東京大学の超小型衛星ほどよし3号、4号は6月にロシアのロケットで高度約640kmの地球周回軌道に打ち上げられてから、搭載機器の初期運用が順調に進み、4号の広角カメラ、3号の240m分解能と40m分解能のカメラで順に撮影し、4号の6m分解能の高解像度カメラによる地上撮影にも成功した。50kg級の衛星としては、世界にほとんど例がない解像度の写真で、小さいけれど優れた性能を示した。その写真の一部をfacebookで公開している。

写真1. ほどよし4号の高解像度カメラが8月1日に撮影したフランスのアルベールの田園地域。細かく区切られた畑が寄せ木細工のようだ。(提供:東京大学)

4号に搭載されている高解像度カメラ(HCAM)の試験運用で8月1日に撮影されたフランスのアルベールの田園地域は、細かく区切られた畑が寄せ木細工のようにきれいに見える。同じ高解像度カメラで8月5日に撮影された米国のアトランタ郊外の町、キャルフーンでは、中心部の住宅地とそれを取り巻く工場、農耕地が放射状に広がっているのがよくわかる。

写真2. ほどよし4号の高解像度カメラが8月5日に撮影した米国のアトランタ郊外の町キャルフーン(提供:東京大学)

また、ほどよし3号の10cm立方の空間を企業に貸し出し、グッズやメッセージを地球背景に紹介したりするユニークな「レンタルスペース」の実施もサンリオや博報堂などと協力して始めた。サンリオとの協力では、一般の人から募集した「宇宙からのメッセージ」を3号機内に載せた高さ4cmのハローキティのフィギュアと地上を撮影した画像とともに送る。サンリオが8月25日まで180字以内で募集し、10個のメッセージを選んで、8月26日~9月8日の平日に毎日1メッセージずつ地上に送ってくる。

ほどよし3号、4号はいずれも重さ60kg程度、1辺0.5~0.8cmの直方体。衛星の基本部分は共通にして、1機当たりのコストが3億円以下、開発期間2年未満という画期的な超小型衛星を実現した。部品やシステムの信頼性確保にメリハリをつけ、すべてを究極のものにしなくても、「ほどほどでよい」という意味から名づけられた。安上がりで素早く作れる利点を生かして「国だけでなく、多くの人が参加できる、新しい衛星の利用の仕方を創造したい」という野心的な狙いが込められている。

開発した中須賀真一(なかすか しんいち)東京大学大学院工学系研究科教授は「これまでのような『堅い』宇宙開発利用だけでなく、企業広告など『やわらかい』衛星利用も試みたい。ほどよし衛星が撮影する地上の写真も素晴らしい。8月に入って日本上空は雲が多いので、日本各地の鮮明な地上写真はまだないが、今後ぜひ撮影して、順次公開していく。インターネットで見てほしい」と話している。

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