開発した“冷却チップ”。小型化した「電気浸透流(EOF)」を多段化し、冷却水の駆動力を大幅に向上することに成功した。
(提供:東京工業大学)

東京工業大学異種機能集積研究センターの大場隆之特任教授は、東京大学や大日本印刷などと共同で、40ボルトの低電圧で1平方センチメートル当たり140ワットの冷却(放熱)が可能な、厚さが100マイクロメートル(0.1ミリメートル)のチップ状冷却装置を開発したと発表した。マイクロプセッサー(MPU)など、発熱が大きい大規模集積半導体の冷却や、小型電子機器への利用が期待される。

電子機器の発熱は不可避で、マイクロプセッサーなどでは1平方センチメートル当たり100ワット以上の発熱量となり、これを並べると一般的なホットプレートの発熱にも匹敵するという。

開発した“冷却チップ”は、「電気浸透流」(EOF、= Electro-Osmotic Flow)という、電圧をかけると液体の荷電部分が引っ張られて、液体全体が流れ出す現象を利用して、冷却水を循環させる仕組み(EOポンプ)。半導体の微細化技術やウエハの積層技術を組み合わせることで実現した。半導体の一貫工程で製造でき、低コスト化が可能だ。この冷却機構(Closed-Channel Cooling System :C3S)は直接デバイスに搭載でき、小型化が著しいモバイルなどの携帯端末にも応用が可能だ。

これまで電子機器の冷却には、放熱板や外部からの強制冷却などが利用されてきたが、発熱が大きくなるに従い大型化し、携帯性も悪かった。これまでの電気浸透流を利用したEOポンプも、半導体の電源をかなり上回る高電圧のものだった。