2014年5月14~16日の3日間、東京ビッグサイトで開催された「第23回ソフトウェア開発環境展」。セタ・インターナショナルは、近年関心が高まっているベトナム・オフショア開発のニーズに応えるべく、ゴルフダイジェスト・オンライン(以下、GDO)など先進ユーザー企業の事例をはじめ、充実した情報発信を行った。

オフショア先の有力候補としてベトナムへの期待が高まる

2回目の出展となる「第23回ソフトウェア開発環境展」におけるセタ・インターナショナル出展ブース。導入先企業のロゴマークも掲示されていた

セタ・インターナショナルにとって同イベントへの出展は2回目だが、今回の出展は大きな意気込みがあるという。それは、拡大するベトナム・オフショア開発のニーズに向けて、会社そのものが新しく生まれ変わったからである。

これまでの同社は、早くから欧米企業を中心にベトナム・オフショア開発を手がけてきた米SETA INTERNATIONAL LLCと、ビットアイルグループでWebシステム開発/スマートフォン・アプリ開発を手がけてきたテラスの子会社という位置付けだった。それが、2014年5月1日に親会社のテラスと合併、新生セタ・インターナショナルとして再スタートし、より強力な体制でグローバル開発を推進していく姿勢を明確に打ち出したのである。今回の出展は、そのお披露目も兼ねている。

セタ・インターナショナル 技術部第一課 課長 前田圭一郎 氏

実際、同社に対する関心は着実に高まっている。セタ・インターナショナル技術部第一課の課長を務める前田圭一郎氏によると、会期3日間で約200名の来場者が同社ブースを訪れ、そのうちの約100名と名刺交換するなどし、今後の商談につながる可能性があるという。 同氏は、「前回までは、ベトナム・オフショア開発の需要の伸びなど、市場動向に関する一般的な質問がほとんどでした。しかし今回は、弊社が提供しているサービスの具体的な内容に関する問い合わせが増えるなど、オフショア先の有力候補としてベトナムに対する認知と期待が広がっているようです」とし、手応えを強く感じているという。

ベトナムの現地スタッフが語る ベトナム・オフショア開発の魅力

ベトナム現地事業所からも数名のスタッフが駆けつけた。まず話をうかがったのは日本事業部の事業部長を務めるグエン・カオ・クオン氏である。

ベトナム現地事業所で日本事業部 事業部長を務めるグエン・カオ・クオン氏

――事業部長というと、日本的な感覚ではかなりベテランの方を思い浮かべますが、クオンさんは随分若いのですね。

私は33歳ですが、これでも現地では上から2番目なのです。ベトナムは国家そのものが若く、当社事業所の平均年齢は26歳です。スタッフ一同、フレッシュなパワーで成長を続けています。

――クオンさんご自身はどのような役割を担っているのでしょうか。

請け負っているプロジェクトの統括からベトナム人ITエンジニアの採用、ファイナンスの管理まで、全般的に担っています。また、日本のお客さまのベトナム事業所視察の際にも、私がアテンドを担当させていただいています。

――多くの来場者からさまざまな質問を受けたと思いますが、印象に残ったのはどんなことでしょうか。

件数として多かったのは、日本語のコミュニケーション能力や開発品質に関する質問ですが、中にはベトナム人ITエンジニアの離職率の高さを懸念されているお客さまもいました。もちろん、どの内容も私たちが自信をもって対策に取り組んでいることですので、しっかり説明させていただきました。

――離職を防ぐために、具体的にはどんな施策をとっているのですか。

社員の結束力を高めるため、福利厚生や教育など業務を離れた部分での施策も充実させています。例えば、女性スタッフの出産休暇を保証するなど、日本企業と同等の人事制度も取り入れつつ社員のケアに努めています。こうして皆、高いモチベーションを持って仕事に臨んでいますので、安心してオフショア開発をお任せください。

次に話をうかがったのは、ベトナム現地事業所の管理部でマーケティングを担当しているグェン・フォン・ジャン氏だ。

ベトナム現地事業所の管理部でマーケティングを担当するグェン・フォン・ジャン氏(右)

――今回は、来場者にどんなことをアピールできましたか。

オフショア開発にあたり、コストの効率化だけでなく高品質化にも徹底して取り組んでいることです。例えば、弊社にはQA(Quality Assurance)チームという品質管理の専門組織があり、開発したシステムの綿密なテストを実施し、さまざまなお問い合わせに日本語で対応しています。また、お客さまに提出するドキュメントも、すべて日本語で作成しています。

――日本語でコミュニケーションをとれるのは、顧客にとってとても心強いですね。

当社にはお客さまとのやりとりを仲介するブリッジエンジニアと呼ばれる上級ITエンジニアがいて、彼らは皆、日本で働いていた経験をもっているので日本語を話せることはもちろん、日本の開発手法を理解しています。

――ジャンさんご自身も我々とまったく変わらない高い日本語能力をお持ちですが、どのように身に付けたのでしょうか。

ベトナムの高校で日本語を学びました。また、日本の大学に留学したことも良い経験になりました。私もさまざまな場面で通訳を担当させていただいており、より多くの日本のお客さまと一緒にお仕事ができることを楽しみにしています。

先進ユーザー「GDO」と「ガリバー」の事例が高い関心を集める

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO) 開発チーム
マネージャー 村松篤史氏

ブース内のステージでは、いち早くベトナム・オフショア開発を導入したGDO開発チーム マネージャーの村松篤史氏、ガリバーインターナショナル ITチームの坂口直樹氏によるユーザー事例講演も行われ、来場者の関心を集めた。 世界ナンバーワンのゴルフサービス企業を目指すGDOが、ベトナム・オフショア開発のパートナーとしてセタ・インターナショナルを選んだのは「日本語でのコミュニケーションが問題なく可能」「日本側のSEもサポートしてくれる」「日本語の設計書で会話ができる」「ベトナム人は真面目で向上心が強い」といった理由からだった。

前年度との比較で開発スピードが約20%向上、品質が約18%改善しているという成果を紹介しつつ、村松氏は「今後も継続した取り組みによって、日本品質と同等以上のレベルを目指していきます」と意欲を示した。

ガリバーインターナショナル
ITチーム 坂口直樹氏

一方、中古車販売のガリバーインターナショナルは、クラウドサービスの積極的な活用やAWS(Amazon Web Services)へのインフラ移行など、全社的なIT改革への一連の取り組みの中で、2013年にオフショア開発に踏み切った。同社は、親日的な国民性や優秀な人材を確保できる点からベトナムに注目。「少人数でのスタートでしたが、現在ではiPadアプリや社内ポータルサイト、海外展開システム(タイ)へと、オフショア開発の対象領域を拡大しています」と坂口氏は語った

日本からのオフショア開発は中国が中心地となるケースが多いが、カントリーリスクやコストの上昇といった課題も顕在化している。今後は、ベトナムでのオフショア開発の事例が増えていくことになるであろう。