「ドル・コスト平均法」は、値動きのある金融商品を購入する際、一度にまとめて購入するのではなく、資金を分割して一定額ずつ定期的(毎月決まった日)に継続して投資していき平均購入単価を引き下げる効果を狙った投資方法で、積立投資の王道と言われるほどポピュラーな投資方法です。投資のリスクを抑える手法としてアメリカで開発されました。

これは、一定数量を買っていくのではなく一定金額を買っていくやり方になりますので、価格が高い時は購入数量が少なく、安い時には多くなります。

価格が安いとき、購入量(口数ともいう)が増えます。
価格が高いとき、購入量(同)は少なくなります。

 結果的に、一定数量を買っていく方法と比べ平均値の点で有利になります。ただ、価格が下がった場合のみならず、上がったときにも買い続けていくのでナンピン買いとは異なります。

この投資方法は、”買い手側”のためと言われていますが、

*上昇相場でも買ってほしい
*下落相場でも買ってほしい

 つまり、いつも買い続けていってほしいという、実は”売り手側”の理論ではないかと思います。

と言いますのは、下落相場で買い続けていきますと、確かに「多くの数量」を購入できるというメリットはあります。しかし、それは今後価格が上がるということが約束されていないとなんにもなりません。もしも下落が続いていくと、買えば含み損、買えば含み損となり、精神的に厳しい状況になっていってしまいます。

事実、2000年1月から3年間、日経平均株価の月末終値を使ってドル・コスト平均法で買い続けた場合をシミュレーションしてみましたが、3年間で投資残高は投資元本の70%ほどになっていました。

仮に、3年間だけ積立投資をしようとはじめた場合や3年間積立投資をしこの結果を見て継続をやめた場合には、含み損で終わってしまうということになります。一言で「3年」と言いましても、毎月”投資”をしていく「3年」というのは、精神的な影響を避けて通るわけにはいきません。それが人です。


ドル・コスト平均法の落とし穴
多くの人達は、”投資資産を分散しドル・コスト平均法を使って複利運用すれば、こ~んなにお金がふえます”と、ある意味「夢」のような話をします。しかし、彼らには共通して欠落しているところがあります。

それが今から指摘する落とし穴です。『ドル・コスト平均法は実はハイリスク・ハイリターンにもなる』ということです。

そもそも複利投資が絶賛されるのは「元本」だけでなく「利息」にも「利息」がつくからです。そして、その効果が目に見えて表れてくるのは長期に投資をしていくからです。10年や15年ではなく20年や30年という長期にわたる場合です。

彼らが積立投資の効果を説明するとき、積立開始20年以降30年ほどに向かって、投資残高が急激に右肩上がりのカーブを描いていくグラフを見せていきます。「どうです!これが複利のすごさですよ」って感じですね。(ドヤ顔で)

実は、それ自体は間違いありません。複利の仕組みと言うのはその通りですから。しかし、ここで重要な指摘をしておきます。複利の効果を説明している図(右肩上がりのカーブ)や金額通りになるためには、下記のどちらかの条件があってのことです。

*必ず毎年その利率で複利運用されていく商品がある
*過去にそのような商品があり、その通りになったという歴史の話

 に限った場合です。

現在、毎年「5%」や「3.5%」という高い利率で、20年や30年という長期間運用できる商品があるでしょうか?(上記利率はFPのマネーセミナーでよく使用されています)あるわけありません。彼らは、「資産分散」「地域分散」「時間分散」「複利運用」という投資の基礎知識を語り、高い利率は可能だと言っています。

それが可能なら、国の公的年金の運用は何の問題もないでしょうし、銀行、保険会社、証券会社も何の苦労もないでしょう。投資をしていくと、そのリターン結果は毎年上下していきます。それが常識です。

ここで彼らの複利運用の説明がなぜ机上論かを検証してみます。「30年間、毎年5%複利」と「前半の15年が15%複利、後半の15年がマイナス5%の複利」は、30年間の5%複利という率の平均は同じです。しかし、結果は全然違ってきます。

「30年間、毎年5%複利」で毎月5万円の積立投資をすると、投資元本1800万円は4185万円になりますが、前半の15年が15%複利、後半の15年がマイナス5%の複利」で毎月積立投資をすると、2132万円になります。これは年利1%の複利と同じ結果になります。

保険会社や証券会社のパンフレット等に「分散投資をしても1年であればバラツキがありますが、5年、10年と見ていけばバラツキは抑えられていきます」という、分散投資の効果を語る話があります。これは”平均”の考え方です。つまり、毎年一定の利率の運用と同じにはならないということです。

従って、長期積立分散投資、複利運用だと言われてリスク性商品に毎月積立投資をしていっても、その通りになる可能性は極めて低いと言わざるをえません。


運用中盤~後半に「ハイリスク・ハイリターン」投資に変わる
では、ここでこのときの説明に使われる「ドル・コスト平均法の落とし穴」について確認します。まず、下記のAとBの数字を見比べてください。

@毎月5万円の積立投資
A・・・1年間の積立実績:60万円
B・・・20年間の積立実績:1200万円

Aの次の年に「マイナス20%」の下落に見舞われた場合と、Bの次の年に「マイナス20%」の下落見舞われた場合の損失を考えてみてください。

A・・・マイナス12万円
B・・・マイナス240万円

 これです。Bは、実に年間積立投資額の4年分(60万円×4年)が吹き飛んでしまうことになります。そして、翌年に「プラス20%」になったとしても「マイナス240万円」は「プラス240万円」となって都合よく”相殺”されることはありません。

ドル・コスト平均の落とし穴は、複利効果がでてくると言われる後半に、つまり投資残高が大きく積み上がってきたときに急落や暴落といったマイナスリターンが発生したときに、一時金投資と同じようなマイナス効果を受けることになります

ドル・コスト平均法を使って複利運用していくと「高い利率で運用でき、利息にも利息がついていくのでどんどん資産が増加していく」という「いいことだらけ」の説明は、実は重要な説明がされていないということになります。

それは、実は複利効果がでてくると言われている長期投資の中盤~後半になっていくと「ハイリスク・ハイリターン」投資に変わるということです。

ドル・コスト平均法のポイントは大きく2つです。

(1)ドル・コスト平均法は、お金を大きくふやす方法ではない
(2)ドル・コスト平均法は、やめ時が重要


「ドル・コスト平均法」を使った複利運用話には慎重になってください(執筆者:宮崎 貴裕)