NECは6月30日、記者発表会を開催し、花王と共同で耐久性に優れた難燃性ポリ乳酸複合材(難燃性バイオプラスチック)を開発したことを発表した。同プラスチックは、直物成分率約75%を有しているほか、同社のバイオプラスチック「NeCycle (ニューサイクル)」の主成分となるポリ乳酸に、難燃剤と他の特性改良剤を配合する独自の組成により性能を強化したもの。今回、導入第一弾として、ガソリンスタンド用給油システムにおける屋外機器の内部部品(POS周辺)に適用を開始したことも明らかにされた。

NECにおけるバイオプラスチック開発ロードマップ。同事業は2000年に開始したものだが、今後、社会インフラ設備への適応拡大を進めることで事業の拡大を目指す

今回の発表の概要

記者発表に登壇した「NEC スマートエネルギー研究所 所長を務める嶋脇秀徳氏」

従来の難燃性バイオプラスチック(難燃性バイオプラ)は、燃えにくい石油系樹脂(ポリカ)にポリ乳酸や難燃剤を添加し生成されているため、植物成分率(CO2削減率)が30%未満に留まっていた。しかし、同社が今回開発した難燃性バイオプラは、デンプンを原料としたポリ乳酸をベースに、土壌成分の難燃剤である「水酸化アルミニウム」などを添加。これにより、植物成分率は75%以上にまで上昇し、製造時のCO2排出量の50%削減を達成した。

また、難燃性バイオプラは、従来の難燃性バイオプラスチックに比べ、耐久性に優れていることが特徴で、同社では、「独自の添加物の最適配合」により、これを実現したと説明している。

難燃性バイオプラのベース樹脂であるポリ乳酸に添加される成分は、水酸化アルミニウムのほか「表面処理剤」や「結晶化促進剤」「難燃助剤」「加水分散抑制剤」などで、中でも、高耐久性の実現に有効的に作用しているのは水酸化アルミニウムで、同成分の採用にこそ他社との違いがあるという。

水酸化アルミニウムは、着火時の吸熱効果による難燃性を提供するほか、その硬度による傷防止も可能で、光や水、薬品の浸透も軽減する。また、表面処理剤も、水や薬品の浸透を防止するほか、樹脂との界面強化への効果もある。同社は今回、これらの添加成分の配合を改良・工夫することで、「難燃ポリ乳酸複合材」の生成に成功したとしている。

ポリ乳酸系バイオプラの技術的特徴

高耐久性実現のメカニズム

ちなみに難燃ポリ乳酸複合材の耐久性は、「耐薬品性」や「耐光性」「高難度」「抗菌性」の4つの要素で表現され、それぞれの実験結果は以下の写真の通りとなっている。

耐薬品性。強アルカリ洗剤への浸漬試験後、割れ・変色なし。ガソリン・灯油などへの耐油性を強化し、従来の耐薬品性石油系プラスチックと同等以上を実現

耐光性。放射照度180W/m2を20年間分当てたところ、変色度は従来品の1.5~6分の1であることが確認された

表面硬度。鉛筆硬度でHを実現。従来の石油系プラスチックではB~Fほど

抗菌性。菌試験(JIS Z2801)において、耐水・耐光・耐洗剤すべての項目で、抗菌性強化前に比べ減菌率99.99%以上を達成

また、同バイオプラは「耐ガソリン特性」も兼ね備える。薬品浸漬後の寸法安定性を図る実験では、ガソリン浸漬試験(7日間)において、寸法変動率(非膨張・収縮性)が屋内向け電子機器などに利用している従来の石油系プラスチック比で1/3以下を実現したという。

同社はこれらの結果を踏まえ、同バイオプラについて「流通・交通・医療・金融などの設備に用いられるような厳しい仕様が要求される高耐久プラスチック市場への適用が可能」と判断し、今回、ガソリンスタンド用給油システム(NECプラットフォームズ製 : 旧NECインフロンティア製)における屋外機器の内部部品(POS周辺)に適用したとする。

ガソリン給油システムへの適用に関しての説明

耐ガソリン性・寸法安定性に関する説明

今後同社は、同バイオプラを「幅広い業界において用いられる社会インフラ向け設備・機器に広げていく」とするほか、「2010年6月に発表した『NECグループ環境経営行動計画』に基づき、2017年までにすべてのNEC主要製品へのバイオプラスチックの適用を進めていく」予定だとする。

ガソリン給油システムで適用した部品

今回の成果のまとめ

NECにおけるバイオプラスチックの今後の展開

NEC スマートエネルギー研究所 主席研究員の位地正年氏

なお、同説明会では、NECのスマートエネルギー研究所で所長を務める嶋脇秀徳氏と、主席研究員の位地正年氏が登壇。位地氏は、従来品をバイオプラへ置き換えることの意味に関して、同社の「NECグループ環境経営行動計画」にふれつつ、「一企業として、目先の利益だけでなく環境対応などの未来への影響を考える責任がある」としたほか、「脱石油へのクライアントのニーズがあることも確かだ」と述べ、バイオプラビジネスの成長に期待を示した。

難燃ポリ乳酸複合材の代表物性まとめ

難燃ポリ乳酸複合材の実物の展示

従来品と難燃ポリ乳酸複合材での試作品比較

植物資源の利用価値。今後、脱石油に向けた市場ニーズが高まることが期待される

NECでは、環境面を考慮した4つの目標を設定し、その期限を中期で2017年、長期で2030年に定めている。バイオプラスチックの発展は、その目標の1つ「資源循環・省資源推進」にあたる

NECにおけるバイオプラスチックの位置づけ