クラウドサービスへのニーズがますます拡大するのに伴い、企業にとっての選択肢も、“クラウドの王者”として君臨するAmazon Web Services(以下AWS) だけでなく、マイクロソフトが提供するWindows Azure、CRMシステムで有名なセールスフォースなど、ユーザー企業のビジネス事情により合致した他のさまざまなサービスへと広がりつつある。では、クラウドサービスを選択する際にはどういったポイントを押さえればいいのか。とりわけECでは、どのようなクラウドサービスを選択するのがベストなのか。こうした疑問に答えるべく、ニフティ クラウド事業部 クラウドパートナー営業部長、福西佐允氏とエスキュービズムの取締役 ソリューション事業部 事業部長の武下真典氏の両氏に対談してもらった。クラウドサービスに精通した両氏の対談だけに、興味深い内容となった。

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ニーズの多様化に伴いAWS以外の選択肢が求められるように

ニフティ クラウド事業部 クラウドパートナー営業部長、福西佐允氏

──クラウドサービスはベンダー主導で普及してきた感がありますが、今後こうした状況は変化していくのでしょうか。

福西氏:確かにクラウドの大手ベンダーが用意したサービスを、ユーザー企業がそのまま利用するというのがこれまでの市場スタイルでした。その意味で「ベンダー主導」「テクノロジー主導」というのが、クラウド黎明期のイメージといえるでしょう。ところが、エンタープライズ領域にクラウドが普及してきた今、大きくニーズが変わってきています。ユーザー企業にとっては、自社の事業に合ったサービス、セキュリティ、サポート体制、そして信頼性といった要素が重要になってきているのです。クラウドベンダーによって用意されたサービスをそのままのかたちで利用するのではなく、ユーザー企業側の細かなニーズに応えるクラウドサービスが求められるようになってきたということです。ベンダー側もそうしたさまざまなニーズに応えるべく、急速に変化、そして多様化しています。

私はベンダー主導のサービスが中心だったこれまでのクラウドを“クラウド第一章”、そしてユーザー企業のニーズに細かく応えられるサービスを生み出すクラウドを“クラウド第二章”と捉えています。現在は、いよいよこの第二章に突入したものと考えています。


エスキュービスム 取締役 ソリューション事業部 事業部長、武下真典氏

武下氏:クラウド第二章というのはうまい例えですね。ぜひ使わせてもらいます(笑)。使う側からすれば、クラウドサービスの選択肢が多いほうがいいのは当然です。これまでは“こういう時にはこのクラウドが最適だ”といったことがわかりづらかったのですが、ユーザー企業側がどのクラウドサービスを利用すればいいのか、徐々に透けて見えるようになってきました。これにはベンダー側の変化が大きく関わっているのでしょう。

福西氏:そのとおり、スタイルが大きく変化しています。デパート最上階のレストランに例えるとわかりやすいかもしれません。かつてはデパート最上階のレストランは、大型食堂がデンと構え、そこにはハンバーグにラーメン、天ぷら定食、そば、デザートなど、洋の東西、ジャンルを問わず、そこそこの味で提供されていました。しかし現在はそうしたスタイルはまず見かけません。“和”“洋”“中”としっかりとジャンル分けされ、かつ“洋”であればイタリアンなのかフレンチなのか、はたまた多国籍料理なのか、さらには価格が高いのか安いのかといった具合に細分化されています。クラウドサービスもこれと同じように多様化しています。“こういう用途であればこのクラウドがいいだろう”といった選択を、ユーザー企業が行えるようになったのです。今後はこうした市場スタイルがますます定着すると考えています。


サービス提供者の本質は“顧客が儲ける”のを支援すること

がっちりと握手をする両氏。“クラウド第二章”に向けた取り組みについて10月24日に講演を行う

──そうした変化のなかにあって、すでにニフティクラウドは2,000件を超える導入実績があるわけですが、どういった点が評価されていると思いますか。

福西氏:手前味噌になるかもしれませんが、やはりパフォーマンスの高さを評価する声をお客様からよくいただきます。そもそもニフティクラウドは、2010年1月に純国産パブリッククラウドサービスとしてスタートしました。その際の顧客はソーシャルゲーム事業者が中心だったのですが、そうしたユーザーの最大の要求は“クイックレスポンス”でした。急激に増減するトラフィックにいかに対応するか……そんなシステムを構築するためにだいぶん苦心したものです(笑)。その甲斐もあって、現在のニフティクラウドのパフォーマンスには自信を持っています。例えば、宣伝によって急激にレスポンスが増減するECサイトのシステムにも余裕を持って対応できると思います。もちろんECサイトだけではなく、各企業のさまざまなサービスにおいても、こうしたパフォーマンスの高さは貢献できると考えています。

武下氏:ニフティクラウドのパフォーマンスの高さは我々もお客様にサービスを提供するなかで実感しています。具体例を挙げると、あるテレビ番組でお客様の商品が取り上げられた時に、仮想サーバーを100台用意していたのですが、予想通りの爆発的なアクセスがあったにも関わらず、実際には20台だけで済みましたから。それと、あの時はアクセスの急増に対しどう対処すればいいのか我々もまだよくわからなかったのですが、そういった事情についてもニフティさんに親身に相談に乗ってもらえました。


福西氏:お客様からのご相談にはできる限り応えたいという思いは今後もずっと変わらないですよ。クラウド第二章を迎えるに当たって、我々としてもパフォーマンスの高さや手厚いサポート体制などにますます磨きをかけ、お客様に“純国産クラウドのニフティクラウド”という1つの選択肢をご提供できるよう努力していきます。そしてサービス提供者としての本質である、お客様が売上・利益を上げることを積極的に支援していきたいですね。

──両氏の話は尽きないが、それぞれのO2OやEC、そしてクラウドについての持論は、10月24日に都内で開催されるセミナー「実践企業トップが語る O2O最前線セミナー─流通革命の裏側に見るO2Oの本質とは─」の中で掘り下げられることだろう。また、福西氏の講演「これからの小売×ECを支えるクラウドとは?事例に学ぶパブリッククラウド導入ストーリー」では、パブリッククラウドのメリットや導入時のハードルになりやすいセキュリティ関連の課題、その解決方法についても紹介される予定だ。EC、O2Oはもちろんのこと、クラウドをどう利用すればいいのか未だピンとこない方々も、ぜひセミナー会場に足を運んでみてはいかがだろうか。