樹脂などの素材を断面的に積層して立体物を造形する3Dプリンタ。その3Dプリンタでつくる立体物をモデリングする際に必須なのが、3D CADソフトウェアである。だが、この3D CADソフトウェアを選ぶのが、なかなか難しい。各製品それぞれに独特の操作性があり、使いこなすまでに時間がかかるからだ。直感的に操作できる3D CADソフトウェアが欲しい ―― そんな声に応えるのが、シーメンスPLMソフトウェアの「Solid Edge」である。

3D CADへの注目が高まる

ここ最近、3Dプリンタがめざましい勢いで普及し始めている。製品の低価格化によって、個人が趣味用途でも入手しやすくなったことが要因の一つだが、業務に活用する企業も確実に増えている。例えば、製造業では製品や部品の機能やデザイン検証用のモックアップ、建設業ではプレゼンテーション用のミニチュア、医療分野では患部の術前検討やインプラント(体内に埋め込まれる医療器具)など、幅広い用途に利用されている。

この3Dプリンタを利用するとき、ユーザーが必ず越えなければならない壁がある。それは、3Dプリンタで作成する立体物をモデリングする3D CADソフトウェアを使いこなすということだ。言い換えれば、3D CADソフトウェアを自由に操作できるようにならなければ、いつまでたってもオリジナルの立体物を作成することはできない。

現在、3D CADソフトウェアにはフリーソフトウェアから高機能の業務用製品まで、数多くの種類が存在している。個人で利用する場合は、ある程度機能が限定されて操作が難しくてもフリーソフトウェアを選択する傾向がある。しかし、業務に利用する場合はそうはいかない。製品を選定するには、操作性に優れたものを第一に選びたい。3D CADソフトウェアが簡単に操作できれば、作成する立体物のデザインに集中し、より迅速に正確なモデリング作業が可能になるからだ。

そんな操作性に優れた3D CADソフトウェアの一つとして挙げられるのが、シーメンスPLMソフトウェアの「Solid Edge」である。今回は、マイナビニュース連載記事「ゼロからわかる3Dプリンタ」の筆者としてお馴染みのスマイルリンク 大林万利子氏に意見を伺いながら、Solid Edgeの機能と特徴を紹介する。

新しい操作性を備えたSolid Edge

Solid Edgeが操作性に優れていると言われる理由は、「シンクロナス・テクノロジー」と呼ばれる技術を採用しているところにある。3D CADソフトウェアは作成履歴を重視する「ヒストリーCAD」と、作成履歴を重視しない「ノンヒストリーCAD」の2種類に分けられるが、主要製品ではヒストリーCADが多い。なぜなら、設計の自動化という効果が得られるからであり、もともとSolid Edgeもこの手法を採用していたという。

ところが、ヒストリーCADには「設計するのに時間がかかる」「履歴として残るモデリングの手順を意識しながら設計しなければならない」といった課題がある。途中の工程に変更を加えるには履歴をたどって元に戻さなければならないため、他人が作成したモデルを編集することも難しい。

こうした課題を解決するために、Solid EdgeはヒストリーCADとノンヒストリーCADの良い部分を取り入れた、シンクロナス・テクノロジーを採用した。

シンクロナス・テクノロジーでは、設計したモデルの形状を自動的に認識し、寸法や配置を変えても形状が崩れないという特徴がある。変更したい部分を選択し、そこをドラッグするという操作を行えば、履歴を意識することなく編集できるのだ。

この機能について大林氏は、「自由に動かせるというのは、ものすごく楽なこと。感覚的につくる人には、とても良いことです。これまでの設計とはだいぶ違います」と驚きを隠さない。

またSolid Edgeには、ユーザーの意図を読んで自動的に補完する機能がある。例えば、形状を変更するために線を引いたとき、線の長さが足りなくても長すぎても、それを自動的に認識して矛盾のないように補完してくれるのだ。一般的な3D CADソフトウェアではこうはいかず、はみ出した部分を正確に削り、モデルに使う領域を一筆書きのラインとして、きれいになぞった形にする必要がある。

操作性を左右するユーザーインターフェイスにも特徴がある。Solid Edgeは、Microsoft Officeで採用されているユーザーインターフェイスと同様のリボンインターフェイスを採用しているほか、操作中に多用するショートカットキーもWindowsに準拠している。寸法線の長さの値をCtrl+Cキーでコピーし、ExcelのワークシートにCtrl+Vキーで貼り付けるといった操作も行える。

