産業技術総合研究所(産総研)は6月9日、シリコントンネル電界効果トランジスタ(トンネルFET)の新たな動作速度改善技術を考案し実証したと発表した。同技術により、動作速度が10倍以上改善されることが期待されるという。

同成果は、同所 ナノエレクトロニクス研究部門 新材料・機能インテグレーショングループの森貴洋研究員らによるもの。詳細は、6月10~12日(現地時間)にハワイにて開催される「2014 VLSI Technology シンポジウム」で発表される。

トンネルFETは、0.2~0.3V程度の低い電圧で駆動する新たな動作原理のトランジスタであり、超低消費電力集積回路への応用が期待されている。しかし、トンネル抵抗が大きいため、高速動作に必要な駆動電流を得るのが難しいという問題があった。従来のシリコントンネルFETでは、現在集積回路に用いられている電界効果トランジスタ(MOSFET)に比べて、1/100~1/1000程度の駆動電流しか得られない。今回開発した技術では、トンネル確率を増加させることで、シリコントンネルFETの駆動電流を10倍以上増大させた。これにより、動作速度の改善が期待され、コストと量産性に優れるシリコントンネルFETの実用化に貢献することが考えられるとしている。

今後は、シリコントンネルFETの駆動電流のさらなる向上とともに、同技術を利用したCMOS回路を試作し回路動作の実証を目指すとコメントしている。

(左)今回開発したシリコントンネルFETの断面透過電子顕微鏡像と(右)今回の技術のコンセプト図