豆柴センパイ、捨て猫だったコウハイと。

「間違いを犯したことのない人というのは、何も新しいことをしていない人のことだ」と語ったのはアルベルト・アインシュタインです。古今東西の賢人による名言やことわざなどから良好な人間関係を作るためのヒントを解説した書『あいつの気持ちがわかるまで』(宝島社)を上梓した著述家の石黒謙吾さんが、この言葉の真意を解説します。

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身の周りにいませんか? いつまで経っても具体的に動かない人が。「今度会おう会おう!」と言いながら日にちの約束をしてこないとか。僕はこれを「やるやる詐欺」と呼んでいます。こういった人々はいつも「やりましょうよ、やりましょうよ!」とその時だけは威勢が良い。いや、別に「やっぱダメでした! 会えません!」だったら構わない。それを言ってくださいよ! 具体的に動かないと絶対進まないのに、動いてくれない人が多過ぎる。

一番カッコ悪いのはもっと大きいやつですね。「やっぱ、情報化時代はこういう新しい動きをしないといけない!」みたいに、あまりにもスケールがデカ過ぎることを言う。各論では何ですか? 一歩動き出すために何をやるのですか? と尋ねて答えられないと、「お前は評論家か!」と思います。「批評」という行為や、「自分はこれから大きいことをやりたい」という状況にある時は、そのことは言わない方がいいのではないでしょうか? 大きい話はなかなか達成できることではないので、「やるやる詐欺」扱いされてしまうからです。

でも、小さい話は言えばいい。話すことによって結果に繋がるかもしれないですからね。僕は今年53歳ですが、小さい話を言えるようになったのはこの2~3年のことです。若い頃に言ったら、「夢見がちなヤツめ」と思われると思っていたので、それはカッコ悪いな……、と。

でも、53ってオッサンですから、体力も減っているし徹夜もできないので、何かを実現するにも若者に敵わないところがあります。でも、「これを実現するのは夢じゃないか……」と思うことはあるものの、普段から常に半分くらい、イメージしていることは実現できているわけです。年を取って経験も増え、少しは足場が固まっているので、できるようになったのかもしれません。そういった意味では、オッサンは小さな話は言ってしまっても構わないでしょう。

20代の人は自分の現在の器といいますか、能力とはかけ離れたことを言いがちです。夢は大きい方がいいですが、あまり言わない方がいいです。夢は言っていた方が実現する――こういう意識も分かります。でも、人がどう思うかを考えた方がいいです。目先のこと、たとえば来週できそうなことや、1年くらいでできることがあるのであれば、いいです。会社を作り、1年間で3倍の売り上げにする、とかだったらいい。しかし、「世の中を動かす」みたいな具体性ないものはダメなんです。抽象論になってしまうのですね。

「やるやる詐欺」に戻りますが、一番の身近な例はメールをくれない人。「企画書出します」といって、出さない人。むちゃくちゃ忙しい人だと分かっていて、「こりゃ、進められないんだな……」ということが分かる人のことは、理解できるんです。進まないのは、よっぽど忙しいんだろう、と僕だって思います。

明らかにそんなに仕事していないだろうという人がメールしてこなかったら、「あらららら……」と思います。仕事するんだったら、ちゃんと動かないといけないんですよ。そうしないと失敗さえできません。失敗しないと学べません。僕は野球をやっていますから、自分が投げているボールを見て「あぁ、ヒジが下がっているな。コントロールがヒドいのはこれが理由か」ということが分かります。理由が分かれば、具体的対策に繋げられるのです。メールさえ送らないのであれば、失敗の理由は分かりません。

ここ3~4年で思っているのが、カルチャーに対して造詣が深くて、インプットがすごい出版関係の人って、アウトプット量が少な過ぎるということです。ものすごい知識がありますけど、インプット量が多過ぎて飽和して、形が作れないか下手、或いは動けない状態になっています。あれが好き、これが好き、とインプットしているものの、何かアウトプットとか企画を出して下さい、と言うと何も出てこないんですよね。

「インプット病」とでも言えましょうか。本を読んだり映画を観たりすることに快感はありますが、インプットばかりして、アウトプットをしないとブヨブヨしちゃうじゃないですか。

口だけで、何も残せない出し方を知らないのかもしれませんね。仕事によって色々状況は違うとは思いますが、出す術を知らない人もいます。それをどうやってフィルターに通していくか、の工程を知らないから、話をしていても、右から左へ流すだけです。いわば、材料があるのに料理をしてくれないという状態なんです。料理しなくては面白くないでしょ? 魚を釣って持ち帰ってきただけでは面白くないでしょう。魚がそこにあることは一応「食べる」ことへの糸口ではあるものの、そこで魚の話や、釣りの技術の話をしても、自分の得意話しかできず、料理ができないと結局何のアウトプットにもならないんですよ。

最近会った若いクリエーターで、「次は何をすればいいですか?」「締め切りはいつですか?」といった形ですぐに答えと方法を聞いてくる方がいました。こちらはそれの答えを言ってもいいのですが、この方は深く考えてなく、すぐに答えが欲しいだけなんです。だから、料理法がいつまでたっても分からないんですよね。仕事って料理だと思います。いろんな素材を選ぶ面があるワケです。

仕入れて、どう調理するかのレシピがあって、作っていくスキルが必要で、サーブするというところまで広がり、スキルが上がっていくのが仕事ってものなのですね。

【石黒謙吾(いしぐろ・けんご)】
著述家・編集者 1961年金沢市生まれ。
■映画化されたベストセラー『盲導犬クイールの一生』、さまざまな図表を駆使し森羅万象を構造オチの笑いとしてチャート化する“分類王”としての『図解でユカイ』はじめ、『2択思考』『7つの動詞で自分を動かす』『ダジャレヌーヴォー』『カジュアル心理学』『CQ判定常識力テスト』『ナベツネだもの』『ベルギービール大全』『短編集 犬がいたから』など幅広いジャンルで著書多数。
■プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』、『負け美女』(犬山紙子)、『飛行機の乗り方』(パラダイス山元)など200冊近く。
■草野球歴34年で年間40試合というバリバリの現役プレーヤー。高校野球とビールと犬と笑いとキャンディーズ、そして熱いモノすべてを愛する。