国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、「時間形質(情報)」と並んで神経幹細胞が数1000種類もの多種多様な神経細胞を生み出す仕組みとして重要な「空間形質(位置情報)」を獲得する詳細な仕組みを、小脳の研究によって明らかにしたと発表した。

成果は、NCNP 神経研究所 病態生化学研究部の星野幹雄部長らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、日本時間4月2日付けで米科学誌「Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載された。

2014年2月に、星野部長らの研究チームは2014年2月に「神経幹細胞の時間情報の制御メカニズム」として、小脳脳室帯の神経幹細胞が数1000種類もの多種多様な神経細胞を生み出す仕組みとして、その細胞が所定の位置に移動してからどのぐらいの時間が経過しているかといった「時間形質」(時間情報)が重要であることを英オンライン科学誌「Nature Communications」に発表していた。

今回の研究はそれと関連するもので、以前から神経幹細胞が脳内のどの位置にいるかという「空間形質」(位置情報)も重要であることが判明していたが、その仕組みを解明した形となる。小脳において「Ptf1a」と「Atoh1」という2種類の転写因子(タンパク質)が位置情報を与えることによって、神経幹細胞が異なる種類の神経細胞を生み出すメカニズムを、遺伝子改変マウスを用いて明らかにしたというわけだ。

今回の連続した2つの成果は神経幹細胞が多様な神経細胞を生み分ける仕組みを理解する上で有意義な研究であり、今回の成果を活かせば、培養皿で増殖させた神経幹細胞の位置情報や時間情報を操作することによって、多種多様な種類の小脳神経細胞を作り出すことができるようになる可能性があり、将来、小脳運動失調や小脳機能異常が原因となる運動失調や自閉症および認知症などの病態解明や治療法の開発も期待されるとしている。

神経幹細胞と位置情報の関係