KDDI新規ビジネス推進本部 戦略推進部長 江幡 智弘氏

KDDIは3月27日、インキュベーションプログラム「KDDI∞Labo」の第6期参加チームを公開した。6チームのうち、同ラボ初となるB2Bソリューションをコンセプトに掲げるチームが2チーム選出されている。

チームの発表に先立ち、KDDI新規ビジネス推進本部 戦略推進部長の江幡 智弘氏が登場。これまでの2年半の取り組みを振り返り、着実に成果が出ていることを説明。「先日、Facebookページで2万いいねをいただくなど、活動が根付いてきているのではないかと感じる。今後は、周囲の企業を巻き込んだスタートアップ支援を行なっていきたい」とした。

今回、選出されたチームは5チームで、学生枠で2チームが選ばれている。

サービス名 学生枠 サービスコンセプト
QuaQua - ハンドメイドクリエイターのための製造・販売プラットフォーム
MistCDN WebRTC1を利用したCDNサービス
bambie - 子供の成長を記録できる動画日記アプリ
Repro - アプリの行動解析などを行なうチームコラボレーションツール
KEY 女性の、女性による、女性のため、のキュレーションアプリ

QuaQua

QuaQuaは、「ハンドメイドクリエイターの働き方を変える」をコンセプトに、アクセサリーの販売だけではなく、デザイナーに代わって製造まで手掛けるプラットフォームを目指す。

ハンドメイドの販売プラットフォームは、海外では「Etsy」というサイトが頭一つ抜き出ており、国内でも徐々に人気が高まりつつあるという。一方で、これらのサイトでは画一的なWebサイトしか用意されていないため、クリエイターそれぞれが独自の世界観を表現できない課題があるという。

そのような課題を解決することで、QuaQuaでは将来的に「世界展開を視野に入れ、年収300万円のクリエイターを1万人創造したい」という。デザインをQuaQuaに投稿するだけで、製造販売をQuaQuaで行なうため、クリエイターがアイディアを出すことに集中できることがメリットだとしている。

また、集まったデザインをサイトでユーザーに投票してもらい、人気の高い商品だけを商品化するという構想もある。これにより、顧客支持のプロダクトを作ることで、在庫を減らすことができ、QuaQuaとしても在庫リスクを極小化することができるメリットもあるという。

MistCDN

MistCDNは、東京大学大学院に通う田中氏と井上氏が提供するCDNサービス。CDNはContents Delivery Networkの略で、動画などのリッチコンテンツを提供する際に、遠くのサーバーへコンテンツを取りに行くのではなく、近くのサーバーキャッシュなどを利用して迅速にユーザーへコンテンツを提供するネットワークサービスのことだ。

CDNといえばアカマイやCDNetworksが強豪だが、MistCDNはこれらのCDNとは異なり、ユーザーのブラウザキャッシュなどを活用することで、「近くのブラウザからコンテンツをもらう」ことをコンセプトとしている。従来型のサーバーからコンテンツを引っ張ってくるモデルと競合するわけではなく、あくまで「補完する形でMistCDNを利用してもらうことを想定している」と田中氏。

ブラウザ同士のコンテンツ融通は、セキュリティネックも存在するため、まだまだ乗り越えなくてはならない壁があるというものの、ネットワークの最適化はKDDIというネットワーク事業者に密接に関係する話でもある。そのため、B2Bというこれまでの∞ラボにはないチーム選択も行なわれたわけだ。

技術的には、WebRTCを用いることにより、低コストのP2P型CDNを提供するとのことで、ユーザー側も「特別なソフト導入やプラグインは必要ない」(田中氏)。「近くに目的のコンテンツをもったユーザーがいる場合には、ダイレクトにやり取りをし、近くに居なかったら、サーバーからコンテンツを取ってくる。Javascriptのコードを数行入れるだけで利用できるようにして、最適な負荷分散を、独自アルゴリズムを利用して提供する」(田中氏)

bambie

Bambieは子供の動画日記を、1日最大30秒程度、気軽に撮影して撮るだけで貯めていくことができるサービス。スマートフォンで身近になった動画撮影だが、同チームの聞き取り調査では「動画活用はママ達に難しい」ことがわかったという。

このことから、「管理」「整理」「共有」をアプリ上で簡単にできるようにし、なおかつ撮り溜めた動画を、bambie側が独自アルゴリズムで成長日記のまとめ動画として編集してくれるサービス提供を行なうという。

動画撮影時に簡単なコメントを付けるだけで日記ができるという点と、日記を付ける習慣作りが苦手でも、撮影しなかった日にはスタンプを貼り付けることで隙間を埋められるメリットを挙げたbambie。特にスタンプは、まとめ動画の作成タイミングと連携しており、現時点では30個貯めるとまとめ動画として提供する予定だという。

マネタイズは「フリーミアム+物販」とのことで、動画を撮るニーズが一番強い"子供"にターゲットを絞ることで、ユーザー体験を高めたいと語っていた。

Repro

Reproは、アプリUIの行動解析、効果測定だけでなく、技術者とサービス企画の非技術者が議論を行える"チームコラボレーションツール"を提供する。

MistCDNと同じくB2Bサービスの提供となるが、こちらは効果測定+コラボレーションツールというやや特殊なプラットフォームであるため、競合他社に詳細情報を知られたくないとのことで、大まかな概要説明に終始した。

ただ、ネイティブアプリ事業の隆盛とともに、効果測定のみのSDKだけではもはや差別化が図れないとの思いから、コラボレーションツールとしての立ち上げを考えたというReproチームのコンセプトは強く表われていたといえるだろう。

KEY

最後に説明を行なったKEYは学生枠での選出。「女性の、女性による、女性のため、のキュレーションアプリ」をコンセプトとしており、女性自身がコンテンツを簡単にまとめ、拡散できるようなアプリ開発を行なっていく予定だ。

キュレーションサービスはレッドオーシャンと自ら語るKEYだが、「ヤフーを例に取るとわかりやすいが、カテゴリを細分化することから、ネットサービスは広がっていった。キュレーションは本質的に様々な情報を取れるが、ユーザーに分化した情報を取れるようにしたかった」と語り、ターゲットを絞ることの優位点を強調。メンバーには女性がいないため「女性の皆さんからのアドバイスをいただきたい」と話し、笑いを誘っていた。

最後は全員で記念撮影