宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月26日、2013年9月14日にイプシロンロケット試験機にて打ち上げられた惑星分光観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)に搭載された極端紫外線分光装置(EUV)による木星および金星の分光観測を11月19日に実施した結果、EUVが正常に機能し、科学観測に供することができることを確認したと発表した。

また、EUVによる観測に先立ち、視野ガイドカメラ(FOV)の機能確認も行っており、対象天体を高精度に追尾する機能の正常動作も確認したとのことで、今回のEUVによる観測と併せて、ひさきの初期の軌道上機能確認が終了となり、今後、定常観測運用が始まる予定だという。

EUVで撮像した木星のスペクトル。観測時刻は2013年11月19日10:51(日本標準時)。露出時間は5分間。スリット幅は10秒角。左側が視野ガイドカメラ(FOV)の画像で、そのスリットを通り抜けてきた光の極端紫外線分光画像が右側である。右側の図の横軸は波長を表し、左端から右端までがおよそ150nmから50nmの範囲に対応。広がって観測されているのは主に地球周辺の大気の光で、そのほかに、木星磁気圏の光や、木星オーロラなども検出されている (C)JAXA

EUVにより撮像された金星のスペクトル。観測時刻は11月19日16:29(日本標準時)。露出時間は8分間。スリット幅は60秒角。左の図と同様、地球周辺の大気の光の上に、金星からの散乱光が検出されている。なお、左側の視野ガイドカメラ(FOV)画像中に見えている金星は、スリットを挿入する前に撮影したもの。右側の8分間の積分による分光観測を実施しているときには、実際にはFOV画像上、金星はスリット内に落ち込んでおり見えていない (C)JAXA

なおJAXAでは、ひさきを用いて惑星の長期間観測を行うことで、惑星環境に関する新たな知見を得ることができるようになることから、今後、人類の知の増大に貢献することが期待されるとコメントしている。

視野ガイドカメラ(FOV)で撮像された月面のクレーターの可視光画像。FOVの動作確認用に10月26日23:34(日本標準時)に取得。中央の暗い線はスリットで、この部分の光はFOVには導入されずに極端紫外線分光装置に入り、分光観測される。「ひさき」は、FOVにより木星・金星といった観測対象天体をこのスリット内に保持するように制御しつつ、スリット内の光をEUVで観測する (C)JAXA