2014年9月18日、NVIDIAより第2世代"Maxwell"が発表された。これまで消費電力よりも絶対的な性能(パフォーマンス)を重視してきたNVIDIAだが、Maxwellコアでは電力(ワット)あたりの性能にフォーカスを当てた設計が行われている。この方針は第1世代MaxwellであるGeFroce GTX 750/750Tiでも採用されていたが、第2世代では新たなメモリ圧縮技術や負荷の低いアンチエイリアス技術などが加わった。これにより、消費電力あたりの性能をさらに向上させることに成功している。この第2世代Maxwellアーキテクチャをハイエンド向けに利用したのが、今回発表されたGeForce GTX 980/970となる。そのワットパフォーマンスは別記事でも紹介しているが、あまりの優秀さにすでに自作市場では注目の的。このMaxwellを搭載したグラフィックスカード、GTX 980が7万円前後、GTX 970が5万円前後という価格にもかかわらず、各種売上ランキングで上位を独占する人気となっている。

第2世代Maxwell搭載「NVIDIA GeForce GTX 970」

そんな第2世代Maxwellを搭載したPCが、さっそくマウスコンピューターから登場した。今回はその中からタワー型デスクトップPC「MDV-GZ7540X2」を紹介しよう。マウスコンピューターのラインナップにおいてアッパーミドルに位置する本モデルは、CPUに"Devil's Canyon"ことインテルCore i7 4790Kを搭載。標準で4.0GHzという高クロックを実現しているだけでなく、ターボ・ブースト機能によって最大4.4GHzまでクロックを引き上げられる。Core i7 4790Kなら、第2世代Maxwellの性能を活かすのにふさわしいといえるだろう。

マウスコンピューターの「MDV-GZ7540X2」

CPUにはインテルCore i7 4790Kを採用。最大4.4GHzという高クロックで動作する

本年話題となったCPUとGPUが織り成す性能は、果たしてどんなものだろうか。グラフィックスカードの性能を中心に探っていってみよう。

リファレンス設計を採用したNVIDIA GeForce GTX 970を搭載

MDV-GZ7540X2で標準搭載されているグラフィックスカードは、よりコストパフォーマンスに優れたGeForce GTX 970となる。まだ発売されて間もないため、GPUクーラーはNVIDIAのリファレンスとなる外排気型。グリーンの"GEFORCE GTX"のロゴが印象的だ。グラフィックスカード全体では全長が長めに見えるが、裏側から見ると基板自体はショートサイズであることが確認できる。GeForce GTX 970のTDPはミドルレンジ並みかそれ以下のわずか145Wなので、余裕を持った冷却が行えるだろう。動作に必要なPCI-Express用補助電源は6pin2系統となり、電源供給には余裕がありそうだ。グラフィックスメモリはGDDR5を4GB搭載。昨今はディスプレイの高解像度化が進んでいるが、これだけの容量を備えていれば十分に対応できるだろう。映像出力端子は、DVI-I、DVI-D、HDMI、Displayportを各1ポート備えている。

リファレンスGPUクーラーを搭載したGeForce GTX 970。GPUの発熱を直接ケース外へと排気できる

GeForce GTX 970の背面の様子。グラフィックスカードの長さは、クーラーによるもので基板自体は短い

サイドからGeForce GTX 970を見たところ。6pinのPCI-Express用補助電源を2系統使用する

「GPU-Z」にて確認したGeForce GTX 970。4GBものグラフィックスメモリを搭載している

3DMarkでグラフィックス処理能力と消費電力を探る

さっそく、各種ベンチマークテストにてGeForce GTX 970の性能を測ってみよう。初めに試したのは、Futuremarkの3Dグラフィックス向け定番ベンチマーク「3DMark」だ。2014年10月13日、3DMarkではハイエンドGPU向けテストの「Fire Strike」に、新たなプリセット"Ultra"が追加されている。4K解像度(3840×2160)でレンダリングが行われる"Ultra"は、テストに当たって最低でも3GB以上のグラフィックスメモリを必要とするが、GeForce GTX 970ならもちろん対応可能だ。

結果はご覧の通り、前世代"Kepler"のハイエンドGPUであるGeForce GTX 780を超える数値を叩きだすという優秀さだ。Fire Strike Extremeでもしっかりと動きが把握できるfpsを実現しており、新世代の確かな処理能力を感じさせる。Fire Strike Ultraではさすがに厳しい様子を見せるものの、Ultraをスムーズに動かせるのは、現状ではマルチディスプレイ環境くらいのものなので、こればかりは致し方ない。

