――この物語は、人々の"大切なもの"に気づいていく話でもあります。葵さんの中で、そこに気づいたことはありますか。

この映画の撮影で地方にずっと一人でいて。食事も部屋の片付けも全部自分一人でやらないといけない状態。中学校2年生で親の有り難みなんて実感することはあまりないと思いますが…というか年齢的に普通は反抗する時期。でも、この夏の経験で親の大変さとか有り難みが分かりました。最初は洗濯機の使い方すら分からなかったくらいですから(笑)。

――なるほど。あとは映画の中で中村玉緒さん演じる絹子の「心を動かされることが大事」という台詞が印象的でした。最近そういう経験はありますか。

お芝居の話からはそれるんですけど、乙女新党のメンバーは喧嘩をしても離れられないような切っても切れない関係。私が中学校を卒業する時に、みんなが手紙をくれたんですね。それがとても感動的な内容で。私は友だちがあまりいないんですが、友だちって本当にいいものだなと感じました。だから、これからは積極的に友だちを作っていこうかなと思いました。

――高校に入学したばかりですし、絶好の機会ですね。どうやって作っていきましょうか。自分から話しかけるとか?

いや…待ちます! 私が今日までに決行した作戦なんですけど、カバンに『ラブライブ!』のキャラクターのキーホルダーを付けて、「私もこれ知ってる!」って話しかけてもらう作戦。それから、猫のペンケースを新しく買ったんですが、「それかわいいね!」って話しかけてもらう作戦2。

――うまいこと考えますね(笑)。前にも人見知りっておっしゃっていましたけど、やっぱりそこが友だちができづらい理由?

そうですね。仲良くなりたいんですけど、何を話していいのか分からないんですよ。

――先ほど中学校の卒業話が出ましたが、今年の7月には乙女新党を卒業されますね。振り返ってみて、決断するきっかけはあったんですか。

お芝居などでユニットの練習やイベントとかに参加できなくなることが多くなって、申し訳ないなと思っていたんですが、それは同時にお芝居のチャンスが増えているということにもなります。いろいろな方が与えてくださった機会を通してお芝居の楽しさを知ることができました。ユニットに対する気持ちは、もちろん今でもあります。当時中学3年生で進路のこととか考えている時に、自分はこのままお芝居を続けていくんだろうなと思って、もっとやっていきたいと思ったのがきっかけです。

それと同時にユニットの活動もすごく大事で。歌とかダンスとか初めてのことばっかりだったので、自分にとってはすごく糧になりました。これを経験として逆に芝居に生かせるんじゃないかとも考えて…このままだと迷惑をかけることも多くなりますし、もっと上のレベルに行くために卒業させてもらう…そんな決断になりました。

――卒業発表後に演技の現場は?

これからあるんですが、今のところ発表しただけなので心境的には変わりません。発表したことによって、応援してくださっている方々とかメンバーとかスタッフさんとかからはいろんな意見や感想がありました。応援だけではないかもしれませんが、少しでも私の存在がそれぞれの方の中にあるのだとしたら、自分が選んだ道で力を試して、みなさんの声の"お返事"となればいいなと思います。

――それは決断をしなければ分からなかったことですね。

そうですね。どれだけの人が応援してくださっていたのかとか、アイドルとしての活動をしていなければ感じられなかったことでもありますので。

――前回のインタビューでは「アイドルは体力勝負でお芝居は頭脳」という名言が飛び出していました。その「体力勝負」が7月以降はなくなるわけですが、それを踏まえての今後の意気込みをお聞かせください。

歌とか踊りとか体力的な部分はたくさんあると思うんですけど、普段お芝居をしているだけじゃ分からないこともありました。つらいこともありましたが、それを経験したからこそ得られたものも数えきれないくらいたくさんあります。そこをこれからのお芝居に生かしていきたいです。

アイドルという形は7月で終わってしまうんですけど、"葵わかな"は続いていくので、今度は4人ではなく1人で歩いて行く道にワクワクしている気持ちもありますし、応援してくださっているファンの方に対しての感謝の気持ちもすごくあります。

"アイドル・葵わかなとして"は最期の日まで…高校生のこんな私に何ができるのかは分かりませんが、気持ちの部分で全力でお返ししたいと思います。返しきれない部分は…その後のお芝居の方で少しでも見ていただけるように頑張ります。