2013年夏に移転したフィンエアーの本社は、ヘルシンキ空港の側にある

フィンエアーと聞いて、「あのマリメッコの?」とイメージする人も多いだろう。フィンエアーは2013年11月1日に90周年を迎え、現在も運航している航空会社の中では、世界で5番目に古い航空会社に当たる。その本社は2013年の夏、ヘルシンキ空港のそばに移転した。そこで訪れた本社では、様々なところで「北欧デザイン」を実感させられることとなった。

こだわりデザインにサウナまで

フィンエアーの本社には、約900人が勤務している。新しいオフィスになってから、ほぼ全ての部署が同じビルにいることになったため、より部門間の協力体制が取れるようになったそうだ。また、本社ビルは環境にも優しい設計になっており、LEEDのゴールド基準を満たしている。

エントランスではエアバスA330の模型飛行機がお出迎え

オフィス内は木の温もりを生かしたデザインで、ホワイトとブラックを基調にしたチェアーやテーブルなどが設置されている。1階にはレストラン&カフェのほか、「Marimekko for Finnairコレクション」や機内販売商品をそろえたショップがあり、これらは一般来場者も利用できる。

そしてオフィスにはサウナまであるのだ。サウナ文化のあるフィンランドでは、サウナを完備している家庭も少なくない。とはいえ、オフィスにもサウナを設置しているのは珍しいと言えるだろう。なお、サウナに関しては、一般来場者は利用できない。

「Marimekko for Finnairコレクション」もそろったショップで買い物を、レストラン&カフェでまったり、という楽しみ方も可能

社員は仕事の疲れをサウナで癒やすこともできる

会議スペースにもこだわりが詰まっている。照明の使い方やチェアのデザインもそうだが、空間の取り方も興味深い。また、各ルームはナンバリングではなく、フィンランドの山の名前を使って分けているのも、自然と共存するフィンランドのイメージにぴったりである。

フリースペースの照明使いもカッコいい!

会議スペースも温かみを感じるデザインに

ロッカーのキーにはプロペラが

決め手のひとつは「アジアに人気」

フィンエアーは2013年の春より、マリメッコと3年間にわたる長期的なデザインパートナーシップを結んでおり、「ウニッコ」(ケシの花をモチーフにした花柄)をペイントしたエアバスA340機-300型機が、ヘルシンキとアジアの各都市を結ぶ路線で運行されている。「ウニッコ」の特別塗装機は1機だけなので、必ずその機体に乗れるというわけではない。とはいえ、運航情報はホームページでも確認できるので、タイミングを合わせて利用してみるのもいいだろう。

「ウニッコ」の特別塗装機はアジア路線で運航中

また機内では、マリメッコデザインのファブリックや食器類に包まれる。こうしたデザインは通常、ビジネスクラスからということが多いのだが、フィンエアーではエコノミークラスでもマリメッコデザインを楽しめる。加えて、ビジネスクラスのガラス類は、同じくフィンランド発のブランド「イッタラ」である。

マリメッコや「アラビア」、「ナンソ」などの北欧デザインは、日本のみならず世界でも広く愛されている。そこで今回、あらゆる北欧デザインの中でマリメッコを選んだ理由を、シニア・バイス・プレジデントのアルヤ・スオミネン氏にうかがった。

「マリメッコは、ファブリックだけでなく食器などもデザインしていること、そして、アジアにも人気があることが決め手となりました。現在、日本には東京、大阪、名古屋に就航していますが、日本も含めたアジアはフィンエアーにとって大きなターゲットであると考えています」(アルヤ・スオミネン氏)。

ビジネスクラスで注文できる「オーロラカクテル」もイッタラのグラスで。1月の初旬の取材時にビジネスクラスで提供された「ムール貝とワカメのお味噌汁」は、アジア料理を得意とするフィンランドのトミ・ビョーク シェフの一品

旅をリードする女性に刺さるデザイン

また、マリメッコと言えば「ウニッコ」のようなフェミニンなデザインをイメージする人も多いだろう。では、マリメッコを採用した目的は、女性を意識したものなのだろうか。

「特に女性をターゲットにしている訳ではないのですが、近年の調査で、男性よりも女性の方が旅行の主導権をにぎっていることが多いこと、また、旅行に対する女性からのニーズが高まっていることが分かっています。そうした意味では、数あるキャリアの中でフィンエアーを選んでいただけるひとつのポイントに、マリメッコはなっているのではと思っております」(アルヤ・スオミネン氏)。

実際、機内で展開しているマリメッコデザインを見てみると、深いブルーと淡いグリーンを用いたデザインは、女性のみならず男性にとっても居心地のいい時間を提供してくれる。これらの機内限定のマリメッコアイテムは、機内販売やフィンエアーの関連ショップでも購入することができる。コレクターもいるため、売り切れになってしまうこともあるという。

ビジネスクラスでは、マリメッコの急須でサービス

「Marimekko for Finnairコレクション」たち

マリメッコとの提携は2016年春までだが、今度の状況によっては延長されることもあるよう。とはいえ、今だけのデザイン空間を、是非機内で味わっていただきたい。

※取材協力:フィンエアー