岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講師、徳島大学消化器内科の六車直樹講師らの共同研究グループは、河原講師らが開発した大腸がんの内視鏡治療用機器「ムコゼクトーム2SB」の有用性を検討した結果、従来のデバイスに比べ処置時間の短縮、偶発症(合併症)の軽減につながるという結果が得られたと発表した。

同成果の詳細は、欧州消化器内視鏡学会誌「Endoscopy」オンライン版に先行掲載され、11月号の本誌にも掲載される予定だという。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、胃がんに対する新しい内視鏡治療法として約10年前に日本で開発され、現在、普及が進んできており、大腸がんの内視鏡治療としても応用展開が進められてきた。しかし、手技が難しいことや、合併症の頻度が高いことが問題となっていた。

研究グループは、これまでの研究から、安全にがんの粘膜下層の組織を剥離するために絶縁領域を増やし、流れると合併症をおこす胃の外側向きの電流をカットし内側向きにのみ流れるような設計を採用した胃のESDを施行するためのデバイス「ムコゼクトーム」を開発、臨床応用を行ってきた。

ムコゼクトーム2SBは、こうして得た知見をさらに発展・応用させ、大腸がん用に適用させたもので、今回の研究では、徳島大を中心に従来デバイスと比較検討を実施。その結果、従来デバイスに比べ処置時間は半分以下となり、偶発症(合併症)につながる危険因子を減らすことが可能であることが判明したという。

研究グループでは、今回の成果を受けて、大腸ESDは、従来の内視鏡切除法では切除しきれなかった大きな病変や切除困難な病変に対して一括切除が期待されるため、根治性が高く、その後の詳細な病理組織診断によって明確で適切な治療方針を患者に提示できる優れた手技であり、外科手術と比較して、患者の肉体的・精神的負担の軽減と在院日数の短縮、医療費の軽減につながることが期待できるとコメント。同デバイスの活用により、今後の大腸がんに対する内視鏡治療の発展、大腸がん患者への侵襲の少ない治療の確立につながることが期待されるとコメントしている。

ムコゼクトーム2SB

大腸ESDに使用時の画像