東芝が20日、近接無線通信技術「TransferJet」対応のUSBアダプタを発売した。ラインナップはUSBアダプタ「TJ-UA00A」およびmicroUSBアダプタ「TJ-MU00A」、そして両製品を同梱した「TJ-MUA00A」の3製品。価格はオープンで、店頭想定価格は単体で4,000円前後、2製品を同梱したモデルで10,000円弱だ。

TransferJetは理論値最大560Mbpsで通信できる近距離無線通信規格で、通信距離は0~3cm。実効速度は最大375Mbpsで、計算上は128MBのファイルを約3秒で転送可能となる。従来、一部のソニー製品を中心に搭載されてきた技術だが、今回のUSBアダプタを接続すると、TransferJet非搭載のPCやタブレット、Androidスマートフォンで、大容量のデータをTransferJetで手軽に転送できるようになる。

では、その実力はいかほどか? というわけで、同社から試作機をお借りし、幾つかのファイルをPCとスマートフォン間で転送。転送にかかった時間をストップウォッチで計測してみた。

東芝が発売した、USB対応アダプタ「TJ-UA00A」(上)およびmicroUSBアダプタ「TJ-MU00A」(下)。TJ-UA00AはUSB 3.0に対応し、サイズはL24.3×W15×H7mm。TJ-MU00AはUSB 2.0に対応し、サイズはL24.7×W21×H7.8mm

使用イメージ。USBアダプタはUSB 3.0に対応する。使用PCは2013年秋冬モデルのLaVie Z(NEC製)。スマートフォンはソニーの「Xperia Z」。なお、microUSBアダプタ「TJ-MU00A」は防水仕様のスマートフォンにも対応するデザインという

ちなみに左のスマートフォンに表示されている写真は、横浜・赤レンガ倉庫のクリスマスマーケットで展示されていたセクシーサンタさん(人形)

使用前の準備として、まずWindows 7 / 8対応の専用ソフトウェアを同社Webサイトから、Android 4.0~4.2に対応する専用AndroidアプリをGoogle Play(いずれも無料)からダウンロードする必要がある。その後、PCにUSBアダプタ、スマートフォンにmicroUSBアダプタを接続すれば準備完了だ。

まずは専用ソフトウェアをダウンロードする。ダウンロードが完了したら、setup.exeを起動し、PCにインストールすると、自動的にアイコンがデスクトップに配される

専用AndroidアプリはGoogle Playからダウンロードしよう。その後コンテンツを表示すると、自動的に共有先としてTransferJetを選択できるようになる(画像右、リスト最下部)

PC側の専用ソフトウェアを起動したところ。初回のみ、データ転送前に対応機器の認証が行われる。PCではソフトウェア上で受信モード/送信モードの切り替えが可能。Android側では、アプリ起動ですぐ受信モードになる。送信するにはコンテンツを選択した際の送信先でTransferJetを選択する必要がある

スマートフォンの写真をPCに転送したところ。左がPC側の表示、右がAndroid端末の表示。Androidの場合、受信データは内蔵ストレージの「TransferJet」フォルダに保存される

測定では、「スマートフォンで撮影した写真50枚の転送」「PC内のハイレゾ音源1曲の転送」「PC内の4K画像300枚を圧縮した1ファイルの転送」の3つの環境を試した。結果は、下記の通り。

なお、使用したPCは2013年11月発売のNEC「LaVie Z」のカスタマイズモデルで、OSはWindows 8.1 64bit、CPUはIntel Core i5-4200U、メモリが4GB、ストレージが256GB。スマートフォンは、2013年2月に発売したソニーの「Xperia Z」を使用している。

スマートフォンで撮影した写真50枚の転送(スマートフォン→PC)

ファイル形式と容量 JEPG、合計55.9MB
転送時間と概算速度 約12.13秒(約4.6MB/秒)
USBケーブル(USB 2.0)経由の場合(PC→microSDHC) 約12.72秒

PC内のハイレゾ音源1曲の転送(PC→スマートフォン)

ファイル形式と容量 FLAC、158MB
転送時間と概算速度 約15.99秒(約9.88MB/秒)
USBケーブル(USB 2.0)経由の場合(PC→microSDHC) 約28.37秒

PC内の4K画像300枚を圧縮した1ファイルの転送(PC→スマートフォン)

ファイル形式と容量 zip、1.4GB
転送時間と概算速度 約2分32.64秒(約9.17MB/秒)
USBケーブル(USB 2.0)経由の場合(PC→microSDHC) 約4分6.97秒

「USBケーブル(USB 2.0)経由の場合」という項目は、TransferJet経由ではなく、microSDHCカードをUSB 2.0対応のメモリカードリーダーでPCと接続し、同じファイルを転送した場合にかかった秒数だ。上記リスト一番最初の写真50枚の転送時間は誤差としても、ほかはファイル容量が大きくなるにつれTransferJetの速さが目立つ。カードの抜き差しやPC側の操作数など手間も、TransferJetの方が少ない印象だ。

写真1枚単位の転送は1秒かからず、ファイルの転送は想像以上に便利だったが、ネックは4,000円前後という価格。ギークなユーザーは購入してきっと満足するだろうが、高校生や大学生など若年ユーザーに浸透するには少々高いかもしれない。

現在、本製品のAndroid用アプリの設定では4GB以上のサイズのファイル送信は行えないが、同社は、今後TransferJet搭載のSDカードの製品化も予定するという。これが実現すれば、例えばデジタルカメラで撮影した1枚5MB前後の高解像度の写真を、カメラ内にSDカードを入れたまま、アダプタにタッチするだけでPC側に大量転送、という使い方が可能となる。また、TransferJetのiOSデバイス用アダプタや、内蔵PC/スマートフォンの登場など、今後の幅広い製品化に大いに期待したい。

12月24日、クリスマスイブの深夜に会社でひとり、TransferJetで転送時間を測定する