人間とコンピュータの向き合い方とは?

現在人間の1勝2敗で推移している「将棋電王戦」(イベント当時は0勝1敗)。今後、コンピュータが人間を凌駕していく可能性も大いにあり得る。

山本さん「将棋は、一昔前はもう箸にも棒にも引っかからないようなものでしたが、今はプロ棋士と戦えるレベルに達しています。コンピュータにできることがどんどん増える中で、人が自分たちの価値をどう見つけるかが重要になってくるのではないかと思います」

将棋ソフトが実際どれくらい強いのかは、実は開発者にもわからないのだという。「本当は、プロの方と100局1000局とやっていただければと思うのですが…」と期待する山本さんに「お貸ししましょうか(笑)」と返す中村さん。

中村さん「棋士から見ると、電王戦は将棋界から見るとありがたいイベントです。今まで将棋に触れることのなかった層に注目いただく機会になっているかなと。新しい方向の可能性が出てきたので、いろんなことができるんじゃないかなと前向きに考えています」

将棋ソフト開発者は「あと20年楽しめる」

もしコンピュータが完全にプロ棋士を打ち負かす未来が来てしまったら、将棋界はどうなるのだろうか? そのヒントはチェスにあると山本さんは語る。

山本さん「チェスは1997年にコンピュータがプロに勝っているんです。今チェス界がどうなっているかというと、プロの方は必ずコンピュータチェスを使って自分の研究をされている。開発者も、目標が達成してやる気がなくなるかと思いきや、毎日差分が更新されているような状態です」

中村さん「もっと強くなってるってことですか?」

山本さん「当時よりもっと、桁違いに強くなってると思いますね。楽しくて楽しくてやってるんでしょうね。将棋の方も、第4局で出てくるソフト『ツツカナ』の開発者一丸(貴則)さんと会って話してたら、『まだ20年くらい楽しめる』と言ってました(笑)」

電王戦の勝敗予想は…?

イベント時には、「今後人間の方が強くなるという見方もありますが…」という質問も飛び出した。

中村さん「コンピュータ将棋によって発見された思わぬ手筋もありますので、人間が吸収して、より高い次元で戦えるのではないでしょうか。将棋が完全解明されることはないので、ずっと楽しめると思います」

山本さん「今、ほとんどのコンピュータ将棋ソフトはプロの棋譜から学習を行ってるので、プロをはるかに超えよう、新しい局面を迎えようとすると、いつか限界が来るんじゃないかと思っています。更に上を目指すのであれば、コンピュータ同士の自己対戦から更に上を目指すのか…もしくは自分で探索をしてフィードバックをもらうという学習形態にならなければいけないのかと思います。でも、人間も一緒ですよね。コンピュータもそういう局面に来ているのではないでしょうか」

最後に電王戦の勝敗について、人間側から見て「4勝1敗」(中村さん)「2勝3敗」(山本さん)と予想。第5局では山本さん開発の「Ponanza」が登場する予定だ。これまで将棋に触れたことがなかったという人も、ぜひ勝敗の行方を見守ってみてはいかがだろうか。