(左)雨宮まみさん、(右)岡田育さん

独身女性の気持ちを綴った連載『ずっと独身でいるつもり?』の雨宮まみさんと、"交際0日婚"の新婚生活をテーマした連載『嫁へ行くつもりじゃなかった――私の新婚日記』の岡田育さん。昨年末に、それぞれマイナビニュースでの連載最終回を迎えたお二人による、連載終了記念対談が実現。恋愛や結婚について連載の舞台裏を語ってもらいました。

■衝撃と納得の最終回
岡田育さん(以下敬称略)「まずは『ずっ独』の連載終了おつかれさまでした。雨宮さん、いったいどこへ行きつくんだろうって毎回ハラハラしながら読んでましたよ」

雨宮まみさん(以下敬称略)「途中で本当に嫌になってたから」

岡田「実は結婚願望があったんです、でも、ない時期もあったんです、だけど、あるんです……、こんなに激しく揺れ動く気持ちがどう収まるというのか。最終回なんて『突然ですが、先日のお見合いが成功して、嫁ぎます。田舎に』みたいなまさかの展開しかないんじゃないか……」

雨宮「なったら面白かったんですけどね」

岡田「そうでなかったらもう、私たち読者の代わりにいくらでも怒ったり泣いたりしてくれながら、どこまでも続いていくんじゃないかと。40回くらいの時点で『いつまで書き続けるんだろう』と心配になってたんですけど、じつに70回まで来て、まさかあんな終止符の打ち方になるとは」

雨宮「わりとぶちっ! と終わっちゃいましたね」

岡田「ええ、でも、読者の心情にはすごく合ってたと思います。『ええい、何をどう考えていたって、私は私なんだ!』っていう」

雨宮「急に、ずっと持ってたボールをターッて投げてカーンて(バットでボールを打つ動作)」

岡田「そう、今までの迷いはなんだったのっていうくらい(笑)、爽快で。マイナビニュースの読者で雨宮さんの連載を読みながら、途中で結婚した人もいるだろうし、お見合いした人もいるだろうし、この連載を励みにこれからも独身で生きていく人もいるだろうし、最後にスカッとあのホームランというのは、みんな溜飲下がったと思います」

雨宮「あれを読んでいて途中で結婚した人がいるんですけど、岡田さんの連載を読んですごく共感していて。独身のときは結婚すれば幸せなんだって思ってたんだけど、そういうもんでもなかったし、自分が思っていたような夢みたいな結婚とか、愛し愛される幸せな生活とかいうものではなかった。別にそれは不幸だったとかいうことじゃなくて、楽しいのは楽しいんだけど、『いいね、新婚だから幸せで』と言われるような幸せとは違う形なのに、それを全然分かってもらえない違和感を岡田さんが書いてくれていることに共感しているって」

■お泊まり武装と二次元の刷り込み

――岡田さんの連載についてはどうですか?

雨宮「岡田さんの、恋愛がすごく苦手だったのに結婚ということになって、『恋愛が苦手だったら、結婚は結婚で別なんだから、別でやった方がいいじゃん』ていう話があるじゃないですか。その後どうなんですか? 私は友達だって認識している人が、恋愛だとか性を含めての対象というところに来ちゃうと、若干違和感というか気持ち悪さが最初あるんですよ」

岡田「プロポーズを受けて最後まで迷ったのは、そこですよね。結論から言うと、今となってはまぁ、なるようになっていますよ。逆に、そういう形でいきなりの結婚をしてみて感じたのは、今まで恋人の家へ遊びに行ったりするとき、どれだけ『武装』して臨んでいたのか、って話ですよ」

雨宮「本当に大変ですよね」

岡田「あれがしたいって女子もいるとは思うんですよ。『私はいつまでも、彼に恋愛や性の対象として見られていたい』と」

雨宮「『家での化粧は、常にしていたい』みたいな」

岡田「そう。今思えば私、どうしてあんなに『恋愛力が高い女』のフリをするのに必死になって、しかもその延長線上に『結婚』があると信じてたんだろう、って感じです」

雨宮「他のことは普通にしてるんだけど、恋愛についてだけ、多分、二次元とかの刷り込みしかないから、自分らしくなく、『こういう風にするもんなんだろう』って、お手本に忠実にがんばっちゃう」

