会社の寿命はせいぜい40~50年と言われているが、世界には1,000年以上の歴史を持つ会社もある。Business Insiderが「How 16 Of The Oldest Companies On Earth Have Been Making Money For Centuries」で16社をピックアップしているが、トップにはなんと日本企業が輝いた。

第1位 慶雲館(日本)

世界最古の企業は日本から選ばれた。創業705年――来年創業1,310年を迎える山梨の西山温泉慶雲館だ。世界最古のホテルとしてギネスにも認定されている。慶雲館の"慶雲"は、704年から4年間続いた天武天皇と元明天皇の時代の元号で、慶雲館は温泉発見時にできた宿泊施設となる。

創業から家族経営が続いており、現在は52代目。Business Insiderでは、スタッフの中には世代にわたって慶雲館で勤務している人も多いことを取り上げながら、世代間での「アラインメント」経営がうまくいっていると評価している。

「慶雲館」の公式ページでは歴史について説明されている

第2位 シュティフツケラー・ザンクト・ピーター(オーストリア)

第2位につけたのは、オーストリア・ザルツブルグにある欧州最古のレストランだ。803年に創業、ザンクトピーター教会にあり、世界でも最古のレストランではないかと言われている。

バロックホールを有するシュティフツケラー・ザンクト・ピーター

第3位 ショーンズバー(アイルランド)

アイルランド・アスローンにあるパブで、その歴史は900年に遡る。欧州で最古、おそらく世界でも最古のパブだろう。1970年の改修工事では、9世紀の編柵工を用いた壁や埋め込まれていた古い硬貨も出てきたのだとか。

第4位 ヴァイエンシュテファン(ドイツ)

ヴァイエンシュテファンは。ドイツ・バイエルン州のフライジングにある1040年から続いているビール醸造所だ。ビール好きなら、970年以上にわたって続いてきた理由は説明不要だろう。元々は修道院に遡るその長い歴史は公式サイトでしっかり学ぶことができる。

ヴァイエンシュテファンのビールのラインアップの一部

第5位 フラパン(フランス)

フラパンは、フランス・シャンパーニュ地方にあるセゴンザックにある最古のコニャック蒸留所。フラパン一族が創業したのは1270年で、現在は20代目だ。長く続いてきた秘密は品質にある。むやみに拡大せず、ずっと同じ畑のぶどうを使うことで維持しているのだとか。

第6位 ショア・ポーターズ・ソサエティ(イギリス)

英スコットランド・アバディーンにある同社は、500年以上の間、ありとあらゆる荷物を運んできた。創業の年である1498年はコロンブスが大西洋を渡ったわずか6年後。アバディーン港で荷を運ぶ人のグループとして生まれた経緯から、初の協同組合としても知られる。

第7位 ファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ(イタリア)

ベレッタは、イタリア北部ガルドーネにある銃メーカーだ。ここまで宿泊施設と飲食関連企業が続いてきたが、ここで登場するのが武器。守るか攻めるかは、悲しいかな古くからある我々の産業の1つと言えよう。

創業は1526年、日本の種子島に鉄砲が伝わったとされるのが1543年だから、その17年前である。創業者のBartolomeo Beretta氏はすでに銃作りを始めていたようだが、この年にベニスのアルセナーレから185丁の火縄銃を受注したのが最初の正式な記録とのことだ。その後15世代にわたり、バレッタ一族が経営しており、現在はショットガン、ピストル、ライフルなどのほか、衣類も手がけている。

第8位 ケンブリッジ大学出版局(イギリス)

第7位のベレッタの次は、知識や学びに関連する企業がランクインした。ケンブリッジ大学出版局(CUP;Cambridge University Press)は世界最古の出版社となる。当時の国王ヘンリー8世による「あらゆる種類の書籍の印刷」という命によりケンブリッジ大学が1534年に開始した出版事業。「教育、知識の工場、研究の発展」を目指し、これまでにアイザック・ニュートンの「自然哲学の数学的原理」、ジョン・ミルトン「リシダス」、ノーム・チョムスキーの「言語と精神」など、そうそうたる書物を出版してきた。その意義は大きい。最近は電子書籍の出版も行っており、時代の流れにも適応している。

第9位 ホワイトチャペル・ベル・ファンドリー(イギリス)

エリザベス1世が君臨した1570年に創業したベル(鐘)メーカーで、製造企業としてはイギリス最古だ。ロンドンの観光名所であるウェストミンスター宮殿のビックベン、米ペンシルベニア州フィラデルフィアにある自由の鐘も同社が手がけた。鐘の製造する企業とは異色とも思えるが、時を知らせるというその役割を考えると古くから続いていることは不思議ではないのかもしれない。

第10位 ブッシュミルズ(イギリス)

ラベルともに知られたスコッチウイスキーの蒸留所。北アイルランドのアントリム州で1608年に創業、時の王・ジェームス1世がアントリム州の地主でその地域を統治していたThomas Phillips氏にウイスキーの蒸留酒製造を認可した。現存する世界最古のウイスキー蒸留所と言われている。1784年に商標登録済み。

公式サイトに掲載されているブッシュミルズの歴史

このほか、日本からは、第12位に月桂冠がランクインしている。同社は京都伏見で1637年(寛永14年)に創業、酒銘「玉の泉」としてスタートし、その後も1910年に鉄道省が採用する「コップ付き小びん」など革新を続け今日に至る。折しも日本酒が世界各国で認められつつあり、同社は清酒の販売数量で第1位を誇る。創業377周年を迎え、今後は"サケ(Sake)"ブームに乗って国際事業の拡大にも期待したい。

月桂冠の公式サイトでも歴史について説明されている

Business Insider「How 16 Of The Oldest Companies On Earth Have Been Making Money For Centuries」では、最古の企業が慶雲館となっておりますが、日本の建設会社「金剛組」は578年に創業し、高松建設の出資を受けて2006年に新生・金剛組として再出発しました