さらに、あるソフトウェアで編集したオブジェクトのリンクを埋め込んで別のソフトウェアで利用可能にするというWindowsのOLE(Object Linking and Embedding)にも対応。これにより、例えばExcel上の仕様書にある寸法の値を変更すると、Solid Edgeのモデルがそれに合わせて自動的に変更される。これも、一般的な3D CADソフトウェアにはない便利な機能だ。

「3D CADは操作を覚えるのに苦労すると、つくろうという気持ちが段々そがれていきます。もちろん、どこまで直感的に操作できるかという心配はありますが、Solid Edgeはほかの3D CADソフトウェアよりも、馴染みやすいなという印象です」(大林氏)

Microsoft Officeのリボンインターフェイス準拠の操作性

豊富な機能も大きな特徴

設計も直感的に行える。3D CADソフトウェアによっては、設計中のモデルから離れた場所にフィーチャーを作成することが許されていない場合がある。ところがSolid Edgeでは、宙に浮いたものでも自由に作成できる。そのフィーチャーを移動すれば、設計中のモデルのボディーに自動的にくっつけたり、重ねたりすることが可能だ。内部の断面をいつでも確認し、ボディーとフィーチャーの主従関係を意識せずにスケッチとして編集することも可能だ。意匠設計向けに曲線・曲面を描いたり、CGを作成したりする機能も用意されている。「まるでMicrosoft OfficeのPowerPointを操作するような感じでモデリングできる」というのが、大林氏の感想だった。

既存のCADデータ資産を活かすことができるのも、Solid Edgeの特徴だ。2D図面のデータをインポートし、半自動で3D化することが可能。その際、図面の寸法は3Dパラメトリック寸法に自動変換され、設計意図のとおりに編集が行えるようになる。また、3Dプリンタでよく利用されているSTL(Standard Triangulated Language)データを読み込むことも可能だ。

このようにSolid Edgeは、従来はありがちだったルールや作法がない、新しいタイプの3D CADソフトウェアだ。シーメンスPLMソフトウェアでも、3Dプリンタを利用する上で障壁になっているモデリングの難易度を低く抑えられる製品だと考えている。

2D図面のデータをインポートし、半自動で3D化

大林氏はSolid Edgeの操作性や機能を評価しつつも、2つの点を気にしていた。1つはコストだ。

「私の会社は大田区にありますが、3Dプリンタの普及によって大田区の町工場でも3D CADに興味を持ち始めています。けれども町工場の皆さんは、3D CADソフトウェアは非常に高価で習得に時間がかかると思っているのが実情です」(大林氏)

Solid Edgeの価格は販売店によって異なるが、おおよそ50万円台から。町工場にとっては決して安価な投資ではない。そのためシーメンスPLMソフトウェアでは、フル機能を制限なしで45日間利用できる評価版を提供しているほか、1カ月15,500円からという月額料金制度も用意している。まずは45日間試しに使ってみて、十分に使いこなせると判断したら月額料金で導入し、長期に渡って使い続ける場合には製品を購入することができる。

もう1つ、大林氏が気にしていたのは、パーツの充実度だ。3Dプリンタのモデリング用途では、サンプルがたくさん用意されていることが大切だという。

「3Dプリンタユーザーの中には、これまでCADを使ったことがない人も少なくありません。そういう人は、最初から自分で図面を引くことができませんから、パーツがとにかくたくさん欲しいわけです」(大林氏)

Solid Edgeはもともと工業デザイン・機械設計用の3D CADソフトウェアであるため、ネジやボルトのようなJIS規格の部品パーツは豊富に用意されている。だが、3Dプリンタで作成する立体物のサンプルパーツは用意されていない。そのためシーメンスPLMソフトウェアでは、CADENASなどの部品ポータルサービスと提携。製品を購入すれば、豊富な3Dモデルを無償でダウンロードできるサービスを提供している。

「これまでCADソフトウェアは、どちらかというとメーカーの設計者が使うようなイメージでした。それが3Dプリンタによって、さまざまな業務で利用されるものに変わりつつあります。Solid Edgeは、そんな架け橋となる3D CADソフトウェアになるかもしれません」(大林氏)

大林氏は3Dプリンタユーザーの立場からSolid Edgeに大きな期待を寄せる。

Solid Edgeについて

Solid Edgeは1996年にデビューした、歴史と実績に裏付けられた3D-CADです。ユーザーの声を常に取り込み、「設計者にとって最も良い設計環境とは何か?」を追及してきました。その結論の一つとして、作成履歴を気にせず、しかも強力なパラメトリック編集ができるシンクロナス・テクノロジーを生み出しました。誰がどんなCADで作成した3Dモデルでも自分の設計データとして自由に取り扱える利便性と簡便性で、3Dの作業効率を新たなレベルに引き上げました。 45日間無償評価版ダウンロードはこちら