三井化学ファインは、抗生物質が効かない多剤耐性菌に対しても抗菌・除菌効果を発揮する高分子コロイドの販売を開始すると発表した。

抗生物質が効かない多剤耐性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌など)は世界中で拡大が確認されており、世界的な問題としてとらえられるようになっている。同高分子コロイドは、高知大学 医学部の城武昇一 特任教授(元 横浜市立大学大学院 医学研究科 客員教授)が細菌の構造と増殖過程に着目して開発したもので、黄色ブドウ球菌や大腸菌などの細菌に加え、多剤耐性菌に対しても抗菌活性を有しているという。

粒径数百nm程度の高分子コロイドを水で安定的に分散させた形状をしており、このコロイドが細菌の細胞壁に物理的に吸着し、その成長を抑制させ、アンバランスな成長を引き起こし、細胞の内圧を保持できなくさせ、自己融解させることで細菌を死滅させることができる。

高分子コロイドが吸着することによる自己融解のイメージ

このため、従来の細菌の薬剤への耐性の確保のメカニズムとは異なっており、従来のような耐性菌を生み出すことがないというメリットがある。また、高分子体であるため、エタノールや次亜塩素酸などといった従来の抗菌・除菌特性を持った低分子量化合物とも異なり、揮発せず安定的に留まり、抗菌・除菌機能を持続させることが可能だという。

左が自己融解している様子。中央と右は多剤耐性菌にも有効であることが確認できている様子 (3枚ともに高知大学 医学部の城武昇一 特任教授 提供の画像)

さらに、通常の明所実験室・室温で3年間保存しても、抗菌活性が保存前と変わらず安定して利用できることが確認されていることから、同社では、一般の生活環境において実用化が可能な抗菌・除菌剤用原料として期待されると説明しており、今後、多剤耐性菌による医療関連感染リスクが高まっている医療現場や介護の現場、児童施設や公共機関などに対する効果的な感染防止対策として、抗菌・除菌スプレーやウエットティッシュ、衛生衣服などの製品開発をパートナーとともに進めていく方針としている。