Futuremark 3DMARK
項目 Fire Strike
1.1
Fire Strike
Extreme 1.1
Fire Strike
Ultra 1.1
3DMark Score 9482 4732 2386
Graphics Score 10904 4910 2310
Physics Score 11887 11807 11950
Combined Score 4157 2181 1243
Graphics Test 1 52.13 fps 25.90 fps 12.47 fps
Graphics Test 2 43.48 fps 18.16 fps 8.36 fps
Physics Test 37.74 fps 37.48 fps 37.94 fps
Combined Test 19.34 fps 10.15 fps 5.78 fps

さて、Maxwellのトピックとなる消費電力はといえば、こちらの結果も素晴らしい。高い3D処理能力が確認できただけに、Windowsのアイドル時51Wからどれだけ高くなるか心配だったが、3D実行時の最大消費電力はミドルレンジ並みの260W。GTX 780はもちろんのことGTX 770と比べても、はるかに低い数値だろう。ゲーム中の消費電力削減効果は非常に高く、これだけでも魅力的だ。

消費電力の調査結果
最低【Windows 8.1 アイドル時】 51W
最高【3DMARK実行時】 260W

ゲームのベンチマークテストで実力をチェック!

続いて、ゲームのベンチマークテストを試してみよう。初めに試したのは、指輪物語をモチーフにした、この冬話題の大作アクションRPG「ミドルアース:シャドウ・オブ・モルドール」のベンチマークだ。最新のゲームだけに高い負荷が予想される。今回は1280×720、1920×1080、2560×1440、それぞれの解像度でMiddle、High、そして最高設定のUltraを試した。2560×1440のHighとUltraこそ平均FPSが60を下回るものの、いずれにおいても十分にゲームを楽しめる結果が得られている。

ミドルアース:シャドウ・オブ・モルドールのベンチマークテスト
設定 最小FPS 最大FPS 平均FPS
1280×720【Middle】 94.50 704.09 193.83
1280×720【High】 80.16 343.35 148.25
1280×720【Ultra】 65.62 339.79 110.32
1920×1080【Middle】 77.50 602.08 109.90
1920×1080【High】 57.28 256.06 93.48
1920×1080【Ultra】 43.60 157.50 74.62
2560×1440【Middle】 54.16 384.25 76.68
2560×1440【High】 38.69 132.21 58.54
2560×1440【Ultra】 34.43 101.72 50.52

続いて、「トゥームレイダー」のベンチマークを試そう。こちらも髪の毛の動きなどにこだわった、負荷が高めのベンチマークだが、1920×1080で最高設定のUltimateで動作させても平均FPSは75.5と、余裕を持った動作が確認できた。2560×1440のUltimateではFPSが落ちて来るが、最小でも38をキープしており、ソロプレイではまったく問題のない数値だ。

トゥームレイダーのベンチマークテスト
設定 最小FPS 最大FPS 平均FPS
1920×1080【High】 144.0 206.0 175.6
1920×1080【Ultimate】 56.0 96.0 75.5
2560×1440【High】 92.0 132.0 111.1
2560×1440【Ultimate】 38.0 62.0 48.9

最後に、2014年10月18日に拡張パック「蒼天のイシュガルド」が発表された、国産MMORPGの雄「ファイナルファンタジーXIV」のベンチマーク、キャラクター編を動かしてみよう。1280×720、1920×1080はいうに及ばず、2560×1440の最高品質においても、余裕で"非常に快適"という評価を得られた。新世界や新たなレイドダンジョンにおいても、処理落ちを気にせずにプレイが可能だろう。

ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編
設定 スコア 評価
1280×720【最高品質】 21788 非常に快適
1920×1080【最高品質】 14123 非常に快適
2560×1440【最高品質】 9126 非常に快適

「DSR」や「GAMESTREAM」など新機能も満載

ベンチマークテストで、優秀な性能と少ない消費電力が確認できたGeForce GTX 970だが、機能面の進化も見逃せない。高い3D処理能力は重量級のゲームや高解像度で遊ぶときには必須だが、負荷の軽いゲームや現在主流のフルHDディスプレイでは、その性能を活かせない場合も多い。そのパフォーマンスを活かすべくNVIDIAが用意したのが「DSR」こと"Dynamic Super Resolution"だ。ゲームを4K解像度などで一度レンダリングし、画面出力を行う際にフルHDにダウンスケールすることで、より美しいグラフィックス表示を実現している。詳しく知りたい方は、別記事を参照してほしい。またタブレットとの連携も進んでおり、NVIDIAの「SHIELDタブレット」などから、「GAMESTREAM」を利用してゲームをストリーミングプレイすることも可能。最新機能を試してみたい方にも、見逃せないグラフィックスカードとなっている。

DSRを利用することで、負荷の軽いゲームをより美しいグラフィックスで楽しむことができる

SHIELDタブレットなどのデバイスを利用すれば、PCゲームを携帯端末でストリーミングプレイすることが可能

GeForce GTX 970が、いま大人気となっている理由がご理解いただけただろう。次ページではMDV-GZ7540X2の本体を詳しく見てみよう。