定しませんが」

Android版は別チームの開発で「KeyPalet」という別名称で運営しているものの、iOSアプリのリリースに合わせて、名称の統一も検討されているという。ヤフーの「サービス」ではないツールアプリがどこまでユーザーに受け入れられるか未知数だが、GoogleなきiOSキーボードアプリで台風の目になる可能性は十分にあるだろう。