GEヘルスケアは6月5日、40cmの大口径フラットパネルを搭載し、かつハイブリッド手術室における患者へのアクセス向上に大きく貢献する自動走行式多目的X線撮影装置(血管X線撮影装置:アンギオ装置)「Discovery IGS 740」を発表した。

近年、高齢化の進展や患者のQOL(Quality of life)に対する意識の高まりなどを背景に、外科手術に比べて患者への侵襲の少ない治療法として、カテーテルやステントを使用するインターベンション治療法が普及しつつある。このインターベンション治療法の1つとして、大腿動脈、または麻酔下で小さく開いた左胸から直接カテーテルを挿入して人工弁を留置する経皮的大動脈弁植込み術(TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)が可能になり、多くの患者がこの治療を受けているといわれている。加えて、2013年10月、日本でもTAVIの保険償還が決定し、今後この分野の低侵襲治療に拍車がかかることが見込まれる。こうした新たなハイブリッド治療の登場により、患者への選択肢が広がった一方、その手技は、通常のインターベンションに比べて複雑化し、長時間を要するようになってきた。同時に、ハイブリッド治療では限られたスペースに多くの周辺機器が必要とされるため、天吊り式の柔軟な動きと床置き式のような安定した画質を提供できるX線撮影装置が求められるようになった。

同社は、2013年4月に自動走行式アンギオ装置として、従来の床置き式と天吊り式のアンギオ装置の利点を統合した「Discovery IGS730」を発表した。そして今回、さらなる動きの改善を図ったのに加え、大視野を可能にした40cm大口径フラットパネルを搭載した「Discovery IGS740」を発表した。

近年のハイブリッド手術室では、通常の手術用器具なども装備されていることから周辺機器が非常に多く、スペースの確保が難しい状況にあった。海外では80%の施設においてカテーテル治療と外科手技の両方が実施されているというレポートもあり、こうした環境は今後日本でも推進されていくと考えられる。これらの課題の中、同製品は、柔軟なスペースの確保や、天吊りレールがないことによる清潔な空調環境を保つことを可能とし、術者に妨げなく手技に集中できる環境を提供する。

具体的には、自動走行式レーザガイドシステムにより、麻酔実施、緊急手術の際などに困難だった患者へのアクセスを大幅に改善した。また、ガントリの回避が可能となったことで、柔軟なスペース有効利用が可能になった。さらに、Cアームに起因する天吊りの可動アイテムが存在しないため、ヘパフィルタからの気流を妨げることなく、清潔な空調環境を保ているという。

この他、高度なフラットパネル技術と、画像処理技術を駆使した描出能の高い3D画像を利用したロードマップ機能のInnova Visionを搭載。これにより、アンギオでの3D撮影なしに、透視画像との融合が可能となり、治療を解剖学的情報提供でサポートする。さらに、造影剤の低減、患者の被ばく低減にも寄与するとしている。

「Discovery IGS 740」。Cアームを斜めから挿入しながらアクセスができることにより、患者へのアクセスが非常にスムーズになった