農業・生物系特定産業技術研究機構(農研機構)は12月18日、かずさDNA研究所、東京農工大学、サントリーグローバルイノベーションセンターらと共同でカーネーションの全ゲノム(生物の設計図)を解読したことを発表した。

カーネーションは地中海沿岸原産のナデシコ科ナデシコ属の植物で、切り花の生産量がキク、バラと並んで多く、世界の3大花きに数えられており、日本でも2番目に出荷本数の多い花きである。これまでの研究から、農研機構花き研究所では、さまざまな品種を開発してきたが、いずれも原因遺伝子の特性ができていなかったため、選抜と評価に時間がかかっていた。今回の取り組みは、新たな品種の育成とその育成の効率化を図ることを目的としたもので、日本で生産量の多い赤色品種「フランセスコ」のゲノム解読を行った。

その結果、推定されるカーネーションのゲノム全体(6億2200万塩基対)の91%の解読に成功。その解読配列の中から遺伝子の完全または部分構造を明らかにし、カーネーションは約4万3000個の遺伝子を持つことを解明したことで、カーネーションの持つ遺伝子のほとんどを解読することに至ったと判断したという。

また、今回の解読により、アントシアニンなどの花色に関わる色素の合成遺伝子、花持ちに関わるエチレン合成遺伝子、病害抵抗性に関わる遺伝子、花弁の展開に関わる遺伝子、花の香りに関わる遺伝子など、これまでカーネーション中には存在が知られていなかった種類のものが多数発見されたほか、それら遺伝子の働きを制御する遺伝子(転写因子)や模様の形成に関与する遺伝子(トランスポゾン)も発見されたという。

なお同機構では、遺伝子の機能解析を進めることで、カーネーションが持つ多様な花色や模様の形成機構が詳細に明らかになり、その成果が他の花きでも活用できることが期待されるようになるとするほか、ナデシコのような花からカーネーションがどのように育種されてきたのか、ナデシコの進化の解明にもつながると期待を述べている。また、今回の成果から多数の遺伝子の機能解明が進むことになるため、新品種の開発速度の向上が期待できるようになるほか、新しい花色を持つ品種、病虫害に強い品種、香りの良い品種など新たな価値をもったカーネーション品種の開発につながることも期待できるとコメントしている。

今回、ゲノムの解読が行われたカーネーションの品種「フランセスコ」