富士フイルムは11月4日、脳疾患や心臓疾患、腫瘍などの各種疾病の機能診断に役立つPET(陽電子放射断層撮影)検査用の放射性医薬品市場に参入すると発表した。今後、約60億円を投資し、大阪府茨木市と神奈川県川崎市に研究開発拠点を新設する計画だという。

PET検査は従来の核医学検査と比べて高い感度と空間分解能を有しており、より診断に適した機能画像を得ることができる。そのため、同検査によってアミロイドβというタンパク質を検出する手法を用いることによってアルツハイマー型認知症の診断精度の向上が期待できる。

同社はこれまで、放射性医薬品分野では、子会社である富士フイルムRIファーマを通じてSPECT検査領域で事業を展開してきたが、今後、アミロイドβ検出用薬剤の研究開発に取り組み、PET検査領域にも事業拡大を図っていく。富士フイルムRIファーマはすでに、PET検査において脳内アミロイドβプラークを可視化できる「florbetapir」という医薬品の共同開発契約を、米イーライリリー・アンド・カンパニーと締結しており、国内承認の取得を目指している。

また、富士フイルムグループでは、アルツハイマー型認知症の治療薬「T-817MA」の開発も行っており、動物実験において治療効果を示すことを確認している。治療薬『T-817MA』と診断薬『florbetapir』の開発が進むことで、アルツハイマー型認知症の予防法や治療法の確立につながることが期待される。