情報システム部門についての座談会。第二回目の今回は、日本と海外の企業における情報システム部門の違いに言及する。その中で出てきた「CIO」という存在が、日本の情報システムを変えるのだという。「CIO」とは何か、それによって企業はどう変わるのか、興味は尽きない。

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【座談会その1】情報システム部門が持つふたつの顔、コストセンターとプロフィットセンター

対談者

ブリッジ・リサーチ&コンサルティング合同会社 代表社員
阿部 満氏(写真真ん中)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 サイボウズ Office
プロダクトマネージャー 栗山 圭太氏(写真左)

サイボウズ株式会社 ビジネスマーケティング本部 ダイレクトマーケティング部
マーケティングディレクター 佐藤 学氏(写真右)

佐藤氏:会社のシステムを誰が作るかですが、アメリカではエンジニアの7割が企業に所属し、日本は逆に7割がSIerに所属しています。ということは、構造的に見ると日本の情報システム部門は現場型ではなく企画型になります。にも関わらず、現実では、企画型として機能していない。ここは問題点の一つだと思うのですが、いかがでしょう?

阿部氏:実は、日本の企業がシステムを内製化しなかったのには理由があります。それは、ベンダーがしっかりしていたからです。大手でも中小でも、丸投げをしてもある程度のものは提供してもらえたので、特に問題はありませんでした。 ただ、昔はそれでも良かったのですが、これからの時代はそうはいきません。 今の時代、ビジネスは刻々と変化しています。業務プロセスを分析して、それをビジネスに活用するためには、外注に出していては間に合いません。社内に戦略的な情報システム部門を置いて、スピード感を持って対処していく、それが今後の主流になっていくでしょう。その流れの中で、ベンダー企業にいる優秀な人たちがユーザー企業に移籍して、「CIO(最高情報責任者)」として、社内のITを引っ張っていけば、面白い事が起きるはずです。

栗山氏:阿部さんのおっしゃる通り、ユーザー企業自身がITの知識を深めれば、大きな変化が生まれそうな気がします。 例えば、アマゾン ウェブ サービス(AWS)などは、アメリカでは積極的に利用されています。ただ、エンジニア向けのインフラなので、社内にエンジニアを持たない情報システム部門では扱うことができません。折角、いい技術があるのに非常にもったいない。しかし、もしベンダーから知識のある優秀な人がその会社に来たら、最新の技術をどんどん使うことができるようになる。そんな状況になれば、一気に成長する中小企業も出てくると思います。

阿部氏:企業が成長するためには、ITの技術が不可欠になります。元気のある中小企業に、ベンダーから来た優秀な人たちが、CIOとして経営者の右腕となり会社を発展させていく、こういう構造になるのが理想です。会社の内情を知っているからこそ、本当に使えるものがスピード感を持って作り上げることができる。今後、システムは外注するものではなく、最新の技術やサービスを活用し、自分たちで作り上げるものになっていくことでしょう。

佐藤氏:最近は、新しい技術が沢山出ています。セールスフォースなども、代表的な例の一つです。それでクラウドに興味を持った営業の方が、私達のセミナーに増えてきたのかもしれません。

中小企業による、戦略的ITの利用事例1:ITで経験と勘を伝承

阿部氏:今、日本の情報システム部門は、守りから攻めに転換する時期に来ていると思われます。特に、中小企業の方が、その傾向が顕著です。 企業規模が大きくなると、システム自体が大きくなってしまうため、問題なく稼動させることが一番の目的になってしまいます。その結果、佐藤さんのお話にもありましたが、コストセンターとしての意識が強くなり守りに入りがちです。中小企業の場合は、そこまで大きなシステムが必要ではないため、攻める方向に意識が向きやすい。中小企業こそ、業務効率やコスト削減をやるよりも、情報をシェアして、情報システム部を社内の中で考える組織にできるはずです。

佐藤氏:中小企業の場合は、IT化を進めたくても現場がついていかないような場合もあると思われます。システム部門がやりたいと思っても、現場にパソコンの知識がないなど。この点は、どうお考えでしょうか?

阿部氏:そのような状況も、徐々に変わってくると思いますよ。確かに、長年の経験から得た勘で仕事をするような、職人気質の企業もあります。でも、新しく来た若い人たちは、それなりにITの知識はあります。 職人タイプの人たちに、新しくパソコンを学べと言っても、流石にそれは無茶です。でも、ITを使って職人の仕事をサポートすることはできます。例えば、職人の技を撮影してYouTubeにアップしたり、ブログで情報を発信したり。ITが重要だからって、社員全員が詳しくある必要はありません。詳しい人がCIOとして引っ張っていけばいいんですよ。

栗山氏:そういったITの活用事例は、元気のいい中小企業から沢山出てきます。例えば、最近ビッグテータが話題になっていますが、それを農業に活用するという話があります。経験豊富な農家の方が、「今、作物にとってすごくいい状態」だという時の、気温や湿度などをセンサーで記録していく。そうやって、職人が持つ経験と勘をデータ化して、ITを使って技術を伝承していくようなことが行われています。 センサーはビッグデータの中でも比較的小さいものなので、中小企業でも十分に投資ができるし扱えます。先ほど話題にあったような、ベンダーで経験を積んだ人が来れば、すぐにできる企業が沢山あるはずです。

阿部氏:是非そうなってもらいたい。私のようなコンサルの立場では、なかなかできないので、 コンサルの弱みは、社員として、一緒に仕事をしたことがないことです。会社の、組織の、本当のことが分からない、だからこそ、システムを作る人は社内にいるべきです。

佐藤氏:海外などでは、エンジニアはプロジェクトごとに集まって、終わったら次に移動することが普通に行われています。中には、インテルとAMDを定期的に行き来する人もいる(笑)。それは極端にしても、もう少し人材の動きが流動的になってもいいとは思いますね。

情シス座談会その3:「情報システム部が変われば会社は成長する。そして情報システム部が変わるために必要なもの、それは」はこちら!