企業であれば何かしらの方法で従業員の勤務管理をする必要がある。幸い、さまざまな技術やツールを利用すればかなりことを管理・追跡できる時代だが、やり過ぎはどんな場合であっても良くない。Incが「監視にならずにスタッフの生産性を追跡するには(原題:How to Track Your Employees' Productivity Without Becoming Big Brother)」で、管理する側もされる側も納得のいく方法を決める方法を紹介している。

少し前であれば勤怠管理というとタイムカードだったが、ICT利活用が進む現在では様々なやり方がある。

例えば、大手小売りチェーンの英Tescoでは、スタッフにアームバンドを装着させ、マネージャーが倉庫における各スタッフの動きを追跡しているという。しかし、トイレ休憩まで追跡していたことから、スタッフから非難の嵐が起きたという。

Tescoはほんの一例で、こうした最新技術を利用した行動追跡は増えているようだ。食事休憩などの仕事に関係ない行動も追跡する企業もあるし、米国では連邦政府が500万人におよぶスタッフの仕事とプライベートの両方の活動をモニタリング。セキュリティリスクの疑いがある人を割り出しているという。

しかしその一方で、どこまでであれば"勤怠管理"としてOKなのか、それぞれ認識が異なるところだ。極端な例ではあるが、企業が入出管理を目的にマイクロチップの埋め込みを検討したことを受け、カリフォルニア州ではそうした方法での監視を禁じる法律が可決したという。

一方で、スマートフォンやタブレットなどのデバイスと、FacebookなどのSNS、手軽に遊べるスマホゲームなどの普及によって、従業員が仕事に集中できなくなるという事態が生じているのも事実だ。米Yahoo!では、自宅勤務中の社員がVPNにログインすらしていない事態を受け、自宅勤務を禁じる方向に転換したという。

なんらかの形で勤務時間を追跡して効率性や人的コストを追跡し数値化したいという企業側と、プライバシーを気にする従業員、両者の意図をくむ最善の解決策はないのだろうか?

記事では、双方が納得行くやり方で追跡方法を決めることを提案している。

監視ではなく改善、うるさい親ではなく個人トレーナー

まず、追跡プログラムの目的を監視ではなく、生産性の改善に繋げることを意識しよう。

喩えるなら「うるさい親」ではなく、「専用トレーナー」のような、あくまでサポートに徹する存在であるべきだ。スタッフがデスクトップ上で何をやっているのか、全てモニタリングするような手法が本当に適切だろうか?

スタッフも参加を

スタッフたち自身も追跡プログラムに参加している必要がある。「いつ」「どんな」情報を収集しているか知っていることは前提で、管理する側と同じデータにアクセスできるべきだろう。

企業がその情報をどのように利用してるのか把握して、自分たちを支援するためのプログラムという理解がそれぞれにあれば、受け入れられることだろう。

全てを管理しない

どんなに優秀な人であっても、9時から17時まで休みなく集中して仕事だけこなすというのは不可能だ。

ふとFacebookをチェックしたり、業務に直接関係ないサイトを見て気分転換すれば、次の1時間は集中することは十分考えられる。1分1秒をチェックする姿勢はしないこと。

情報を収集したら役立てる

従業員の仕事状態がわかる情報を収集したら、管理職はそれを役立てなければ意味がない。

活用すれば便利な情報だが、収集だけで終始するのはもったいないし、合意してくれているスタッフのためにも目的を果たすべきだ。

最悪のシナリオは、途中での情報共有なしにいきなり個人面接でデータを見せつけて悪い評価を下されることだろう。スタッフも一人の人間なのだから。