モバイル端末一つを持って自由に動き回りビジネスをする。そんな時代が目前まで迫っている。Web会議システムも、これからはモバイルで利用されることを前提としたものが増えることは間違いない。だが実際に運用するためには、いくつかの課題が残っているのが現状である。

では具体的に、どのような課題があるのか。そしてその解決策は ?今回の記事では、モバイルミーティングにおける課題と、その解決策について、前回に引き続き、キヤノンソフトウェア株式会社にてWeb会議システムIC3の企画とプロモーションを担当する橋本史朗氏と安場剛志氏に話を伺う。

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モバイル端末に潜む罠。エコーキャンセラーによる音声不具合

現在、数多くのWeb会議システムがスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末に対応している。だが、Web会議用端末として利用する場合、これらの製品の多くには、一つの大きな問題が存在している。それがエコーキャンセラーの問題だ。

多くのモバイル端末には、ハウリング防止用としてエコーキャンセラーという機能が搭載されている。この機能の影響によって、複数の人が同時に声を発すると、音声を打ち消し合ってしまい声が聞き取りにくくなる状況が発生する。これは端末側に由来する問題なので、解決が難しく各社とも対応に苦労している部分だ。

IC3においても、「ギリギリの調整具合を探るために、何度となくテストを繰り返しました」(橋本氏)という。その結果、現在では20人まで同時に話をしても問題のないレベルにまで達した、とのことである。「モバイル製品は、次々と新しい製品が生み出されています。それらの製品に対応するためにも、これからも実験と調整を繰り返して行くことになるでしょう」(安場氏)

回線不良によって発生する瞬断の問題

キヤノンソフトウェア株式会社 パッケージソリューション事業本部 営業本部 安場剛志氏

Web会議において最もストレスが溜まるケース、それは瞬断(通信が一瞬途切れる現象)によって音声が途切れ聞き取れなくなることだ。特にモバイルの場合では、利用する環境によって回線状況が異なるため、通常回線と比べると瞬断の危険性が高い。モバイルでWeb会議システムを運用するためには、この瞬断対策が不可欠である。

「IC3は、もともと低帯域で通信を行うことを前提としています。音声データのバッファを大きめにとっているので瞬断には強いシステムになっています」(橋本氏)その点が評価され、IC3は瞬断の多い衛星通信や船舶通信などでも利用されているとのことだ。「ただ、バッファが大きい分、これまでは遅延が発生することがありました。この部分については、バージョンアップのたびに改善されています」(安場氏)


劣悪な環境で使えてこそ利用シーンは広がる

モバイル端末の利用によって、Web会議システムの活用シーンは格段に広がって行くことだろう。だが、そのためには「ある程度、劣悪な環境でも利用できる製品である必要があります」(安場氏)

椅子と机がある静かな場所でしか使えないのであれば、これまでの利用方法と何ら変わりはない。例えば建築現場のような、座る場所もなく、騒音に満ちたような場所で使えてこそ、利用シーンは広がるのだと安場氏は語る。

ボタンが殆どない、シンプルなインターフェースが特徴のIC3モバイル画面。(画面は開発中のもの)

「建築現場は危険と隣り合わせなので、常に緊張感が満ちています。そのような場所で、話す声が聞こえなかったり、操作が複雑で分かり難かったりのような、使うことでストレスを感じる製品を持ち込んでも誰も使ってはくれません」だからこそ、モバイルで利用するためには、音質と操作性が重要なのだと橋本氏は断言する。

現在、キヤノンソフトウェアでは「建設現場で使えること」を目標として、大手ゼネコンの協力のもと、実際の建設現場にて利用のテストを行っている。そして、テストで得られたデータや利用者の意見をもとにして、IC3に改良を加え続けている。

誰でも簡単に使えなければ利用シーンは広がらない

IC3の開発において、橋本氏が特に気を使っている部分、それがユーザーインターフェースだ。「開発者は機能やボタンを増やしたがります。ボタンで操作できるから分かりやすい、などの意見もありますが、見ただけで何の機能か分かるボタンは滅多にありません。特にモバイルのような小さな画面では、ボタンが沢山並んでも使い難いだけです。使いやすさのためには、とにかくシンプルであること、それが一番大切です」(橋本氏)

キヤノンソフトウェア株式会社 パッケージソリューション事業本部 営業本部 橋本史朗氏

IC3の活用事例に「役員にタブレットを配布して緊急連絡用のシステムとして利用」されたケースがある。「社外取締役に会議の一部にだけ出て欲しいという場合があります。しかし、その一部のためだけにスケジュールを調整するのはお互いに大変です。そんな時、モバイルで会議に参加できれば手間も時間も掛かりません」(橋本氏)

しかし、社内であるならまだしも、社外の人に対して「使い方を覚えてもらう」ことを強要はできない。つまり、このように利用してもらうためには、誰もが簡単に使える分かりやすいインターフェースが必要となる。

「理想は、マニュアルがなくても直感的に分かるユーザーインターフェース」(橋本氏)である。ちなみに現在は、なんとか名刺サイズの説明書で収まるレベルまで来ているとのことだ。「ユーザーインターフェースは何が正解なのかは私達にも分かりません。だからこそ、常に試行錯誤を続けて、改良を続けていく必要があるのです」(橋本氏)

そして、その試行錯誤の成果が込められた新製品が2014年5月に発表予定となっている。詳細は、近日中に紹介予定となっているので、期待してお待ちいただきたい。

IC3について

IC3 (アイシーキューブ)は、シンプルなユーザーインターフェースで、だれでもカンタンに使い始められるWeb会議システムです。PCのWebブラウザ(Internet Explorer)あるいは、スマートデバイス(Android、iOS)で利用できます。SSL暗号化によるセキュアな通信機能を標準で搭載、同時接続ライセンスにより低コストな運用が可能であるなど、企業の遠隔会議・コラボレーション環境構築に最適なシステムです。

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