実際、先ほど紹介した第3のモバイルOSの多くは「HTML5」でのアプリ動作を許容しており、特にFirefox OSでのメイン動作環境はHTML5となっている。HTML5に対応し、クロスプラットフォーム環境が整備されることで、AndroidとiOSに集中していた状況が緩和され、第3のモバイルOSでのアプリ不足を解消することになるだろう。

このHTML5対応で注目の会社がGoogleだ。同社はAndroidとは別に「Chrome OS」をリリースしており、このメインのアプリ動作環境がHTML5となっている。イメージ的にはGmailやDocsなどGoogle AppsのWeb版をそのままモバイルOS上で利用する感じだ。同社は去年2013年3月にAndroidとChromeの部隊を1つの部署に統合しており、一時は「Androidを終息させてChrome OSへと一本化する」という噂が出た。だが後に「そのような計画はない」と会長自ら否定しており、おそらくは「Androidのシェアを活かしつつ、Chrome OSで実現される(HTML5)環境を広げていく」という狙いがあるとみられる。

実際、2013年のGoogleは「Chrome OSで動作する"Chromeアプリ"」をWindowsやMac、さらには他のモバイルOSで動作させるべく熱心に活動している様子がうかがえる(参考記事 1)(参考記事 2)。その究極が「Mobile Chrome Apps」だ。AndroidやiOS上でランチャーアプリとして動作し、ChromeアプリをこれらOS上で動かすというものだ。2014年初頭をめどに、Android版とiOS版リリースが噂されている

以前に、Yoichi Yamashita氏が「モバイルの未来!? Androidを飲み込みそうな「Android版Chrome」というタイトルのコラムで解説していたが、技術の進化がモバイルWebブラウザを実用的なものにし、さらにモバイルOS自身を食ってしまうのではないかと予測していた。だがそれは、記事の公開された日から2年の歳月を経て現実のものとなりつつある。実際、同コラムの執筆された2012年のGoogle I/Oカンファレンスに参加した、ある同業者の感想が印象的だった。「Google I/OではAndroidの存在感が薄く、むしろChromeらWeb開発を前面に推している」というもので、Google自身が「Androidは中継ぎで、本命はChrome」という戦略をすでに2年近く(おそらくはそれ以上)前から抱いていたというわけだ。

最後に、2013年12月末に一部で大きな話題となったデータを紹介して話を締める。調査会社の米NPDが2013年の米国でのコンシューマデバイス販売状況をまとめたデータだが、販売数シェアでPCが減ってスマートフォンやタブレットの比率が増えているというのは予想の範疇だが、なんと「Chromebook」のシェアが0.2%から9.6%まで急拡大しており、無視できない水準となっている。

ChromebookとはChrome OSが動作するノート型デバイスであり、機能的には実質的にWebブラウジングとChromeアプリの利用しかできない。それにも関わらず販売台数が急拡大できたのは200ドル未満という小売店での安売り攻勢に他ならない。機能が限られているにもかかわらず、なぜ米国人はPCや他のタブレット製品ではなくChromebookを選んだのかといえば、安価でかつ「やりたいことはこれで十分」というわけなのだろう。「値段は正義」というわけだ。これがいま、ほかのコンシューマ市場にも波及しかけている段階なのかもしれない。

米国でのコンシューマデバイス販売数シェア推移の年率変化(出典: NPD)