ルネサス エレクトロニクスは8月6日、同社の2015年3月期第1四半期決算の発表に合わせ、同社代表取締役会長兼CEOの作田久男氏が、現在進めている事業改革の進捗状況について説明を行った。

同社は現在、2017年3月期(2016年度)に営業利益率2桁の達成を目指し、利益を生み出すための組織へと変革を目指す構造改革と、強みを発揮できる製品や分野への集中と選択を進めており、それに伴う業務オペレーションの変革も併せて進めている。すでに国内の生産拠点の整理統廃合が進められているのは既報のとおりだが、その再集計は前工程で7工場、後工程で2工場だという。また、そうした生産拠点の統廃合や、それに伴うリストラ策などにより、従業員数は2011年末で4万2800名だったものが、2014年3月末時点で約1万5000名減となる約2万7200名まで絞られたとする。

ルネサスの国内製造拠点数の変化と、それに伴うグローバルにおける従業員数の変化

一方の事業の選択と集中としては、「生き残るためには固定費の削減も必要。これまでのルネサスの批判になるが、(いずれもルネサス エレクトロニクスの出身母体となる)日立製作所、三菱電機、NECが一緒になったことによる固定費と、ビジネスの強さが伴わなかったダブルパンチにより、顧客も含めて集中と選択が必要になった」とし、既報の通り、自動車分野を中心に、産業機器および家電、OA・ICT分野と比較的収益性の高い、かつ安定成長が見込める分野を中心に事業領域を選択する方向性を打ち出したほか、商品そのものについても、価値が低いものについては集中分野から除外し、EOL(End of Life:生産終了)へと移行を進めているとする。

事業の選択と集中により、「自動車」「産業・家電」「OA・ICT」の3領域に注力する事業体制となった

作田氏によると、この非注力分野に該当する製品は全体の4割程度としており、「販売終了製品のものについては、アプリケーション分野に関わらず、お客様に無理を申し上げている。迷惑をかけることを承知の上で構造改革を進めていることを踏まえれば、スムーズに進めつつ、大いなる改革とする必要がある」ことから、「お客様志向・付加価値向上」「開発・生産効率の向上」「意思決定の迅速化」という3つの目指すゴールの実現に向けた組織の簡素化、リソースシフト、成果主義の徹底などの人事制度改革といった業務オペレーションの変革を推し進めているとする。

構造改革には業務オペレーションそのものの変化も含まれている

「顧客から信頼されるパートナーになるためには、まずは財務基盤の強化を果たす必要がある。そこから、期待されている先端デバイスの開発力を磨いて、高い品質のものを供給し続けることが重要。品質が大切として過剰品質になってはいけないが、そこは生命線なので、十分な気持ちをもって望んでいきたい」とし、顧客から正当な評価を受けることができれば、「その信頼の証として、ちゃんとした粗利を頂戴したい」と顧客への要望を出しつつ、それを利益につなげるのがマネジメントの仕事になるとし、ルネサスブランドという評価を正当なものにしていく努力を行っていくことが重要とした。

また、継続的に利益を生み出す成長をどう実現していくか、という点については、「強い製品を強い地域で強いポジションをキープしていくだめにR&Dが需要」とし、R&Dについても選択と集中を行い、自動車関連を中心に集中度を高め、「決められたところに決められた投資を行っていく」とするが、「価値提供を合わせてどうやって行くかがカギになる」との見方から、「顧客の要求とリンクして行っていく必要がある」とし、顧客が余計な神経を使わずに付加価値の開発に注力できるような価値の提供を広げていく取り組みを進めるとした。

集中3領域に対し投じるR&D費用の比率を上昇させていき、ソリューションの提供も含めた形で、顧客の価値を高めることを目指した開発を進めていくとする

「いずれにしても、今のルネサスがもう少し立ち直るためには選択と集中が必要。正直、息苦しい状況ですが、2018年くらいをイメージに、改革をやり切りたいと思っている」と、この改革をやりきらなければ、将来がないことを強調。シェアNo1にこだわったビジネスの比率を増やしていきたいとし、個人的な気持ちとしては「最低でも製品の2/3、できれば3/4くらいはNo1商品でビジネスを展開したい」とし、それが収益性を改善させ、グローバルで勝ち残るためにも必須条件になるとの見方を示した。

また、生き残りの策として、固定費のさらなる削減による損益分岐点を引き下げを進めているが、2016年下期にに向けて、もう一段の固定費圧縮を行う考えがあることも示した。

これまでの構造改革と固定費削減施策によりそれぞれ約1000億円ほど引き下げることができたが、今後、もう1段階の固定費の削減と損益分岐点の改善を図っていくとする

「私が一番経営の改善に向けて注目しているのは売り上げ粗利率。これまでの経験から、顧客の会社に対する評価は粗利率に現れると思っている」と、構造改革や為替要因などにより、徐々に改善が進み、2016年度末の目標である45%に向けて順調な改善が図られてきており、粗利率の増加に合わせて、同時にR&DやSG&Aに向けた投資も積極的にできるようになるとのことで、双方15%、合計30%を1つのイメージとして持っているとし、最終的に営業利益率10%の達成を何が何でも成し遂げるという強い意志を持っていることをアピール。そこそこの安定的な収益構造をベースに、将来的には売り上げ拡大の流れになることを目指していきたいとした。

改革によりR&D費用とSG&A費用の適正化も併せて行い、営業利益率10%超えを目指すこととなる。これが実現されれば、その後は、売り上げ拡大による成長基調に移っていくことが見込まれる