大阪市立大学(大阪市大)の高田洋吾 准教授らによる研究チームは12月17日、立体的な構造を有する鋼橋各箇所を自由に移動し、目視検査が可能な橋梁検査ロボット「バイリム(BIREM)」を開発したこと、ならびに運動解析や性能測定実験の結果、自重と同程度の重りをぶら下げても安定した上昇移動が可能なことや、水平部と垂直部の行き来、段差や凹凸を有する路面走行などに対応可能な走破能力を有していることを確認したと発表した。

老朽化により経年劣化した橋梁の崩落事故などが問題となっており、対応策が求められている。しかし、点検を行うためにも人的労力や費用が必要であり、そのコストが嵩んでいき、経済に影響を与えるようになるという課題がある。

今回開発されたバイリム(BIREM)は、Bridge Inspection Robot Equipping Magnetsの略で2012年2月に製造されたロボットで、ヒトに代わることで、将来的な点検費用の抑制を実現することを目的としている。ヤドカリが木を登る様子をヒントにして永久磁石と組み合わせたスポーク8本を持った4つの車輪が設計されており、2013年8月には基本設計をそのまま残し、旋回能力と制御用コントローラが強化された第2号機が開発された。

バイリムの全長は0.34mで、幅は0.16m、そして高さは0.114~0.124m。重量は661gで、走行速度は水平走行時で0.2m/s、垂直上昇走行時は0.15m/sとなっており、積載荷重は500gの関さ今では安定して垂直上昇が可能だ。

旋回半径は約0.45mで、鋼鉄にぶら下がったままで走行が可能であり、水平移動路と垂直移動路を行き来することが可能。また、段差を乗り越えての走行も可能(ただし70mm段鎖の走行は苦手とのこと)。

加えて、前輪と後輪にステアリング機構があるため4WS走行も可能だという。

レーザレンジセンサやカメラなどさまざまなセンサを搭載することが可能で、カメラを経由した遠隔操縦も可能であり、亀裂損傷個所について至近距離から時間をかけて見つけ出すことができる。

なお研究チームでは今後、同大ストックマネジメント研究センターを窓口として各企業と共同研究を進め、ロボットによる橋梁検査の実用化を目指すとするほか、バイリムの移動機構の派生型の開発を進め、橋梁以外の用途にも対応を図っていきたいとしている。

橋梁検査ロボット「バイリム」。左が1号機で、右が2号機