シグナルトークは11月28日、2007年から行ってきた脳の認知機能と麻雀ゲームとの関係の研究として、同社が提供するオンライン麻雀ゲーム「Maru-Jan」のユーザー484人を、脳の認知機能が測定できるサービス「脳測」を用いてテストした結果、「視覚性注意力」「短期記憶」「エピソード記憶」において、年齢が高くなるほど、 脳の認知機能のスコアが高くなっている事が確認され、Maru-Janと認知機能の相関関係が示唆される結果を得たと発表した。

同成果は、レデックス認知研究所の五藤博義 所長、橋本高次脳機能研究所のリハビリテーション医である橋本圭司氏、青山学院大学 教育人間科学部の樋田大二郎 教授らによるもの。

今回の試験では、脳測で4種類の認知機能に関するテストを、4週間以上の間隔を空けて2度実施してもらい、そのテスト結果を年齢別(35歳以上5歳区切り)にして、「睡眠時間」「酒量」「運動量」などのアンケート回答と合わせて分析を行った。

その結果、「視覚性注意力」「短期記憶」「エピソード記憶」を測定するテストでは、一般的に高齢になると、蓄積される経験値の影響を除けば、認知機能の数値は低下傾向となるが、高齢になればなるほど(Maru-Janのプレイ期間が長いほど)、上向き傾向となることが示されたという。

年齢別の「視覚性注意力」と「短期記憶」の測定テスト結果

年齢別の「エピソード記憶」の測定テスト結果

また、睡眠、運動、酒量は、認知症のなりやすさと関係があることがこれまでの研究から報告されているが、今回の研究では、認知機能と関係があるのが運動のみであることが示されたとする。このことについて研究グループでは、一般的には睡眠も酒量も、適度が認知機能の維持、改善に好影響を与えるとされているが、今回はどちらもあまり影響を与えていないとするほか、先行研究でチェスなどのゲームをしない人の認知症の危険度を1とすると、する人の危険度は0.26という調査報告があり、チェスと同様、もしくはそれ以上に認知機能を使う麻雀を行うことが、他の生活習慣よりも強く認知機能の維持、改善に関係がある可能性があるとする。

ちなみに、運動と認知症に関する先行研究では、運動をしない人の認知症の危険度を1とした場合、週に3回以上早歩きをしている人は0.5、週3回以上歩く程度の運動をしている人は0.67という報告がなされているが、今回の調査でも、週3~4回と週5回以上の運動をしている人の認知機能が高いという結果を得ており、認知機能の維持、改善に、運動が大切さであることが示されたともしている。

一方、情報を一時的に保ちながら操作するための構造や過程である「ワーキングメモリ」については、これまでリアル麻雀の効能として言われていたが、今回の研究では、相関関係が見られず非ユーザーと同様、加齢とともに数値が低下していくことが示されたとのことで、これまでの定説とは異なる結果となったとする。

年齢別の「ワーキングメモリ」の測定テスト結果

なお研究グループは、今回の調査について、対照群(Maru-Janをしない人)が存在せず、Maru-Janと認知機能の関係を直接、明らかにすることはできず、相関関係についての可能性を示しただけであり、因果関係については別途検証が必要であると注意しているほか、リアルの世界の麻雀や他の麻雀ゲームなどについても対象としていないため、こちらも別途、実験や同様の分析などが必要だと考えられるとしており、今回の結果を過度に一般化しないように留意していただきたいとコメントしている。ただし、Maru-Janユーザーが年齢にかかわらず、注意力と記憶力という社会生活に重要な認知機能を高く保っていることを示すことができたのは有意義であったとの考えを示しており、より長期的な認知機能とゲームの関係が、広く、詳しく、研究されていく必要があるとしている。