マーケティングの重要性は誰もが認めるところだろう。Eコマースはもちろん、SNSなどの新しいサービスによって消費者の行動は変わりつつあるが、サウスオーストラリア大学のマーケティングマネジメント教授によると、いつくかの"定説"は間違いだという。

サウスオーストラリア大学のDavid Corkindale教授がWall Street Journalに寄稿した記事「マーケティング担当者の間違い(原題:Mistakes Marketers Make)」で、いつくかの定説を取り上げ分析している。

ターゲットマーケティングは間違い

自社の製品を使いたい/欲しいと思ってもらえる消費者セグメントを定め、その人たちに向けてマーケティングを行うのがターゲットマーケティングだ。これのどこが問題なのか。

ある調査で、よく利用するガソリンスタンドは決まっているかと聞いたところ、46%が「決まっている」と答えた。だが、実際にその後6カ月間、ガソリンスタンドの利用記録を付けてもらったところ、1つのブランドのみ利用した人はわずか6%にとどまったという。

ビールについても同じで、多くの人が「決まったブランドのビールを飲む」と回答したが、実際に記録を付けてもらうと特定ブランドのビールを飲み続けた人は10%にとどまったという。

これは、複数のブランドメニュー(レパートリー)から選ぶ特性を持つ成長国の"レパートリー市場"では、典型的な結果だという。

つまり、リサーチ会社に依頼して製品に興味を持ちそうなセグメントを割り出し、わずかな人のみをターゲットにするという手法では、「残りの大勢を無視していることになる」とCorkindale教授は警告する。

さらに、大手B2C企業が同じ製品カテゴリの中で複数のブランドを持つ理由は、「異なるセグメントに訴求するためではなく、様々な市場で消費者が選べるバラエティーを提供するためだ」と説明している。

レパートリー市場では、"ロイヤル顧客=価値ある顧客"とはならない。調査によると、ロイヤリティの高い顧客が占める比率はわずか10%で、この顧客が購入する頻度は全体平均を下回るという。例えば、「お正月のおせちは毎回ここで買う」という人は確かにロイヤル顧客だが、購入するのは年に一回だ。

ブランドの長期的成長には、より多くの顧客にリーチすべき

Corkindale教授に言わせると「顧客の数を増やす」とか「顧客のロイヤリティを改善する」「購入頻度を上げる」などの様々な手を打つことが必要という定説も間違いという。教授は「長期的に成長を持続できる方法はただ一つ、顧客数を増やすことだ」と記している。

自社製品が「消費者の購買単価と購入頻度で競合の他社製品に負けている」ことが分かったとする。マーケティング担当者は大きな問題として「ロイヤリティがない」小さな問題として「購入頻度が低い」と問題を定めて、それに合わせたマーケティングキャンペーンを練るだろう。

だが、「そのようなキャンペーンは予算の無駄」とCorkindale教授氏。企業間で顧客は入れ替わるものの、市場シェアに大きな影響を与えているわけではないという。

マーケティング担当者が注目すべき点は「競合から顧客を獲得することではなく、より多くの顧客にリーチすることだ」というのがCorkindale教授の意見だ。