トッパン・フォームズは11月19日、80℃の低温で焼成して回路を形成できる印刷用銀塩インクおよび印刷・焼成技術を発表した。

スマートフォンなどのモバイル機器では、機器の高性能化・小型化・軽量化へのニーズが高まっている。一方で、搭載される機能の増加に伴い、アンテナ数も次第に増加し、モバイル機器内の高密度化、アンテナ部品の小型化などが求められている。通常は、フレキシブル配線板を利用したアンテナを使用するが、立体面へのフィット性に欠ける。また、筺体材料へ事前に導電物質を添加し、レーザ照射およびメッキを行う方法では、筺体材料の制限やコスト面、環境面に問題がある。そこで、これらの問題を解決するために、立体曲面である筐体上に印刷で直接配線を形成するための低温焼成インクおよび印刷プロセス技術の開発を進めてきた。

今回、同インクを80℃で3分間焼成することで6μΩ・cm以下と、高い導電性能を安定的に実現。さらに高温条件で焼成を行えば3μΩ・cm以下と、さらに低い抵抗値の配線にも成功したという。これにより、ポリカーボネート系樹脂をはじめとする電子機器の筐体に使用されているほぼ全ての樹脂材料への配線をダイレクト印刷で行えるようになった。さらに、立体の曲面や段差面への印刷が可能な印刷技術と組み合わせることで、これまで実現し得なかった部分への配線もできることから、高機能化に伴いアンテナスペースの確保が課題となっているモバイル機器への応用にも有効としている。なお、同技術は、85℃、85%RHの環境下に長時間放置して行う信頼性試験もクリアしている。

今後も、トッパン・フォームズではプリンテッドエレクトロニクス分野の研究開発を継続していき、モバイル機器や近距離無線通信(NFC)アンテナなどの分野での用途開発・製品化、ならびに事業推進のための提携についても、積極的に進めていく方針としている。

筐体ダイレクト印刷配線のイメージ