岡田「そうそう! 恋愛経験が乏しいがゆえの恋愛脳、みたいな……」

雨宮「私、最近になってようやく、年下の男性が周りに増えてきたんですけど、年下の男性をデートとかに誘うとき、どうしたらいいのか考えると、年上の妖艶なお姉さんみたいなのしか思いつかなくて、もう、『寄ってく?』みたいなのしかないんですよ。でも、絶対それじゃないのね」

岡田「『島耕作』に出てくるような女だ!」

雨宮「そうそうそう。でも誘えなくて」

岡田「そういう女のなりきりプレイを続けてると、雨宮さんの求めるような結婚は遠のいていくばかりじゃないんですか……」

雨宮「結婚っていうか恋愛も無理ですよ」

■雨宮「自分がものすごい夢見がちな人間だってことに気付いたんです」

雨宮まみさん

岡田「いきなり結婚して相手を恋愛対象にできるか? という話に戻しますと、うちの場合は、夫が恋愛脳というか、結婚後も恋人気分を持続できるタイプだったので」

雨宮「その話ね、すごい聞きたかったの」

岡田「家で私があけすけな物言いをしたり、あられもない格好でいたりすると、向こうが『やめて……もっとこう、ロマンチックでお願いします』と注意してくれます」

雨宮「旦那さんはロマンチストなんですよね。岡田さんはどうなんですか?」

岡田「私は……。もともと恋人らしいことをするのに慣れてないので、勝手がわからないんですよ。何か記念日が近づいたりすると夫のほうが『そろそろ誕生日……だね?』みたいな感じですね」

雨宮「ソワソワ……。かわいいー! 乙女だ!」

岡田「『デートとか……する?』『お、いいねぇ。このところいつもユニクロばっかり着てるから、新しい服でも買うか。伊勢丹メンズ館でも行くか』みたいな」

雨宮「わ!『プリティ・ウーマン』! 逆だ。めちゃくちゃいいな。伊勢丹メンズ館で好きなもの何でも買ってあげるよ、って」

岡田「本当ですね……。いや、お返しもしてもらいますが、とにかく恋人っぽいことをしたがるのはいつも夫、応じるのが私、です。それが、すごく心穏やかでいられるんですよ。『こんなこと言うと嫌われるんじゃないか? 百年の恋も冷めるんじゃないか?』といった恋愛のお作法を気にすることなく、『たまにはこういうマフラーもしてみなよ』とか『次はこっちに行こうよ』とか、遠慮なく好きに言い合える。変な話、結婚して初めて、そうか、恋人気分を味わうってこんなに楽しい行為だったのか、と教わった気がします。ことほどさように恋愛に不向きなんですよ、帰り道で一人反省会するようなデートしか経験がなかったんですよ、結婚前の私は!」

雨宮「岡田さんは、そういうことをしてあげる方は得意だと思う。だからやっぱりすごく合ってるんじゃないですかね。そう、ロマンチックといえば、岡田さんは宝塚が好きじゃないですか。私宝塚好きになって、自分がものすごい夢見がちな人間だってことに気付いたんですよ」

岡田「はい、はい、わかりますよ。実際に目の前で見せてもらえるとね、『私が欲しかったのはこれだ!』ってなりますよね」

雨宮「黒えんび服でバラの花を差し出すダンスがあって、それを見た後に友達3人で話していたんですよ。『あんなえんび服を着た男性が、バラの花をひざまずいて渡してくれるなんてこと、あったとしても一生に一度くらいしかないじゃない?』って言ったら、『いや、雨宮さん、一生に一度もないよ』と言われて。『結婚式とかでないの?』って聞いたら、二人とも結婚経験あるんですけど、『ないない』って。でも一生に一度のことだから、ひざまずいてバラを渡しながらプロポーズくれてもいいじゃない! とか思っちゃって。だから私は常にロマンチックなことを求めてて、普段は無理なのは分かってるけど、結婚っていう一生に一度のイベントくらい、キメキメでやってほしいっていう、意外とものすごいスイーツ脳だったっていうのが分かって。多分結婚となったらめっちゃドリーム爆発すると思うんですよ」

岡田「うわー、派手婚を!」

雨宮「そうそう、あの悪名高いガーデンウェディングとかやって、ひんしゅくを買うタイプ」

岡田「いいじゃないですか、あれ、招かれる側はすごく楽しいですからね! 準備する新郎新婦は大変そうですけど……」