フラワー・ロボティクスは9月18日、機能拡張を前提としたプラットフォーム型の家庭向けのサービスロボット「Patin(パタン)」のプロトタイプ(画像1)と、2016年中の製品化(ロードマップ)を発表した。その模様をお届けする。

画像1。Patin。円形をベースとした外観だ

まずパタンの紹介に入る前に、フラワー・ロボティクスについて触れておこう。同社は、ロボットデザイナーの松井龍哉氏(画像2)が代表取締役社長を務める、2001年に創業したロボットベンチャーだ。ロボットの企画、開発、デザイン、販売までを行っている。創業して10年以上が経過し、ベンチャーからメーカーへとシフトしてきているという。

フラワー・ロボティクスが開発したことで知られるロボットとしては、2009年のグッドデザインや、その翌年の独IFデザインなどを受賞したアパレル向けのマネキン型ロボット「Palette」(画像3)や、フラワー・ガールをコンセプトとした「Posy」(画像4)をなどがある。

画像2(左):フラワー・ロボティクスの松井龍哉代表取締役社長。画像3(中):アパレル向けのマネキン型ロボット「Palette」。画像4(右):フラワー・ガールをコンセプトとした「Posy」

そして松井氏は、日本のヒューマノイドロボットの開発やロボットベンチャーなどの創業など人材育成に大きな影響を与えた、科学技術振興機構 ERATO(Exploratory Research for Advanced Technology:創造科学技術推進事業)の「北野共生システムプロジェクト」(現・ソニーコンピュータサイエンス研究所の北野宏明取締役所長(当時・副所長)が総括責任者を務め、1998年10月から2003年9月までに行われたロボット系のプロジェクト)に参加した研究者の1人だ。

同プロジェクトで小型ヒューマノイドロボット「PINO」(画像5)のデザインを担当し、2000年にグッドデザインを受賞した人物である。また、PINOを使った研究として、10ヵ月かけてPINO自身が歩き方を学んで上達させるという実験など、今でも興味深いものも行ってきた。そんな松井氏が、理念として「生活を彩る美しいロボット製品の開発と販売」と「ロボット製品で21世紀の新産業を創る」を掲げて活動している企業が、フラワー・ロボティクスというわけだ。

その2つの理念を表す文章として、同社では「Design From Tokyo」という言葉を掲げる。松井氏は、「Made In Japan」という文章に非常に敬意を払っているそうだが、2010年代も半ばの現在は、企業1社が開発部門から工場まで何から何までを国内に抱えて、1つの製品のデザインから販売まですべて行うのは、最早日本の経済状況とはマッチしておらず、もっとスリムさが求められいるという。ただし、コンセプトやデザインなどのその製品の核となる部分は東京(日本)発であるということを表すため、「Design From Tokyo」としているのだ。

そうした考えから同社は、メーカーとはいっても21世紀型のファブレスメーカーが今後の日本を牽引していくとし、同社ももちろんそれを実践している。工場や生産設備を自社では持たず、クリエイティブなマネジメントと販売を計画するという、米国で増えてきているアップルに代表されるようなスタイルの企業である。今回のPatinも、国内外問わず、多数のパートナー企業の協力を得て開発が進められており、もちろん販売も代理店を通して行われる計画だ。

画像5。北野共生システムプロジェクトにおけるPINOの歩行実験の様子