日本オラクルは7月1日、6月からスタートした同社2015年度の戦略説明会を開催した。杉原博茂氏が代表執行役 社長 CEOに就任してから初めての戦略説明会。就任当初に掲げたビジョン「No.1 Cloud Company」を改めて強調した。

日本オラクル 代表執行役 社長 CEOの杉原博茂氏

杉原氏は、冒頭、日本でビジネスを展開するからには、日本企業の課題を解決していかなければならないとコメント。生産人口が8000万人を割り、海外向けの直接投資が13兆2500億円に及んでいるなど、少子化とグローバル化が進んでいることを挙げたうえで、海外でも利用できるIT環境を構築し、生産性の向上を実現することが急務であると説明した。

氏は、そうした課題に適した技術としてクラウドを推奨。東京オリンピックが開催される2020年に向けた長期成長ビジョンとして「No.1 Cloud Company」を紹介し、「"DBと言えばオラクル"から、"クラウドと言えばオラクル"へと変わるようにビジネスを展開していく。これはラリー・エリソンやマーク・ハードら、本社経営陣ともコンセンサスのとれた戦略」と語った。

日本オラクルが掲げた経営ビジョン

日本オラクルが意識するクラウド像

一口にクラウドと言っても実態はさまざま。SaaS、PaaS、IaaSとあり、IaaSに関してはパブリック、プライベート、ハイブリットがあるが、日本オラクルが意識しているのは、そのすべてになるという。

「お客様の意向に沿って柔軟に選べる技術ポートフォリオを持つのがOracle。アプリケーション、プラットフォーム、インフラストラクチャとすべてのレイヤで製品群を保持しているうえ、業界標準技術を採用し、ポータビリティも高い。パブリック、プライベート、ハイブリット、いずれの形態を採用したお客様にも、十分なメリットを享受できるかたちで構築を支援できる。単に"安くなるから"、と安直にクラウドを勧めるのではなく、地に足を付けたかたちでクラウド構築をサポートする」(杉原氏)

SaaS、PaaSに関しては、すでに実績のある環境をアピールする。昨年よりWebLogic、Oracle DatabaseをベースとしたPaaSを提供しているほか、SaaSに関しては「この2、3年で買収した企業のうちほとんどはSaaSで、日本ではあまり知ってもらえていないが、年間サブリクプション額20億ドルと、世界で2位のシェアを誇る」(杉原氏)と語った。

さらに今後の予定として、業種特化型のクラウドを提供することにも言及。すでに普及しているような一般向けのパブリッククラウドではなく、例えば、流通、通信、金融など、特定の業種向けのパブリッククラウドを用意することを明かした。

業種別のソリューションを強化する。業種特化型のパブリッククラウドの提供も予定

杉原氏が掲げる経営方針、組織体制

こうしたビジョンを実現するために、杉原氏は経営戦略、組織体制を刷新している。

2015年度の4つの柱として、クラウドのビジネスの拡大に加えて、「カスタマーエクスペリエンスのさらなる向上を目的とする直販営業力の強化」「新規市場開発のためのアライアンスを含めたGTM戦略の展開」「海外成功事例の日本への導入および日本のお客様の海外事業支援を目的とするグローバル組織との連携」を掲げ、日本企業を総合的に支援できる体制を整備している。

杉原氏は、こうした施策を挙げた後、「(顧客やパートナー企業から)好かれる日本オラクルになれれば」と自重気味に語り、笑いを誘った。

また、組織体制に関しては、戦略ビジネス推進室、エンタープライズ営業統括を新設したほか、アライアンス事業の強化、製品事業体制の再編に着手。いずれも社長直轄の体制下に置き、組織のフラット化を図っているという。併せて、各事業リーダーの配置転換も実施。直営業を担当していた大塚副社長をアライアンス事業のリーダーに置くなど、これまでの知見を新たな方面で活かせるよう新体制を組織している。

社長直轄の組織を増やし、スピード化と連携強化を図る

執行役員によるパネルディスカッション

方針説明の後には、経営陣によるパネルディスカッションも催された。そこでは、モデレータを務めた杉原氏が、各事業を担当する執行役員を相手に鋭く切り込む場面も見られ、今後の予定として、インメモリデータベースの新製品や次世代ビッグデータ製品の提供準備を進めていることが明かされた。

パネルディスカッションの様子