ソフトバンク・テクノロジーが世界に先駆けて提供する、Virtual SANを使ったVDIソリューション。前編では、「VMware Virtual SAN(VSAN)」の仕組みVDI導入の課題などを紹介したが、後編では、パフォーマンスやVDI環境構築のポイント、ソリューションの展望を紹介しよう。

VMware Virtual SAN x VDIがクライアント環境にもたらす革新とは?(前編)

32ノードクラスタでリード200万IOPSを実現

ソフトバンク・テクノロジー クラウドソリューション事業部 プラットフォーム技術本部 エキスパートVMwareコンサルタント vExpert 2014 大塚正之氏

「昨年8月にサンフランシスコで開催されたVMworld 2013でVSANのコンセプトに触れ、とても興奮しました。VDIソリューションのあり方が大きく変わることを直感したのです」

そう話すのは、ソフトバンク・テクノロジー クラウドソリューション事業部 プラットフォーム技術本部 エキスパートVMwareコンサルタント vExpert 2014 大塚正之氏だ。

ソフトバンク・テクノロジーは、2006年から認定パートナーとして製品の販売や環境構築支援でヴイエムウェアと協業してきた。2011年からは、VMware Horizon Viewを使ったVDI環境を自社導入しており、その経験やノウハウをもとにしたVDIソリューションも展開している。

大塚氏が直感したという変化とは、VDI導入の障害になっていたパフォーマンスのボトルネックや提供価格が様変わりする可能性のことだ。

VSANでは、外部ストレージ装置やそのためのコントローラを用意することなく、サーバ内部のストレージを共有データストアとして利用できるため、初期の提供価格が大幅に低減できるうえ、設定やその後の拡張も容易だ。大塚氏は、公開されたベータ版を使って、さまざまな検証を行ってきた。

「クラスタノードをどこまで拡張できるか、パフォーマンスはどのくらい出るのか、障害にどのくらい耐えられるかなど、細かく検証してきました。現在もさまざまな顧客環境を想定した検証を行っています」(大塚氏)

VMware側での検証も進んでいる。昨年10月にはHorizon Viewのサポートが明かにされ、ノードクラスタ上で数百台のデスクトップを稼働させることができるようになった。パフォーマンスの進化が正式に発表されたのは3月12日(現地時間)だ。

クラスタあたり32ホスト、3200VMをサポートし、パフォーマンスはリード200万IOPS(リード/ライトで64万IOPS)、容量4.5PBまでスケールさせることができるようになった。あわせて、検証済みサーバ向けストレージ製品(SSD/PCIeフラッシュ/HDDなど)も公開された。3月12日の米国での正式リリースを経て、実質的に、VDIソリューションに最適なストレージ環境ができ上がったのだ。

Virtual SANがVDIソリューションに向くワケ

前編でも触れたように、VSANの特徴はシンプルで、パフォーマンスが高く、TCO削減が可能という点だ。ヴイエムウェア マーケティング本部シニア プロダクト マーケティング マネージャの桂島航氏は、ユースケースとしては、この特徴が引き出せる、VDI、テスト/開発系、災害対策の基盤としての利用という3つを想定しているという。その中でも大きなメリットが引き出せるのがVDIだという。

ヴイエムウェア マーケティング本部 シニア プロダクト マーケティング マネージャ桂島航氏

「シンプルさという点では、ポリシーベースの運用ができること、チューニングの自動化が可能なことが挙げられます。オーバープロビジョニングがなくなり、少ないリソースでストレージ領域の変更や管理ができるようになります。パフォーマンス面では、ノードを追加することで柔軟かつリニアに性能を向上させることができます。VMの統合率も、オールフラッシュのストレージアレイと同等というベンチマーク結果があります」(桂島氏)

運用がシンプルであることに加え、サーバ向けのコモディティ化したSSDやPCIeフラッシュを使うことで、TCOについては、ストレージアレイを使う場合とくらべて半分にまで削減できるとの試算もあるという。

なお、Virtual SANはvSphereスタックと密接に統合されており、vSphere(ESXi) 5.5 update1を適用した環境では、設定画面を2クリックほどするだけで、すぐに利用が可能になる。vMotion、vSphere HA(High Availability)、DRS(Distributed Resource Scheduler)、Storage vMotionといった既存機能に対応するほか、Site Recovery Managerによるディザスタリカバリや、VDP AdvancedやvSphere Replicationを使ったデータ保護にも対応する。

既存のVMware環境とコモディティ化されたハードウェアを使って、高性能なVDI環境を容易に手軽に構築できるようになったわけだ。

ソフトバンク・テクノロジーのVDIソリューションの強み

タブレットやスマホによるBYODや事業継続/災害対策、ワークスタイル革新など、VDIに対する期待はかつてないほど高まっている。だが、これまでは、初期導入コストの高さや導入時のサイジングの難しさ、ユーザー数の増加にスケーラブルに対応できないことなどが課題になりやすかった。

そんな中、ソフトバンク・テクノロジーのVDIソリューションは、こうした課題に対してどうこたえることができるのか。大塚氏は、まずは、VDIをスモールスタートできるソリューションとして展開していきたいと話す。

「当社が提供するのは、100~500ユーザーをメインのターゲットにしたVDIパッケージです。シンプルな構成で手軽にスケールすることが最大のウリです。もちろん、重厚でしっかりとした規模のお客様に対しても、従来のエンタープライズ向けの高度なストレージソリューションをご提案することもできます。その場合でも、たとえばPoC(評価)段階でVSANを採用いただき、その後に外部ストレージを増設するといった展開が可能です。選択肢が広がることは、ユーザーにとっても大きなメリットになります」(大塚氏)

一方、ヴイエムウェア側でも、新技術の採用に積極的なソフトバンク・テクノロジーに対する支援を行っていく。ソフトバンク・テクノロジーは昨年「VMware ソリューション プロバイダ プレミア パートナー」に昇格し、VDIを含めたソリューション提供で実績を上げている。たとえば、GPUを搭載した機器でCAD分野を対象としたVDIソリューションなどだ。認定資格の取得に対して会社として奨励制度を設けたり、技術者の育成や検証環境への投資も積極的に取り組んでいる。

「ソリューションの強みは、これまでのVDI導入の実績に加え、自社導入による知見とノウハウの蓄積があることです。ここ数年はエンドユーザーコンピューティングの推進と、ワークスタイル変革にも取り組んでいます。また、ソフトバンクグループシナジーを最大限に発揮することにより、モバイル端末やネットワークインフラ、IDC、ソフト、ハードまでをからめたワンストップ型のトータルソリューションを提供できます」(大塚氏)

VSANを使ったVDIソリューションは、これまでのVDI導入の敷居を大きく下げたことは間違いない。今後のソリューション導入による成果を期待したい。

ヴイエムウェア 桂島氏(左)とソフトバンク・テクノロジー 大塚氏(右)。VSANを使ったソフトバンク・テクノロジーのVDIソリューションに対し、ヴイエムウェア側も積極的な支援を行っていくという

VMware Virtual SAN x VDIがクライアント環境にもたらす革新とは?(前編)