F. Englert and P. Higgs (ノーベル賞公式ホームページより)

スウェーデン王立科学アカデミーは8日、2013年のノーベル物理学賞を、「ヒッグス粒子」の提唱者の英エジンバラ大学のピーター・ヒッグス名誉教授(84)とベルギー・ブリュッセル自由大学のフランソワ・エングレール名誉教授(80)ら2人に授与すると発表した。

ヒッグス氏は1964年に、宇宙が誕生した137億年前の大爆発(ビッグバン)によってあらゆる素粒子が光速で飛び回った。その約100億分の1秒後に宇宙空間の状態が変わり、ある素粒子が他の粒子の周りにまとわりついて、動きにくくした(質量を与えた)とし、その粒子(ヒッグス粒子)の存在を予言した。エングレール氏も同年、独自に同様な理論を提唱した。ヒッグス氏は、その粒子の存在を、南部陽一郎・米シカゴ大学名誉教授(2008年ノーベル物理学賞受賞)の理論「自発的対称性の破れ」を土台にしたという。

その後、ヒッグス粒子については、2008年に本格稼動したスイス・ジュネーブ近郊にある欧州合同原子核研究機関(CERN)の「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」を使って、東京大学や高エネルギー加速器研究機構など日本の16機関が参加する「ATLAS」と、欧米を中心とした「CMS」の2つの研究チームが、それぞれに陽子同士の衝突実験を繰り返し、実験結果の検証を進めてきた。その結果、ヒッグス粒子を発見したとして今年3月に発表、今月7日に正式な論文を専門誌に掲載した。

ヒッグス粒子の発見が確定したことで、素粒子物理学の基礎となる「標準理論」で考えられた17種類の素粒子のうちの最後の1つが見つかったことになり、さらなる宇宙の謎の解明につながることになるという。

授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、2氏に合わせて賞金800万スウェーデンクローナ(約1億2千万円)が贈られる。

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