米Microsoftは、米国サンフランシスコ市で開発者向けのイベント「Build」を開催した。本稿では、初日の基調講演の模様をお届けする。

最初のスピーカーは、米Microsoft副社長オペレーティングシステム事業部のジョー・ベルフォア氏。同氏は、これまでWindows Phoneの担当者としてたびたび表に出てきたが、今回は、WindowsとWindows Phoneの両方についてスピーチを行う。

Windows Phone 8.1とWindows 8.1 update 1を説明したのはマイクロソフト副社長でオペレーティングシステム事業部のジョー・ベルフォア氏

Windows Phone 8.1アップデート

ベルフォア氏が最初に紹介したのは、来月からアップデートが開始されるWindows Phone 8.1。Windows同様にバージョンの違いは0.1しかないが、比較的大きなアップデートだとされている。最初は、ロックスクリーンのカスタマイズで、これは、APIが用意されて、オリジナルのロックスクリーンを作ることが可能になるという。また、スタート画面も、背景を指定でき、このとき、タイルの地の部分が透明になって背景が見えるようになるため、ちょうどタイルが窓のようになったスタート画面になる。

このほかにも、標準アプリのアップデートなどがあるが、ベルフォア氏が時間をかけたのは、8.1のアップデートと同時に米国でベータリリースが開始される「コルタナ」だ。コルタナは、いわば、アンドロイドのGoogle Now、iOSのSiriに相当する機能だが、Xboxのゲーム「ヘイロー」に登場するAIの名前だ。日本での認知度はいまいちだが、ヘイローはXboxで最も売れたゲームで、米国などXboxが普及している地域での認知度が高いゲームだ。そのゲームの主要な登場人物(主人公のマスターチーフの相棒としてゲームの進行に関わる)をそのままの声で「パーソナルアシスタント」に仕立てたわけだ。Google Nowは比較的無個性で無人格で、Siriは、人格を感じさせるが、背景や物語を持っていない。しかし、コルタナは、ゲームのキャラクタであり、想像上のものではあるが、その背景や経歴を持っていて、ゲームの情報として「常識」になっている。Wikipediaの英語版などにも「Cortana」の項目があるし、日本語のWikipediaの「ヘイロー」にも「コルタナ」についての説明がある。

ゲームHALOのキャラクタをそのまま使うパーソナルアシスタント「コルタナ」。ユーザーは音声やテキストでコルタナと会話できる。当初は英語のみ、その後英国版、中国語版が登場予定

さて、コルタナは、Bingを基盤として利用するユーザーインターフェース部分で、ユーザーの音声入力やテキスト入力に自然言語で応答するほか、システムからの通知を行う役目も持っている。

また、Windows Phone 8.1では、アプリケーションが自身をコルタナ経由で起動できるように作ることができ、このとき、決まったキーワードではなく、自然言語の解釈の上起動できるようにすることが可能だ。Windows Phone 8.0でも音声によるアプリケーションの起動は可能だったが、決まったキーワードを登録し、そのキーワードでだけ起動が可能な機能しかなかった。

コルタナは、ユーザーの興味や音声経由で起動するアプリを選択できるほか、親しいユーザーを登録しておくことで、ユーザーが忙しい場合にコルタナがメッセージなどを通知するかどうかを自動的に判断できるようだ

また、家族などをあらかじめ登録しておくことで、位置や状態などを把握した処理も可能になるようだ。デモでは「妻が帰宅したら電話したい」という入力が可能だった。

Windows Phone 8.1の改良点はいくつもあり、比較的大きな改良になるが、コルタナの実装は、一般ユーザー向けには大きな改良点にみえるだろう。少なくとも、音声入力と音声応答という他のプラットフォームが持っている機能をようやく手に入れたことになる。

Windows Phone 8.1は、既存のWindows Phone 8マシンに対して5月からアップデートが開始されるほか、今後登場する新しい機種には最初から搭載される

Windows 8.1アップデート

Windows 8.1のアップデートは、内部的な部分は別にして見た目の変更は、スタート画面とタスクバーになる。まず、スタート画面右上のユーザーアイコンの隣に電源ボタンと検索ボタンが追加された。これらは、どちらもチャームバーから起動可能な機能だが、いちいちチャームバーやチャームを開かなくても、再起動や電源オフが可能になる。また、検索ボタンは、検索チャームを開くもので、いわばショートカットのようなものになっている。

Windows 8.1 Update 1では、ストアアプリもタスクバーに表示され、ピン留めも可能になる。このため、ストアアプリへもタスクバーからワンアクションで切り替え可能になる

Update 1のスタート画面。デスクトップからマウスで左下のウィンドウズアイコンでスタート画面に切り替えるとタスクバーが出たままになる。また、アプリ画面への矢印の横に新たに登録されたアプリケーションがある旨のメッセージが出ている

スタート画面右上のユーザーアイコンの隣に電源ボタンと検索ボタン(検索チャームの起動ボタン)が新たに配置された

スタート画面のタイルをマウスで右クリックするとコンテキストメニュー(右クリックメニュー)が表示されるようになった

タスクバーには、ストアアプリの登録が可能で、アップデート直後には、Windowsストアのアイコンが登録される。タスクバーへの登録は、スタート画面または、アプリ画面で可能だ。このときマウスを使っていれば、対象アプリのタイルの上で右クリックするとコンテキストメニューが表示されるようになった。表示される項目は、モダン環境のメニュー(画面下からのエッジ操作)と同じだが、視線の移動が少なく、これまでデスクトップを使ってきたユーザーにとっては見慣れた操作となる。

また、スタート画面の左下に出るアプリ画面への移行ボタンの横にアプリのアップデートや追加があったというメッセージが表示されるようになった。従来は、画面右上のトーストでの通知で時間が経過すると消えていた。

Windows 8.1 updateは、無料でWindowsアップデート経由で配布が行われる。米国では4月8日から