オーストリアamsは3月11日、都内で会見を開き、同社のセンサ市場に対する取り組み、および日本地域に対する考え方などの説明を行った。

amsのExecutive Vice President,Sales & MarketingであるEric Janson氏

「センサというと、70年代から活用されてきており、枯れた技術のようなイメージがあるが、その当時の適用先の多くが産業用途や車載用途などであり、センサそのものもシリコンプロセスを用いていないため大型でかさばるものばかりだっただめ、民生機器に用いられることはなかった。しかし、近年の半導体技術の進化により、シリコンを用いたプロセスを活用し、安価で小型の製品が製造できるようになり、さまざまな機器に搭載できるようになった」と語るのは同社Executive Vice President,Sales & MarketingのEric Janson氏。

また、技術の進化により1つのセンサモジュールに複数の機能を持たせることが可能となったことも、民生機器での活用を加速させている。具体的には、「2014年には2010年のセンサに比べ、3倍の機能が搭載されるようになったが、ASPは3割下落した」とのことで、その背景にはスマートフォンの爆発的な普及があるとする。現在の最新世代のハイエンドスマートフォンであっても、さまざまな機能を実現するためには、そうした機能統合されたセンサを6-7個搭載する必要があり、さらに将来のスマートフォンではより多くの機能を実現するために、新たなセンサの開発と機能統合が求められていることから、まだまだセンサ市場の成長は続くという。

過去のセンサ技術は周辺を含め回路規模が大きくなり、自ずと搭載できる機器が限定されてしまっていたが、現在ではシリコンプロセスをベースとしたセンサ技術の活用により、複数の機能を1チップ上に統合することが可能となった

中でも期待されるアプリケーションとしては、血流量や血圧といったライフログの取得。これらのデータはヘルスケア分野とも密接に連動する必要があるため、スマートウォッチやライフログリストバンドがそうしたデータの端末として活用され、市場として成長することが見込まれている。「スマートウォッチ市場がモバイルのサブセットで終わるのかどうかはまだわからない。しかし、多くのユーザーは、こうしたデータが手軽に手に入るということに関して満足している」とのことで、それなりの規模の市場になることが見込めるとした。

「血圧などのデータに異常が発見されれば、そのデータが医者に届けられ、そうしたデータを基に疾病を見抜くことができるようになる。重要なことは医師や看護師がそれをベースに薬物の投与量などを管理することができるようになることだ」とのことで、そうした機能を搭載したスマートフォンが2014年末には登場するとの見方を示すほか、さらに先進的な機能を搭載した端末も2015年には登場するであろうとの見方を示した。

スマートフォン/タブレットの高機能化に伴い、そこに搭載されるセンサの数や機能は増加の一途をたどっている。この傾向は今後もしばらく収まりそうになく、それがセンサデバイスの牽引役にもなっている

また、今後のセンサに対する市場からのニーズとしては、やはり一番にコストの問題が来るほか、次いでサイズ、そしてどれだけの機能が統合され、ソリューションとして提供されるか、という順になっており、こうした民生機器市場でのニーズに対応をしていくことで、自動車や医療、産業機器分野に対するメリットを打ち出せるようになる、とするほか、そうしたセンサの発達が"スマートライティング.コグニティブ・ライティング"といった次世代照明などの分野を生み出す下地にもなるとした。

センサの高機能化が医療機器や自動車、産業機器などに新たなアプリケーションを搭載させることを可能とする

一方、日本地域に対する取り組みは、というと、「日本は電装関連のリーダーであり、自動車、産業機器、医療用機器などの主要産業で強いポジションにある」とのことで、中でも自動車と産業機器の優先順位が高く、その次にコンシューマ分野だという。「日本は自動車や産業機器分野でリーダー的な位置にあり、長期的な展望を持っている。そうした企業のロードマップに参画することはamsの長期的な成長にとっても重要」とのことで、日本でのエンジニアチームの拡充なども含めて、今後取り組みを進めていくとした。ちなみに、東京大学とも協力関係を構築しており、年に4~6名程度の学生をインターンとしてオーストリアの本社に派遣し、研修を行ってもらう、といった取り組みなども進めており、積極的に日本のエンジニアを活用していく姿勢を強調していた。