3月27日、死刑が確定していた袴田巌氏が釈放された「袴田事件」や、同じく長い間獄中生活を強いられた挙句に無罪となった「東電OL殺害事件」など、警察の捜査ミスが冤罪を招いた例は少なくない。2006年に1月に発生した「ライブドア元幹部怪死事件」も、決して不手際を認めようとしない警察の姿勢によって真相解明の契機を失った。

 栄華を誇ったライブドア本社と社長である堀江貴文氏の自宅が東京地検特捜部に家宅捜索されたのは、同年1月16日のことだった。容疑は証券取引法違反である。

 その2日後の18日、ライブドア元取締役で、同社が出資する匿名投資事業組合を管理していたエイチ・エス証券副社長の野口英昭氏が、沖縄・那覇市内のカプセルホテルで血まみれの状態で発見された。野口氏は救急車で病院に搬送された直後に死亡し、沖縄県警は発見から4時間も経たないうちに「自殺」と断定する。

 だが、状況はどう見ても自殺ではなかった。野口氏の腹部は内臓が飛び出すほど深く切られ、両手首や頸部にも深い切り傷があるにもかかわらず、警察はこれらを「野口氏が自ら行なった」とした。

 ガウンを着た状態で横たわっていた野口氏の脇には、遺族にも見覚えのない血染めのサッカーシャツが落ちていた。県警はシャツを押収したが、遺族に返還された遺留品の中にシャツはなかった。県警捜査本部は「シャツを返還した」と警察庁に虚偽報告していたことも明らかになっている(遺族は受け取りを否定)。

 ほかにも、野口氏が空港で複数の男たちと合流していたり、偽名でカプセルホテルに宿泊したり、凶器の入手が困難だった(空港からホテルに直行していた)ことなど不審な点は多かったが、県警は司法解剖のための鑑定処分許可状を請求せず、行政解剖だけで済ませたのだった。

 事件を取材したルポライターは沖縄県警の姿勢に強い疑念を感じたという。

「面倒な事件から早く手を引きたいという、刑事たちの及び腰の姿勢が透けて見えました。県警本部に日参すると、ついには取調室に入れられて、暴対の刑事に怒鳴りつけられました。『おれたちが自殺だと判断したら、それは自殺なんだ! かき回すな』と。再捜査する気など毛頭ないと分かりました」  

※SAPIO2014年5月号