計測機器大手のAgilent Technologiesの日本法人であるアジレント・テクノロジーは11月27日、マイクロ波アナログ信号発生器「N5183B MXG」および「N5173B EXG」を発表した。

これまで同社は信号発生器としてハイエンド分野にPSGシリーズ、ローエンド分野にMXGシリーズをそれぞれ提供してきたが、今回の2製品はN5183B MXGがミッドレンジ、N5173B EXGがローエンドという位置づけとなっており、これにより、PSGがハイエンド、MXGがミッドレンジ、EXGがローエンドという3つのラインアップでの提供という形となった。

アジレントのマイクロ波信号発生器3シリーズの位置付け。右上に行くほどハイエンドとなる。ちなみにPSGの頭文字PはProfessional、MXGの頭文字MはMidrange、EXGの頭文字EはEntryの意味も持つそうである

一般的に信号発生器は、周波数が高くなればなるほど損失が増大などが生じていくため、出力を増していく必要がある。しかし、例えばミリ波では送信側でアップコンバートを2回、受信側でダウンコンバートを2回して受け取るため、位相雑音が増していくこととなるという課題が生じることとなり、高精度な信号発生を実現しようと思うと、こうした課題の解決が求められることとなる。N5183B MXGでは、新たに開発した4つの技術を活用することで、位相雑音の低減に成功したという。

周波数が高くなるほど位相雑音が増加していってしまうため、それを抑制するためには信号発生器の精度を向上させていく必要がある

1つ目の技術は、高周波の雑音をカットできる6段構成の小型フィルタモジュールを新たに開発したこと。2つ目は低ノイズALC(Automatic Level Control)回路の開発によりノイズレベルを従来比で20倍程度低減することに成功した。3つ目は、発振器にOCXO(恒温槽付き水晶発振器)を採用することで、発信安定性を向上させたこと。そして4つ目はPSGシリーズで採用されてきたPLL回路を構成するループを3重にする「トリプルループシンセサイザ」を採用したこと。これにより、位相雑音を従来比で30dB改善することに成功したとのことで、-124dBc/Hz(10GHz、10kHzオフセット時)未満の位相雑音、スプリアス雑音-75dBcなどを実現している。

新たな4つの技術の採用により「N5183B MXG」では従来機よりも価格を抑えながら、圧倒的な性能向上を実現することに成功した

また、変調源として活用可能なマルチファンクションジェネレータ機能を搭載しており、最大6台接続させることで、ドップラーシフトなどを実現でき、マイクロ波チャープレーダーなどの環境を比較的低価格で実現することが可能となるため、PSGシリーズの代替ソリューションとしても利用することができるという。

マルチファンクションジェネレータとして利用する際のイメージ

さらにパワーアンプなどの非線形デバイスユーザー向けにUSBインタフェースのパワーセンサと組み合わせることで、出力を自動検出し、調整することができるようになる「パワーサーボ機能」も搭載。これにより、マイクロ波リンクや人工衛星のアップリンクなど重工業系のテストなどにも利用が可能になるとする。

パワーサーボ機能を活用する際のイメージ

一方のN5173B EXGは、周波数帯域が40GHzまで対応するなどの基本的な性能はN5183B MXGと同じだが、位相雑音に対する性能がN5183B MXGに比べ若干劣ったものとなっている。

従来のMXG N5183Aとの性能比較図

ハイエンドのPSG E8257Dと今回発表された2機種の性能比較。ちなみにサイズはN5183B MXG/N5173B EXGは2Uラックとなっている

なお、価格はN5183B MXGが246万4970円(税別)から、N5173B EXGが181万7405円(同)からとなっており、N5183B MXGにはオプションして位相雑音をさらに低減できる追加回路も提供される。また、同社では今までハイエンド機種が欲しくても高くて買えなかった航空宇宙・防衛、先端科学・材料研究、マイクロ波リンクや今後、高周波への対応が必要になることが見込まれる組み込み分野などのカスタマに対し、次世代ソリューションの実現をいち早く実現するために活用してもらうための提案を進めていきたいとコメントしている。

上段がN5183B MXG。下段は発生した信号を測定するためのシグナルアナライザ「N9030A PXA」。中央の写真はN5183B MXGのGUI画面