池袋サンシャインシティで3日間にかけて開催された印刷メディアビジネスの総合イベント「page2014」。その2日目に、印刷物を手がけるクリエイター向けのWeb制作関連セミナー「Jimdo VS Muse、サイト制作に使うならどっち?」が行われた。

「Jimdo」と「Muse」は、直感的な操作ができるため、Webサイト制作の初心者や印刷系デザイナーにも知名度が高いソフトウェア。このふたつを比較しつつ、それぞれの便利さや導入の利点を学ぼうという内容だ。

学習コストを下げ、制作効率を上げるブラウザ型サービスの「Jimdo」

ブラウザ型Webサイト制作サービス「Jimdo」の解説は、KDDIウェブコミュニケーションズ SMB事業本部副本部長の神森勉氏。Web制作を独学で学んだ経験を元に、Webサイト制作の学習にかかるコストの高さや技術書選びの大変さを振り返った後、現在はJimdoをはじめとした初心者に優しいサービスやソフトの登場により、かなり容易に取り組める状況になったことを伝えた。

JimdoはWebサービスなので、ブラウザと素材があればすぐに利用できる

次に、印刷関連従事者とWeb制作の関係性について、現在の企業向けWebサイト制作は印刷物の制作と連携できること、パンフレットやチラシの素材が流用できることなどを説明した。Jimdoを「担当者のWeb制作の技術面での不安を補うことができるサービス」と表現し、その利点や実績について、「無料で導入できるので、余計な設備投資なしに、ブラウザと原稿素材があればWebサイトが気軽に作成できます。2013年11月には、世界各国の1,000万サイトに採用されました」とアピールした。そして、前述のWebと印刷物の制作に関連した話題として、Jimdoは印刷物に付随したWeb制作の依頼にも対応できることを紹介した。

Jimdoを実際に使ってみるデモも実施された

続いて、同サービスのデモでは、会社案内の素材を用いたWebサイト作成、ネットショップの作成、クライアントへの更新作業の分配といった3つの視点から、主な機能を解説。ひとつ目のタームでは、会社案内で利用した原稿や写真素材が二次活用できる利便性と、基本的な使い方やテンプレートやテーマによるデザインの自由度の高さを紹介した。

ふたつ目のタームでは、品数重視のAmazon型、イメージ重視のセレクトショップ型の2パターンを例に、ネットショップの制作方法を紹介した。同サービスで適用可能な決済方法がPaypalのみになるため、簡易的に導入したい企業サイトに向くなど提案時のポイントも加えられた。3つ目のタームでは、Webサイトの制作には欠かせない更新作業の問題に触れ、初心者向けのJimdoを用いることで、クライアントへの作業分配が容易になり、恒常的な運用コストが抑えられるという利点が伝えられた。

最後に、神森氏はJimdoの利点を、「素材流用の容易さ」、「デザイン面でのオリジナリティの出しやすさ」、「ネットショップやスマートフォンサイトへの対応」、「制作サイトの手離れのよさ」の4点にまとめた上で、「ツールの使い方を学ぶ手間を軽減できる分、サイトの見やすさや構造、情報整理のルールといったサイト制作の基礎知識の積みあげに力を注ぐとよいのではないか」と提案し、解説を終えた。

DTP作業感覚で扱えるデスクトップ型ツールの「Adobe Muse」

Museは、アドビ システムズの定番ツール群と似た操作感でWeb制作が行えるツールだ

後半は、アドビ システムズのエヴァンジェリスト・大倉壽子氏による「Adobe Muse CC」(以下、Muse)の解説が行われた。「Muse」は、Adobe Creative Cloudのひとつとして販売されているデスクトップ型ソフトウェア。コードを書かない、直感的な操作によるWeb制作を実現し、「プラン・デザイン・プレビュー・パブリッシュ・管理」の5ステップで制作を完了できる。

また、印刷系の制作現場で圧倒的なシェアを誇るAdobeファミリーの製品であるため、IllustratorやInDesignなどのソフトウェアと似た操作感で使用することができ、PSDファイルをはじめとしたデータの連携が容易な部分も魅力だ。メニューのピンチイン・アウト表示などを活用したショップサイトなどの紹介もあわせ、2013年には世界で50万件のサイトが導入されていると紹介された。

Museのデモ画面

制作デモでは、全3ページのサイトを例として、Museを用いたWeb制作の5つのステップを段階的に解説した。ユーザーの動きや視点を意識したインタフェースのため、各ステップを左から右に進めていくことで完成に近づくという仕組みに触れた後、順番に各項目に触れていった。「プラン」ではサムネイルベースのサイト構築の方法が、「デザイン」の項目ではマスターページの制作とウィジェットライブラリの活用、およびDTP作業との関連性や簡易な操作によるインタラクティブ要素の追加などが説明された。

加えて、大倉氏はMuseの強みを「Web知識の少ないデザイナーでも、直感的な作業でWeb標準のHTML5に対応した正しいコードのサイトが制作できる」点であるとコメントした。PhotoshopからPSDファイルを直接配置できるため、印刷物の作業と連携も容易になると強調。「パブリッシュ」では、Creative Cloudユーザーであれば無料で利用できる同社のWebホスティングサービス「Business Cataryst」と連携したサイトの紹介を行った。サーバやドメイン設定、来訪者データといったデータ収集面により、Museの機能をさらにパワーアップさせる仕組みを解説。加えてWebデザイナーやコーダーとのデータのやりとり方法なども公開された。

Museを導入して制作されたWebコンテンツ

最後に大倉氏は、「DTP作業の感覚でWebサイトが作成でき、印刷系のデザイナーの方も直感的に利用できます。サンプルファイルやチュートリアルも充実しているので、ぜひ一度使ってみてください」と結んだ。

利用環境と費用から導入を考える、直感型のWeb制作ツール

「Jimdo」ならびに「Muse」は、どちらもHTMLやCSSなどのスキルを持っていなくてもWeb制作ができるツールだ。印刷系デザイナーやWebサイト制作初心者が容易に扱える工夫や機能が盛り込まれている点も近い。そこで変わってくるのは、個人や自社の情報発信、クライアントから「Webサイト"も"制作してほしい」と依頼された場合など、活用シーンや利用環境、パッケージの違いなどの要素ではないだろうか。現在、両者のWebサイトではより詳細な情報が掲載されており、無料でテスト利用もできる。どちらが導入に適しているかの比較はもとより、ぜひ一度実際にツールを体験してみてほしい。