カシオの電子ピアノ「Privia」シリーズが10周年

急速なテクノロジーの進歩により、さまざまなアコースティック楽器のデジタル化が実現し、ホビーはもちろん、音楽製作やライブステージなどプロフェッショナルの世界まで多彩なシーンで活躍している昨今。iPhoneやiPadといったモバイルデバイスまでもが、新たな楽器と認知され始めている。そんなデジタル楽器の中で、一般ユーザーにとっても身近な存在であり、家庭のリビングなどとも密接な関係を持っているのが「電子ピアノ」ではないだろうか。

ここでは、発売から10周年の節目を迎えたカシオ計算機の電子ピアノ「Privia」(プリビア)シリーズについて、初代「Privia PX-100」と最新モデル「Privia PX-A100」の試奏や、初代機からPriviaをずっと育て上げてきたカシオ計算機の高津英滋氏にお話しを聞きながら、電子ピアノの歴史とその魅力について紹介していきたい。

Privia登場から10周年を記念して発売された、カシオの最新電子ピアノ「Privia PX-A100」。10種類のグランドピアノ音色と、演奏場所の違いなどにより異なる音の響きを表現する10種類の「ホールシミュレーター」を搭載。非常にユニークなメタリックレッド/メタリックブルーの2カラーを用意する

10年程前までの電子ピアノといえば、アップライトピアノの形状に近い、やや大型なキャビネットスタイルの製品が大多数を占めていた。価格も高く、まだまだハードルの高い商品だった。また、その時代の電子ピアノは、キーボードやシンセサイザーのようなデジタルサウンドとは一線を画す、リアルなピアノサウンドを再現してはいたものの、グランドピアノの豊かな響きや演奏表現を完全に再現するには、残念ながらいたっていなかった。

そんな中で登場したPriviaによって、ピアノの「大きく重くてクラシカル」といったイメージはガラリと変わる。インテリアにもマッチするスタイリッシュなデザインと、コンパクトボディを併せ持つ電子ピアノは広がりを見せ、やがて多数のメーカーから発売されることになった。ちなみに「Privia」という名前は、「Private Piano」からの造語だ。本体サイズが小さいので置き場所を限定せず、持ち運びもできる。自分の部屋にも「1台」置けるという、その名の通りの製品といえるだろう。

Priviaの初代機である「Privia PX-100」は、当時の世界最小(奥行寸法)・最軽量ボディで幅広いシーンに対応したスタイリッシュピアノの元祖的存在。ウッド調の操作パネルのほか、木製の専用スタンドも用意されるなど、インテリアとしても高いデザイン性を誇る。2004年グッドデザイン賞を受賞

筆者も、初代Priviaである「PX-100」と最新モデル「PX-A100」を実際に試奏してみたが、進化したサウンドの圧倒的にリアルな響きを実感できた。PX-A100の鍵盤は、吸いつくような滑らかさと快適な弾き心地。最新の鍵盤と音源の組み合わせが生み出すレスポンスの良いダイナミックなサウンドは、弾いていて楽しい。まさにグランドピアノを彷彿とさせる

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