健康のバロメータにもなるブリストルスケール

次からがいよいよ本編で、まずエリア1は「今日どんなうんち出た?」。いきなり難易度が高いというか、逆に子供たちは大喜び!?のエリアかも知れない。さすがに臭いが漏れないよう、透明な容器に密閉されているが、上野動物園に協力を得たという、動物たちの本物のうんちが複数種類展示されている。それから当然すべてフェイクだが、ヒトのうんちも、うんちの硬さ・軟らかさを7段階で表す「ブリストルスケール」に基づいて7種類を展示(画像10)。しかし、うんちの硬度を表すスケールに「ブリ」とついているなんて、できすぎている…。ちなみに、適度な軟らかさでいて固形である4が健康的なのだ。

画像10。ブリストルスケール4のうんちを毎日出せると健康的(1~3、5~7のフェイクはモノがモノだけにボカシを入れてある。実物は、その目でご確認いただければと思う)

なお、うんちはきれいなものではないので、誰だってあまり見たくはないものだが、病院に行かなくても消化器系の調子を知ることができる貴重な手掛かりにもなる。もっとも、近年の洋式トイレはお尻を拭く前に1度立ち上がるかかなり体を曲げてのぞき込むかしないのもあって、なかなか見づらいというのもあるのだが、硬さや色は毎回チェックするクセをつけた方がいい。こうした体の調子を自分でチェックする、ということを学べるのがエリア1の真の狙いである。

とはいっても、なかなかチェックすることを気が引ける人も多いに違いない。しかし、実際にそれをちゃんと把握していなかったがために、寿命を縮めてしまったケースだってあるのだ。筆者も身内にそうした例がある。母親なのだが、ある時、どうも食べ物がすんなり通っていかない感覚と、うんちがどす黒く、なおかつしっかりと出ない感覚が続くようになり、でも放っておいた。さすがに、本当に調子が悪くなったので病院で調べてもらったら、実は胃がんの末期状態で、手遅れだったのである。うんちがどす黒かったのは、食道の下端や胃で出血していたためで、消化器系の上流での出血だったから、それがまじったうんちがどす黒くなっていたのだ。結局、胃の全摘出手術を行ったが、すでにリンパ腺に転移してしまっていた後で、もう全身への転移は防ぎようがない状況となっていた。

本来なら、胃がんはがんの中でも発見しやすい方で、早期発見できれば現在の医療技術ならほぼ完治できるといわれるほど、リスクが低いのだが、うんちの異常なことを知りつつもそれをスルーしてしまっていたがために、手遅れとなってしまい、結果、50そこそこで他界してしまったのである。これが、変だと気がついた時にすぐに手術していればまだ間に合った可能性も高く、異変に気がついていながら見逃したことが今でも非常に悔やまれてしまう。ぜひみなさん自身もチェックしていただきたいし、お子さんのいる方はお子さんには小さい頃からチェックするようクセをつけさせていただきたい。

また、このエリア1では便秘や腸内環境、腸内年齢の解説、うんちの臭いを活かした新発想の香料(臭いを嗅いで比較できる)なども展示されており、勉強になるところも多いので、腰を据えて知識を得てほしい(腸年齢のチェックもできる)。なお、このエリアでは、粘土で来館前に家などでしてきたうんちの形を再現するコーナーもあるので、この企画展に親子で訪れる予定の人は、その日の朝だけでもお子さんにはチェックさせるよう言っておくと良いだろう。ちなみに、うんちというと、ブリットくんたちや光浦オンチのヘッドのようにとぐろを巻いたものをみんな作ってしまうそうだが、あんなとぐろを巻いたうんちなど、普通は出ない(笑)。あの記号化されたうんちではなく、リアルな自分のうんちを形作る必要がここではあるのだ(画像11・12)。

画像11(左):うんちを粘土で作るスペース。エリア1の後半にある。画像12(右):絶滅危惧種(?)の和式便器に粘土で作ったその日の朝のうんちを飾るのだ