NTTドコモでは、2015年までの中期ビジョンとして「スマートライフのパートナー」の実現を掲げ、日常のあらゆるシーンで、利用者の生活をサポートする取り組みを拡充する方針だ。

この理念を受け継ぎ、ドコモ・ヘルスケアでは、"健康"の分野から利用者の生活をサポートする取り組みを開始している。今回、ドコモ・ヘルスケア 代表取締役副社長の村上享司氏に事業の狙いについて聞いてきたので紹介しよう。

ドコモ・ヘルスケアの村上享司氏。「利用者の皆さまに、明るく生き生きと健やかな生活を送っていただけるためのご提案をしていきたい」と語った

―― 会社設立の経緯について聞かせてください

ドコモとオムロンヘルスケアを親会社とするドコモ・ヘルスケア社は、2012年7月に設立されました。ドコモでは、かねてから通信事業だけにとどまらず、新領域事業を創造して社会のために貢献していきたいという想いがありました。またオムロンヘルスケアでは、健康機器の販売だけでなく、もう一歩踏み込んだユーザーを健康にするためのソリューションサービスの提供を模索していました。その2社の想いが重なってできた合弁会社がドコモ・ヘルスケアです。

ネットワーク、スマートフォン、クラウド、アプリケーション開発などのモバイルICT技術に長けるドコモと、生体情報センシング&アルゴリズム技術などに強みがあるオムロンヘルスケア、両社の強みを活かすことで、健康市場の価値を新たに創造していくことができるようになりました。弊社では利用者の皆さまに、明るく生き生きと健やかな生活を送っていただけるためのご提案をしていきたいと考えています。

―― 2013年の春に開始したポータルサイト「WM(わたしムーヴ)」について教えてください

血圧計、体重体組成計、歩数計など様々な機器からデータを預かり、分析を加えるなどして利用者の皆さまに戻すサービスを事業の柱にしています。そのためのプラットフォームが、WM(わたしムーヴ)です。

WM(わたしムーヴ)は、弊社だけで作り上げるものではなく、健康分野で貢献したい、コンテンツを提供したいと考える方々や企業の皆さんが集まっていただける場にしていきたいと考えています。包括的、総括的なプラットフォームにしていく予定です。

ドコモ・ヘルスケアが提供する各種サービスが全てこのWM(わたしムーヴ)に紐付いている、そんなイメージです。現在は「dメニュー」からリンクをたどればWM(わたしムーヴ)のサイトに行くことができますが、ゆくゆくは、ドコモ直営のサービスが集まる「dマーケット」からも利用できるようにしたいと考えています。

―― 2013年12月から「からだの時計」と呼ばれるサービスを開始しましたが、どんなサービスなのでしょうか?

現代人は、生活のリズムが不規則になりがちです。実はこれが原因で病気につながるケースも多くみられます。からだの時計は、乱れた体内時計を整えれば生活習慣病を改善できるという理念に基づいた、健康支援サービスです。疲れの回復や、アンチエイジング、またダイエットなどでも効果を実感していただけることでしょう。このサービスでは、利用者がデータを入力する必要があります。それを手助けするために、手首にはめるだけでからだのデータを計測できる「ムーヴバンド」というものを1月下旬に発売を予定しています。

(編集部注:ムーヴバンドの発売時期についてのコメントは取材時点のものです。同製品の発売日は1月29日となります)

ムーヴバンドは、防水対応のウェアラブル端末。これによりデータ入力が容易になる。乱れた体内時計を整えれば、人間は本来の力を取り戻せるという

からだの時計の利用者は、約1,000本のヘルスケアコンテンツが使い放題になるメリットもあります。コンテンツにはエクササイズ動画やリラックスできる音楽、健康に気を遣った料理のレシピ、気軽に実践できるストレッチやツボの情報、などを用意しております。これらが月額300円で使い放題になります。

からだの時計では、生活リズム提案や健康アドバイスなどを提供

このほか、無料の健康電話相談も利用できます。24時間365日、通話料無料のサービスで、ご本人やご家族のお悩み相談に医師や看護師・保健師などの専門家がお答えします。また人間ドックの予約にも対応します。最大50%の割引で人間ドックを受けることもできます。

約1,000本のヘルスケアコンテンツが使い放題になる。無料の健康電話相談も利用可能。アプリから直接電話がつながるようになっている

―― からだの時計を開発した経緯と狙いについて教えてください

最近の研究では「体内時計」「時間医学」というものに注目が集まっています。一方で、最近は24時間生活のライフログを取得できるウェアラブル端末なども市場に出てきました。私たちはこれらのトレンドを掛け合わせることができるサービスとして、開発を進めてきました。

―― 想定しているターゲット層はありますか

老若男女、ターゲットゾーンは広いと感じています。販売チャネルのドコモショップでもしっかりオススメしていく方針です。例えばシニア層を中心にしたお客様にはアンチエイジング、女性の方にはダイエット、男性の方には疲れ解消といったように、お客様に響くテーマで紹介していきます。

―― 今後の展開について教えてください

私たちは「からだ発ライフスタイル提案」という価値観を目指しています。第1弾として「カラダのキモチ」を2013年6月にサービスインしました。こちらは女性の利用者を対象にした健康支援サービスです。第2弾が、からだの時計になります。ドコモ・ヘルスケアでは現在、この両サービスを事業の柱に展開しています。当面は会員数を増やし扱うデータを増やすことで、WM(わたしムーヴ)のプラットフォームを充実させていくことに注力します。

その後、プラットフォームを活かした新事業を立ち上げていく方針です。WM(わたしムーヴ)は、オープンな場として提供していく予定です。そうすることで、様々なコンテンツプロバイダーさんにも来ていただける。数年先にはそうした方々と一緒に組みながら、新たな価値を提供していけたらと思っています。また、健康支援を軸とした他社の異なるプラットフォームとの連携も考えています。市場全体のシナジーを考えながら、サービス領域を多様化していく方針です。

―― 最後に、利用者にメッセージをいただけますか

私たちは、利用者の皆さまに少しでも健康的に、生き生きとした生活を送っていただきたいと思っています。そのために知恵を出し合って、新たな価値やサービス、ソリューションを提供していきます。まずは我々のプラットフォームに来てサービスを体験していただければ幸いです。

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"健康ブーム"もあり、昨今では老若男女を問わず健康への関心が高まっている。一方でスマートフォンやクラウドサービスが普及し、ライフログを記録できるウェアラブル端末が市場に出回り始めている。こうした背景を考えると、ドコモ・ヘルスケアは機器とサービスが出揃ったベストタイミングで事業を開始したと言えそうだ。

インタビューで村上氏が言及することはなかったが、"食の安全"を提供する「らでぃっしゅぼーや」との連携なども実現すれば面白い。「健康を核にした一人ひとりのスマートライフの実現」を経営ビジョンに掲げる、同社の今後の展開に期待したい。