2013年10月以来、全国300スクリーン以上で公開され、興行収入17.9億円を突破するなど大きな話題を呼んだ『陽だまりの彼女』。越谷オサム氏の原作を、『ソラニン』『僕等がいた(前篇・後篇)』などでおなじみの三木孝浩監督の手によって映像化された本作は、非日常的でファンタジックな世界へと繋がっていく設定を、10年に渡る純真な男女の初恋物語としてリアルに描き、男女問わず幅広い年代からの支持を集めた。

『花より男子ファイナル』(2008年)以来5年ぶりの映画出演となる松本潤と上野樹里の初共演作としても注目された本作。玉山鉄二、夏木マリ、大倉孝二、谷村美月、菅田将暉、北村匠海、葵わかな、小籔千豊、西田尚美、とよた真帆、木内みどり、塩見三省といった実力派キャストが脇を固めたほか、音楽面では、原作にも登場し、物語と密接に関わるビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」に加え、山下達郎が本作のためだけに書き下ろした新曲「光と君へのレクイエム」が、ファンタジックなラブストーリーを彩った。

そんな『陽だまりの彼女』がBlu-ray/DVDとなって、2014年4月16日にリリース決定! そこで今回は、本作の監督を務めた三木孝浩氏に、あらためて作品の魅力を振り返ってもらった。

三木孝浩監督が語る『陽だまりの彼女』

――『陽だまりの彼女』が昨年10月に公開されたあと、周りの反応はいかがでしたか?

三木孝浩監督

三木孝浩監督「いろいろな声をいただいたのですが、中でも意外だったのは、わりと年配の男性の方から気に入ったというような声をたくさんいただけたことですね。これはちょっとビックリしました。やはりラブストーリーなので、10代~30代くらいの女性がメインになる作品ですから」

――たしかに年配層からの声が多かったというのは少し意外ですね

三木監督「自分が映画を作りたいと思ったきっかけは大林宣彦監督の"尾道三部作"で、そこに含まれるファンタジー要素は、自分が作品を作る上でもヒントになっているところがあるので、おそらく年配の映画好きの方に、多少なりとも大林監督作品のニオイを感じて、そのあたりに共感していただけたのであればうれしいですね」

――『陽だまりの彼女』の監督を引き受けた経緯を教えてください

三木監督「最初は、プロデューサーから『この小説を映画化したいんだけど、監督をやりませんか?』ってオファーが来て、そのときに初めて原作を読ませていただいたんですけど、これだけ純粋な男目線のラブストーリーは最近あまり目にしないなと思って、すごくフレッシュに感じました。しかし、そう思って読み進めていたら、意外や意外の展開が待っていて……そのサプライズがとても面白かったのを覚えています」

――その段階で映像はアタマに浮かんでいましたか?

三木監督「映像が浮かぶよりも、ちょっとこれは難しいなって思いました。ファンタジーって、文字で書くのと映像で見せるのでは、表現方法がだいぶ異なってくるので、原作を読んでいる途中は別にそんなことも気にせず、純粋に物語を楽しむんですけど、いざ映像化のことを考えると、これはちょっとなかなか難しいなって」

――特に難しいと思ったのはどのあたりですか?

三木監督「リアリティラインですね。ファンタジーの設定を観客がすんなりと飲み込んでくれるかどうか。文章だと、自分の想像で補完して飲み込めちゃうことが多いんですけど、映画だと実際に人が演じている姿が目に見えるので、ファンタジックな色付けにどこまで説得力を持たせられるかが勝負になるわけですよ。そこがやはりちょっと難しい部分だなと思いました」

――原作とちがって、映像作品は時間が限られるため、すべてを描き切れないというところもありますよね

三木監督「そこで取捨選択が必要になってくるわけですが、この物語の中で一番素敵だと思ったのは、二人がキャッキャしているシーン。社会人の恋愛としては、どこか幼さがある二人ですが、その元を辿れば、中学時代の思い出に繋がる。そのころの想い、感情がそのまま十年越しで展開されているわけですから、客観的に見れば、幼く見える二人のイチャイチャ具合も、中学生の頃の恋愛感情をそのまま持ち続けている二人は、大人の目から見ると、どこかうらやましくもあるわけですよ。その部分こそが原作がみんなから愛されている理由なんじゃないかと思い、映画化するにあたっては、そこをしっかりと描きたいと思いました」